二人の思惑
一方その頃、フレス達はと言うと。
「えええ!? ウェイル、昔そんなことしてたの？」
「そうだよ！ ウェイルにぃって、ああ見えて結構ドジなところあるからさ！」
年齢も近い（フレスの場合は見た目と精神年齢ってだけであるが）せいもあってか、二人はすっかり仲良くなり、過去のウェイル話で盛り上がっていた。
「ウェイルって、結構卑怯なんだよ？ 自分の得意なゲームで勝負を仕掛けてきて、ボクの夕ご飯を奪っちゃったんだから！」
「あははー、ウェイルにぃって負けず嫌いだからねー。でもね、フレス。どんな勝負でもお互いに全力だから面白いんだよ。それで、そのゲームって何？」
「『リグラス・ホールデム』ってゲーム。知ってる？」
「知ってるも何も、リグラス・ホールデムってこのリグラスラム発祥のゲームだよ？ この都市に住んでる人はみんな知ってるよ！ それで負けまくったの？」
「ううん。一度だけ勝ったよ！ その時、全賭けしてたから何とかご飯にありつくことが出来たんだよ」
「へぇ。じゃあさ、私とリグラス・ホールデムで一勝負しない？」
するとギルパーニャは何処からともなくトランプを取り出し、フレスの前に置いた。
「やるやる!! ボク、ウェイルとのやりとりのおかげで、少しは強くなったんだよ？」
「お、言うねぇ。じゃあお手並み拝見だね。私がカードをシャッフルするよ」
ギルパーニャはシャッシャッと器用にカードをシャッフルして、不敵に笑みを浮かべると。
「よし、じゃあ始めようか！」
パッパとカードを配り始めた。
「うん！ よ～し、良い手札……来い!!」
気合たっぷりでフレスが引いてきたのは――♦の４と♥の６。
「……ううう……」
「あはははは！ フレスちゃん、そんな露骨に顔に出したら手が悪いのがバレバレだよ？」
ケタケタと笑うギルパーニャは、場にカードを五枚並べる。
「さぁ、最初のベットラウンドだ。そういえば何を賭けるか決めてなかったね？」
「そういえばそうだね。でもボク、お金あんまり持ってないよ？」
フレスが持っているのはウェイルが小遣いとして渡している少額のハクロア硬貨だけだ。
「私は少額でも構わないんだけど……。あ、そうだ！ ……フフフフフ」
ギルパーニャは何か閃いたようで、不気味に笑い始める。
「な、なにを賭けるの……？」
（……もしかしたら……ボクの身体……!?）
妙な妄想するフレスはゴクリと息を飲んだ。
ドキドキと緊張しながらギルパーニャの回答を待つ。
怯えるフレスを見て、ギルパーニャは盛大に宣言した。
「賭けの対象は――ウェイルにぃ!!」
「……へ？」
「だから、ウェイルにぃ。賭けの対象は明日のウェイルにぃを独占できる時間！ チップ一枚につき三十分ってところね」
「ウェイルを独占……？」
（……ウェイルを独占できたら……。ウェイルに色々としてもらえる……？）
～～以下、フレスの妄想～～
（ウェイルがボクに色々してくれる）
↓
（つまり何でも好きなものを買ってもらえる）
↓
（ご褒美に普段はダメなものでも大丈夫）
↓
（普段はダメなものといえば……）
↓
（くまのまるやき!?）
～～以上、フレスの妄想終わり～～
「あうううう……!!」
「フレスちゃん、よだれよだれ!! たれてるたれてる!!」
「はっ!? くまっ!?」
「……くま？」
ギルパーニャは甲斐甲斐しくフレスのよだれを拭ってあげた。
「で、どうするの？ ウェイルにぃを賭けるってことでいい？」
「いいよ！」
「あれ？ 意外にあっさり……？」
もう少し説得に骨が折れるかと思っていたギルパーニャは、想定以上にフレスが簡単に了承したことに肩透かしを食らった気分だった。
だってこの子、思っていた以上にウェイルと仲がいいから。
もう少しウェイルのことに関しては頑固かと思っていた。
「……オッケ、なら早速ベットしようか！」
だったら、私がウェイルを独占しちゃってもいいよね……？
「……デート……!! ジュルリ……」
夢にまで見た兄弟子との、二人きりのデート……!!
「……くま……!! ジュルリ……」
夢にまで見た、くまのまるやき……。
（（この勝負、絶対に負けられない!!））
様々な想いが交差する中。
フレスVSギルパーニャのリグラス・ホールデムがスタートした。
