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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第一部 第四章 部族都市クルパーカー編  『戦争勃発、陰謀の末路』
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サラーの涙

「――ということがあった。この後イレイズがどうなったかは知らない。とにかく必死で逃げて、ここでフレス達を待っていた」


 語り終わると、ペタリとその場に腰を落としたサラー。

 肉体的な疲れもあるのだろうが、それよりも大切なパートナーと引き裂かれてしまった精神的なダメージで、酷く憔悴していた。


「サラー……!」

「ウェイル、フレス。聞いてくれ」


 床に座ったまま、サラーは二人を見上げた。


「……もう間も無く『不完全』の連中はクルパーカーに攻め込んでくる!! 私はそれを止めなくてはいけないんだ! イレイズと約束したんだ! ……でも私一人では無理なんだ。イレイズは言っていた。お前達二人に協力を求めろと。でもイレイズがそう言ったから二人に頼むわけじゃないんだ! 私が、私自身が、二人に力を貸して欲しいって、そう思ったんだ! イレイズの故郷を救うのを手伝って欲しい。お願いだ! ウェイル、フレス!」


 サラーは大粒の涙を流しながら、二人に頭を下げ、さらに体勢を落として土下座したのだ。

 あのプライドの高いサラーが、である。それほどまでに、サラーは精神的に追い詰められていた。

 イレイズを助けることが出来なかった不甲斐なさと、イレイズから託された故郷を守るという責任。

 その二つの板挟みとなって、サラーはこの小さな身体で悩んでいたのだ。


「サ、サラー!! 頭を上げてよ!! ねぇ、サラーってば!! お願いだよ、頭を上げて!!」

 

 突然の土下座に、フレスは慌てふためいてサラーに頭を上げるように求め続けた。

 それでもサラーは無言で、頭を地面に擦りつけるように頭を下げていた。


「ウェイル、お願いだ……!」

「…………」


 ウェイルにしてみれば、イレイズの故郷のことなんて本来どうでもいいことである。

 いくらサラーが頭を下げようとも、自ら危険な案件に足を踏み入れようなんて普通は思わない。

 だがウェイルはすでに知ってしまっている。彼らがこれまでどれほど辛酸を舐めてきたか。どれほどまでに精神を切り刻まれてきたか。


「ウェイル!! ねぇ、ウェイル!! なんとか言ってあげてよ!!」


 沈黙を貫いていたウェイルは、重い口を開いた。


「治安局の警備が厳しかったのも納得だ。治安局は今厳戒態勢を敷いている。その中をイレイズが逃げ切れるとは到底思えない」

「ウェイル!? どうして今そんなこと!!」


 抗議するフレスを無視して、ウェイルは容赦なく言葉を続ける。


「ましてやクルパーカーのことなんて、俺には全く関係がない」

「ウェイル!!」


 ウェイルの辛辣すぎる言葉に、フレスは憤りを隠せない様子だった。

 目を見開いてウェイルを睨み付けてくる。

 フレスにとってサラーがどんな存在なのか、ウェイルは知らない。

 しかしその絆は決して脆くないことをウェイルは感じ取っていた。

 友人、いや親友なのだろう。

 親友の痛み、悲しみ、怒りを損得なしに共有できるフレスの優しさに、ウェイルは羨ましさを覚えていた。

 涙ぐみながら頬を膨らますフレスにクスッとしつつ、サラーの肩にそっと手を置いた。


「だがな、相手が『不完全』であるなら話は別だ。奴らは俺達鑑定士にとっても最大の敵だからな。そうだろ? フレス」


 ウェイルの言葉に、フレスは一瞬キョトンとしていたが、その意味を理解した瞬間、両手を挙げて笑顔になった。


「そうだよ! あいつらは悪い奴なんだ! サラー、ボク達も協力するよ!」


 フレスは嬉し涙を浮かべながら、サラーへと寄り添った。


「……ありがとう。ウェイル、フレス……!!」

「恩義を感じる必要はない。『不完全』が絡んでいる以上、俺個人としても関わらざるを得ないからな。サラー、一人でよく頑張ったな。これからは俺達がついている。もう心配しなくていい」

「そうだよ。ボクもついてるからさ! 安心してよ!」

「うう……、うううあああ……、ううわああああああああっ!!」


 サラーは、堰を切ったように声を上げてフレスの胸に飛び込んだのだった。



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