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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第一部 第四章 部族都市クルパーカー編  『戦争勃発、陰謀の末路』
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嵌められたイレイズ

 爆発によって充満した煙の中から一人の女性が現れた。


「誰だ!?」


 私はとっさに炎を身に纏う。


「誰って言われても……そうだね。名乗ってもいいかな? 私はフロリアと申します」

「フロリア? 聞いたことがないな」


 『不完全』にいたころでも聞いたことのない名前だった。


「最近『不完全』に入った新人か……?」

「あはは、違う違う! 私の方が先輩ですよ? でも知らないのは無理ないかも。何せ私は今までずっと潜入任務をしていたからね!」


 愛想よく疑問を打ち消し、笑った彼女。

 でもその背後には、笑えない魔獣が立っていた。


「……魔獣……!! デーモン族か……!!」


 赤く眼光を光らせる悪魔が、彼女に従っていた。


「あの三人は最後に最高の仕事(自爆)をしたね。おかげで任務は簡単に達成できそうだよ。さて、私はもう一仕事しないとね。後はよろしく~」


 フロリアはデーモンに指示を送ると、その場で服を脱ぎ始めた。


「何をしているんだ!?」

「エヘヘ、秘密! それと女の子の着替えは覗くものじゃないよ?」


 イレイズが怒鳴ったけれど、フロリアはウインクを送り返してくるだけだった。


「イレイズ、デーモンが来るぞ!!」

「……そうですね。まずはこちらから……!!」


 私は炎を手繰り、巨大な火炎弾にしてデーモンに打ち放った。

 イレイズも拳を握り、デーモンへ突っ込む。

 私の炎で怯んだ隙に、イレイズの拳を打ち込む。完璧な連携攻撃だ。


「グルオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」


 デーモンの咆哮。その声に、私は戦慄と違和感を覚えた。


(……炎が効いていない!?)


 打ち放った火炎弾は、間違いなくデーモンに命中したはず。

 それなのにも関わらず、奴は火傷一つ負わず、怯むことすらしていない。

 そこで私はこの作戦の破綻に気づいた。


「ダメだ、イレイズ!!」


 そして私の目に映ったのは、魔獣によって殴り飛ばされ、床に叩きつけられるイレイズの姿だった。


「い、イレイズ!!」

「ぐっ……! 大丈夫、私は平気です……」


 ――大嘘だ。

 人間がその数十倍以上の腕力を持つ魔獣に殴り飛ばされたのだ。いくらダイヤの身体を持つイレイズとて、平気でいられるはずもない。


「クッ……、私の身体がダイヤモンドでなかったら、今頃は粉々になっていたところでしたよ……!! それよりもあの魔獣、どうしてサラーの炎が効かない……!?」

「クソッ、もう一発!!」


 今度は先程よりも、より大きな炎球を編み出して、渾身の力で放った。


「今度こそ――――!?」


 だが私の期待は粉々に砕かれた。

 何せ炎は、吸い込まれるように消えていったのだから。

 炎の後には、ニンマリと笑みを浮かべるデーモンが仁王立ちしていた。


「イレイズ! こいつ、何か変な力を持っている! 元に姿に戻らないと!!」


 ――倒せない。

 今の私ではこいつを倒すことは出来ないと判断し、私は急いでイレイズのところへと駆け寄った。

 いや、駆け寄ろうとした。その一瞬の隙を突かれた。

 デーモンは音もなく、そして迅速に腕を伸ばして、私の身体を掴んでいた。

 必死にもがいて抜け出そうと試みたが、全くダメだった。

 炎を出そうとした時、違和感に気付く。

 まず身体に力が入らない。そして何故か炎も出ない。

 最後は――声も出なかった。

 全身から力がすっぽり抜け落ちて、強制的に失神させられるような感覚に陥った。


「サラー!!」


 イレイズの声だけが、ハッキリと脳内で反響していた。


「さ~って。お着替え終了!!」


 フロリアはどこで手に入れたのか、いつの間にか治安局員の証である白きローブを羽織っていた。


「さて、お仕事お仕事! それでは裏切り者のイレイズさん。これから楽しい楽しい逃亡生活を送ってくださいね! それでは!」


 フロリアは部屋から飛び出すと、大声で叫び始めた。


「――誰か来て!! レイリゴアさんが襲われている!! 犯人がまだ中に!!」


 薄れていく意識の中、イレイズの声が聞こえる。


「サラー。どうやら私達は嵌められたようです。ですから貴方だけでも逃げてください。そしてこのことを誰かに――そうだ。ウェイルさんとフレスちゃんに伝えてください。きっと力になってくれるはずです。電信の使い方は判りますね?」


 イレイズは殺した『不完全』の遺体を探って、やはり持っていた爆発する瓶を取り出した。


「ここからは別行動です。私は治安局から逃げないといけません。ですから貴方はウェイルさん達と一緒にクルパーカーへと向かってください。ウェイルさん達は、必ず貴女の力になってくれます。ですから――」

「……う、ぐ……イレ……イズ……」


 最後に見たのはイレイズの笑顔だった。


「信じています。親愛なるサラー! また、クルパーカーで会いましょう。生きて、必ず!」


 デーモンに投げつけられる小瓶。

 小瓶がデーモンに当たるまでの刹那。

 私はイレイズの笑顔だけに目を奪われていた。

 轟音と共に爆発が起こる。

 爆発の衝撃で窓ガラスが吹き飛び、それと一緒に私はデーモンの腕から吹き飛ばされた。


 そして私は――――空へと投げ出された。


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