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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第一部 第四章 部族都市クルパーカー編  『戦争勃発、陰謀の末路』
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フレス合流

 

 フロリアの命令により、ウェイルに向けて一斉に砲撃が開始された。

 神器から放出された暴力的な光を目の前にして、何故かウェイルは足を止め、クククと笑う。


「本当にラッキーだよな? ――――なぁ、フレス!!」

「――うん! ラッキー、だね!!」


 その声と共に、ウェイルの前に巨大な氷の壁が現れた。

 神器から放出された魔力は、全て氷の壁に阻まれる。


「フレス……!? あの場で龍殺し(ドラゴンキラー)に殺されたと思っていたのに……!!」

「残念。ボクはウェイルがいる限り死なないから!」


 翼をゆっくりとはためかせ、空からフレスが降りてきた。


「助かったよ、フレ――」

「ウェイルーーっ!! 会いたかったよーーっ!!」


 フレスは勢いつけてウェイルの胸へ飛び込んだ。


「おいおい、フレス。急にどうした?」

「会いたかったんだよーー!!! ……すりすり」


 ウェイルの胸に頬ずりするフレスは、安堵の表情を浮かべていた。


「よくやってくれた、フレス。後は俺達鑑定士に任せろ!」

「ボクだって一応鑑定士なんだけど!」

「鑑定士見習い、だろ?」

「むぅ、そうだけどさー」


 ぷぅーと頬を膨らまして文句を言うフレスであるが、あまり怒っているようには見えない。

 ウェイルはやれやれと苦笑いを浮かべながら、フレスの頭に手を置いた。


「今回の事件が終わったら、プロ鑑定士試験に向けて猛勉強だ。判ったな?」

「がってん、師匠!」


 戦闘中にも関わらず、のんきな会話をする二人に、フロリアはわなわなと怒りで震えていた。


「……こっちを無視してイチャイチャと……! 舐めやがって……!! もう一度やってしまえ!!」

「「「はっ!!」」」


 再度ウェイルへ集中攻撃を行うべく、連中は魔力を込めて神器に光を集中させた。


「フレス。任せていいか?」

「うん、任せて!」


 フレスは蒼い翼を広げると、ふわりと宙に浮かび上がった。

 人間の背中から翼が生え、空を翔る。

 そんなあまりにも非現実的な光景に、『不完全』連中は一瞬だがフレスのいる方向へ意識を集中してしまっていた。

 それは人間の反射であり、決して彼らが油断したというわけではない。

 だがウェイルはその隙を見逃すほど甘くはない。


「――ほらよっ!!」


 ――氷の剣による一閃。

 氷の刃は空気に一本の線を描き、線上には敵の神器が並んでいた。

 魔力を帯びた氷の剣は、空気を凍てつかせ衝撃波を生む。


「「「……なっ……!?」」」


 線が消えた瞬間。

 音もなく襲い掛かる衝撃波により、神器は真っ二つに割れていた。


「神器が割れた!?」

「な、なんなんだ!?」

「おい、それどころじゃない、前を見ろ!!」


 神器が割れただけでも驚きに値するのに、次の光景には思わず腰を抜かしてしまうことになった。

 それは、巨大な氷柱が宙に浮かぶという光景。

 青白く瞳を輝かせたフレスが、巨大な氷柱を精製し、今まさにそれを彼らの頭上に落とさんとしていたのだ。


「ほいさ!」


 フレスはすかさず空中から氷柱を落とした。

 ウェイルは巻き添えになるまいと走り抜けたが、『不完全』連中はそうもいかない。

 驚愕と恐怖で身体が動かないこともあるが、それ以上にウェイルの放った衝撃波を避けようとした時、本能的に身体をやや後ろへと退かしていたのだ。

 それが仇となった。

 とっさに崩れた体勢を元に戻すことなど出来やしない。

 巨大な氷柱は、重力に逆らうことなく彼らへ向けて落下した。


「安心してよ。殺してはないからさ」


 氷柱は連中に直撃する寸前に、全て極寒の冷水となって襲い掛かった。

 おかげで彼らは氷柱に衝突して死ぬことはなかったのだが、身体を凍てつかせる冷水と、死を感じさせる衝撃の光景に、溜まらず失神していたのだった。


「ウェイルとの約束だからね。出来る限り人は殺さないって」

「そうだな。約束だ」


 最初に交わした約束をフレスは律儀に守ってくれる。

 敵の命を取らないという二人の甘ったるい行動に、フロリアは憤慨した。


「神経を逆撫ですることばかりしやがって……!! 本当に舐めた奴ら……!!」


 しかしフロリアにはもう手駒は残されていない。


「チェックメイトだな。フロリア」

「…………ククク、クハハハハハハッ!!」

 

 追い詰めたはずのフロリアであるが、何故か高笑いをし始めた。


「何がおかしい?」

「だってウェイルがおかしなこというから。チェックメイト? それはチェスでキングを取るときに使う言葉だよ?」

「どういう意味だ……!?」

「ウェイルは、まさか私をキングだと思ってる? 私はせいぜいナイトかルーク止まり。本当のキングは別にいるよ?」

「イングって奴のことか。本当のキングは今、どこにいる?」

「すぐそこにいるよ? 貴方のすぐ後ろにね……!!」

「――――!?」


 言われるがままに振り向く。

 そこには――。


「……誰もいない……!?」


 騙されたことに気づき、すぐさま振り返ると、もうそこにフロリアの姿はなかった。


「どこへ消えた!?」

「あそこだ、ウェイル!」


 ――フロリアはすぐに見つかった。

 わずかに残っていたレッサー・デーモンの背に跨って、全速力で逃げていた。


「ウェイル! どうするの!? 追いかけるの!? ここの戦局もあまり好ましくないみたいだけど!!」

「気は進まないが、残ろう。本当は奴を捕まえてアレスに謝罪させたいところだが……」

「了解。他のところを助けに行く?」

「無論だ。『不完全』や魔獣の数が減ってきたとはいえ、戦況はどうなるか分からない。それにまだイングは現れてないからな……!!」


 ウェイルは氷の刃を構えると、未だ戦闘を行っている味方の元へ援軍に向かった。


「さて、それなら私は――」


 そしてアムステリアは、蛮行を続ける妹へと向き直ったのだった。

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