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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第一部 第四章 部族都市クルパーカー編  『戦争勃発、陰謀の末路』
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龍殺しを蹴り飛ばせ

「アムステリア。準備はいいか?」

「ええ、任せて」


 ウェイルの作戦はこうだ。

 龍殺しを乗せたフレスベルグが、ニーズヘッグに接近する。

 その状態からアムステリアが龍殺しを蹴り飛ばし、ニーズヘッグに直撃させる。

 さすれば龍殺しの能力によって、ニーズヘッグは弱体化するはず。

 そこをサラマンドラが仕留めるという算段だ。


『ウェイル、奴が闇を集め始めたぞ!! どうする!?』

「出来ればあれが発射される前に仕留めたい!! フレスベルグ、急いでくれ!!」

『我が師匠は無茶を言う……! 力が抜けて飛ぶだけで精一杯だと言うのに……!』


 皮肉を垂れつつも、フレスベルグはスピードを上げた。

 フレスベルグに無理をさせているのは判っているが、だからこそ次の瘴気放出の前にケリをつけねばならない。

 今フレスベルグがあの瘴気を浴びてしまえば、いとも簡単に墜落してしまうだろうから。


「ウェイル。私の射程圏内に入ったわ!!」

「よし、蹴り飛ばしてくれ!!」

「いくわよ……!!」

「いけ!!」


 もがく龍殺しを蹴り飛ばす準備に入り、アムステリアが足を振り上げた。

 ――その時。


「――させないよ?」


 突如声が響いたかと思うと――。


「――キャアッ!!」


 アムステリアが不自然にバランスを崩した。

 ……いや、違う。ふいに何者かに蹴り飛ばされて、龍の背の上で倒れていた。


「流石は噂の鑑定士さん。考えることが大胆だね」


 龍殺しに手を置いて、こちらを見てくる長髪の男。


「……お前がイングか」

「ご明察。極力名前を出すのは控えているのにプロ鑑定士協会の情報網は凄いなぁ……」

「変態コレクターとして有名だぞ、お前」

「変態とは酷いねぇ。確かに変わっている趣味だとは思うけどさ」


 しみじみといった雰囲気で、クックと笑うイングに、ウェイルは得体の知れない不気味さを覚えた。


「ウェイル!! こいつをどうにかしないと!!」


 アムステリアが叫ぶ。蹴飛ばされた所が痛むのか、患部を抑えていた。

 そこは先程ルミナステリアに刺された所だった。


「……こいつ、私の弱っている部分を見抜いてきた……!!」

「そこだけ血の匂いが濃かったからねぇ」


 イングはそこがアムステリア弱点だと嗅ぎ取り、鋭い蹴りを加えてきたのだ。


「あんな女なんてどうでもいい。君、僕と遊ぼう?」

「なんだと……?」

「フロリアを出し抜くなんて、君、結構やるね。ちょっと興味沸いてきた」


 イングは一気に体勢を落とし、距離を詰めてくる。

 

「ふざけんな……!!」

 

 ウェイルもイングの動きを読み、飛び込まれたところに体当たりを合わせてやる。

 

「おやおや!?」

 

 ウェイルの行動を、イングは不審に思ったはずだ。

 そもそも敵の懐に飛び込む行為なんて、それはもう殺傷目的以外あり得ない。

 であるのにも関わらず、ウェイルは身体を寄せていった。

 普通、体当たりなどはせず、ナイフなどの刃物を警戒して後ろへ退くはずだ。

 

(へぇ、見切ったの) 


 ウェイルは両手でがっちりとイングを掴んだ。イングが手ぶらで突っ込んで来た事を知っていたわけだ。

 

「よく見えたね?」

「俺は鑑定士だ。目は良いに決まってる」

「でも普通何かあると勘ぐるでしょ?」

「そりゃ勘ぐったさ。だが俺は自分の目を信じているし、何より今は作戦遂行が第一だからな。お前が刃物を持っていても同じ行動をとったさ。アムステリア、今だ!!」

「――任せて!! オウラアアアアアアアアッ!!」

 

 邪魔をするイングは今、ウェイルに拘束されている。

 このチャンスを逃すはずもなく、アムステリアは足を高くあげ、龍殺しを蹴り飛ばした。

 

(この鑑定士、やっぱり面白いね……!)

 

 蹴り飛ばされた龍殺しは、一直線にニーズヘッグへ飛んでいき、クリーンヒットした。

 龍の魔力が弱まると同時に、周囲の闇が霧散していく。


「サラー、今です!!」

『――焼き尽くす!!』


 イレイズの掛け声と共にサラマンドラは灼熱の業火を撃ち放つと、ニーズヘッグの全身は炎に包まれた。

 悪魔のような黒い羽根は焼き切れ、浮遊力を失った龍を、重力は空にいることを許さない。

 まるで隕石のように、ニーズヘッグは燃えながら地表へと叩きつけられた。

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