惹かれる。
おはようございます。
お茶どうぞ!
女性社員の木村由紀だ。
ありがとう。
由紀(狩屋さん今夜空いてませんか?)
ん、何で?
ジャーン!由紀は一枚のチケットを見せてきた。それは、今上映されている人気映画の鑑賞券だった。
おー見てーよ!木村やるじゃん!
俺はめずらしく興奮した。正直見たいと思ったし、こんな誘い方してくる彼女に少なからず好意を抱く!
迷う理由も無く行くことにした。
由紀(じゃあ今夜7時に駐車場で待ってます。)
彼女はそう言うと少しベロを出した。
多分、普通にかわいいんだろう。
俺にはその感覚が鈍いのだろう。
心を持って行かれる事は無い。
そんな事より桐島さんに謝りたい。
別にあのピンク野郎に言われたからでは無く純粋に悪い事をしたと感じたからだ。
昼休み
俺はご飯もたべずに桐島さんを探した。
ふと人影に気づく。
そこには真剣な表情で掃除機を掛ける桐島さんの姿があった。
俺はしばらくその光景に見とれていたが
彼女に声を掛けた。
昨日は出過ぎた真似をして悪かったね。
気を悪くしないでくれ。
どうして俺はいつも上から目線なんだ。
もっと言い方があるはずだ。
自分の言葉に反省しつつ、彼女の反応を見る
桐島(いえ。私こそせっかくのご好意を無駄にしました。、、、貧乏人なんだから素直に頂くべきでした。)
彼女は少しうつむき、つぶやく。
うっ。また、体に電流が走る。彼女の言葉は
心に響く。 それは、彼女自身の偽りの無い言葉だからだ。俺は仕事柄、嘘や上辺だけの言葉の中で生きている。そんな男が純粋な物に触れると体が敏感に反応する。俺自身そんな純粋な物に憧れ、欲しているからだろう。
桐島(仕事中なので失礼します。)
彼女はそう言うとぺこりと頭を下げて行ってしまった。
仕事が終わり約束の場所へ行く。
由紀(狩屋さーんおそいー。)
仕事が終わり女モード全開の彼女が少し不貞腐れて言う。
俺は電車通勤なので彼女の車で映画館へ向かう。
会社の駐車場を出て行く時、急いだ様子の桐島さんを見た。俺は思わず。
あっ!と声が出た。
由紀(どうしました?忘れ物ですか?)
いや。なんでもない。
俺たちはその後、映画を見て、食事をした。
由紀は部屋に誘ってきたが適当に断り駅周辺で降ろして貰った。
またな!
由紀(または無いかもしれませんよ!)
少し怒っている。女からしたら部屋に誘って断られるなんて屈辱的であろう。女の魅力を否定された気分なのだろう。
しかし、俺は自分に正直なんだ。好きでもない女は抱けない。
駅の改札口まで歩いてくると、駅前の牛丼屋にふと目が行く。
桐島さんだ! 彼女は牛丼屋でバイトをしていた。俺は彼女が出てくるのを待った。
何時間待っただろうか。時刻は11時を回っている。
桐島(お疲れさまでした。お先に失礼します。
彼女が出てきた。俺はとっさに体を隠す。
、、、なんで隠れなきゃいけないんだよ。
自問自答すると平静を装い。彼女に声を掛けた。
あれ、桐島さん。奇遇だね。こんな所で会うなんて!
今の俺は相当カッコ悪い。
桐島(あっ、、、えっと、か、狩屋さんこんばんは)
名前がすぐに出てこなかったな。俺は少しイラっとした。
桐島(実は夜、ここでバイトしてるんです。
お昼のお仕事だけじゃ家計が苦しくて、、、
牛丼も頂けますし)
彼女はニコリと笑う。
俺はさっき由紀とフランス料理を食べた。
由紀は肉は太るからと残していた。桐島さんはお店で貰った牛丼を大事そうに持っている
こんな人を抱きしめたくなるのは俺だけだろうか?
別に好きになった訳じゃない。同情からくる感情だ。、、、自分に言い聞かせる。
桐島さん。一緒に歩きませんか?
何を言ってるんだ俺は。
桐島(私、高倉町まで歩くんですよ。大丈夫ですか?)
うー。疲れたらタクシー捕まえるからいいよ
桐島(良かった。夜暗いし男の人と一緒に帰れたら安心です。 じゃあ狩屋さんが疲れるまで一緒に歩いてください)
またニコリとする彼女。