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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第二部 第五章 貧困都市リグラスラム編 『妹弟子と運命のコイン』
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貧民街の鬼ごっこ


 鼻を刺す汚臭漂う、薄暗い裏路地を全力疾走する二人。


「いたぞ! こっちだ!」

「回りこめ!!」

「……クッ、こっちにも追手か……!!」


 追いかけてくる声の種類が、時間と共に増えていく。逃げ始めた当初より、追手も数はざっと10倍はいるだろう。


「うわああぁぁあっ!! どんどん数が増えてるよ!?」

「クソ、あっちもダメだ……!! こっちだ、フレス!!」


 人の気配の薄い道。

 なんだか嫌な予感はするが、どうにもこちらしか逃げる方法はなさそうだ。


「この道の先はどこへ出るの!?」

「知るか!! 適当に逃げてるんだよ!!」

「えええええ!? どうすんのさ!!」

「とにかく走る!!」

「どうしてボクがこんな目に!?」

「全部お前のせいだろう!!」


 追手の足音がどんどん近くなってくる。このままでは捕まるのは時間の問題だ。


「いたぞ!!」

「ち、もう見つかったか……!!」


 敵の行動は思った以上に早かった。

 そもそも向こうは人海戦術を使っているのだ。遅かれ早かれ見つかってはいただろうが、想定以上に早い。


「ウェイル! ここ、行き止まりになってるよ!!」


 目の前にはうっそうと立ち塞がる巨大な壁。

 いつの間にか袋小路に迷い込んでいたようだ。


「道を間違えちゃった!?」

「……いや、違うな……。おそらく俺達はここに誘導されたんだ……!!」


 彼らはわざと足音を立てることによって、ウェイル達を出口から遠ざけるように誘導してきたのだ。

 まんまと敵の作戦に嵌ったウェイル達は、ついに貧民達に追い込まれてしまった。


「……ついに追いつめたぜ……!!」

「持っているもの全部置いて行ってもらおうか……!!」


 じりじりと滲みよってくる、最初に因縁をつけてきた男ら四人。

 リーダー格のスキンヘッドの男が、棍棒を振りかざしながら近づいてきた。


「俺達リグラスラムの住民を馬鹿にしたんだ。慰謝料を請求するのは当然だろう?」

「さぁ、持ってるものを全て出せ!! 出せないってなら、そっちの女が身体で支払ってくれてもいいんだぜ?」


 ウヒヒと下品な笑みを浮かべながら、追い詰めてくる男達。

 背後はすでに壁。逃げるのは不可能だ。


「ウェイル、どうしよう……?」

「出来るだけ穏便に済ませたい」


 フレスの魔力を使って、相手を蹴散らすのは至極簡単なことだ。

 だが今回の事件のきっかけは、フレスの不用意な発言が元だ。手荒な真似をするのは少々気が引ける。


「でもあの人達、謝っても全然許してくれそうにないよ」

「まあそうだろうな」


 ウェイルが思うに、今追いかけてきた連中は、普段からもこのような恐喝行為を行っている連中だろう。

 観光や仕事で来た客から、ちょっとしたことで因縁をつけて金や物品を脅し取る。

 大勢で追っかけてきたところから、明らかに組織的な犯行だ。


(……だからこそ下手な逃亡は出来ないか)


 カモを逃がすほど、奴らは甘くない。

 脅し役に四人、残りの人員は全てこの周辺の逃走経路になりそうな場所を抑えているはずだ。


「フレス。仕方ない。やろう」

「うん」


 フレスが手に魔力を集中させ始めたのと同時に、それは起きた。


「――えいっ!」


 ――プシューッ。


 何やら軽快な声が響いたかと思うと、辺り一体は白い煙に包まれた。


「け、煙!?」

「奴らの仕業か!?」

「催涙煙だ!! こいつら、逃げる気だ!!」


 突如発生した白煙に、この場にいた全員が混乱の最中にいた。


「何がどうなって……? フレス、何かしたか!?」

「ボクはまだ何もしてないよ!?」

「だったらこれは……?」


 状況を把握しようとした、その時。


「――ウェイルにぃ、こっちだよ!」


 むぎゅっと何者かに腕を掴まれ、引っ張られた。


「だ、誰だ!?」


 視界は白煙で遮られ、その正体が誰か全く判らない。


「いいから来て! そっちの女の子も! 早く私の手に掴まって!!」

「一体誰なの!?」

「いいから早くして! 奴らから逃げるよ!! 今は四の五の言ってる場合じゃないでしょ!?」

「それもそうだ」


 その口振りから、敵である可能性は低い。

 ウェイル達は素直にその声に従った。

 ウェイルを掴んだその手は、予想以上に小さい手であった。


(……あれ……? この感覚は……)


「さぁ、急ぐよ!! しっかりとついてきて!!」


 その声の主の案内により、ウェイル達は無事裏路地からの脱出に成功した。

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