気になる人
俺は急いで階段を駆け下りる。
ハアハア!ちょっとあなた!
俺は桐島さんに声を掛けた。
桐島さんは子供をおんぶしたまま少し身体を傾け俺の顔をじっと見た。
、、、。
俺が分からないのか?
お、俺はここの会社の社員でほら昨日バケツをひっくり返した、、、
桐島(あーあの時の社員さんですか!
あの時はすみませんでした。)
俺は桐島さんの名前を知っているのに彼女は俺の名前をしらない。
なんかイラついたがそんな事はどうでもいい
どうしたんですか?こんな夜遅くに。
桐島(子供が熱を出してしまって病院に行っていました。)
俺は昼の話しを知っているからすぐに状況が理解出来た。
歩いてですか? ご主人は?
桐島(主人はいません。この子が生まれてすぐに死んでしまいました。 車なんでありません。貧乏ですから。)
そう言うと彼女はニコリとした。
やつれた笑顔だがかわいい笑顔だ。
俺の中に電流が走る。今まで味わった事の無い電流だ。
桐島(それでは急ぎますので失礼します。)
彼女はぺこりと頭を下げるとまた歩きだした
俺は気になり思わず聞いた。
桐島さんどこまで帰るんですか?
桐島(高倉町です。)
俺は耳を疑った。高倉町はここから男の足で
1時間はかかる。
俺は迷わず。財布から1万円を出すと。
桐島さんタクシーで帰りなと彼女のポケットに1万円を入れた。
彼女は子供をおんぶしたまま器用にポケットの1万円を出すと
桐島(いりません。頂く理由がありません。
お気持ちだけ頂きます。)
彼女はそう言うと俺にお金を返してきた。
俺はそのお金を受け取ると。これ以上何も言えなくなってしまった。
桐島(ごめんなさい。お名前知らないのでお顔だけ覚えておきます。親切にありがとうございました。)
か、狩屋だ。狩屋剛といいます。
桐島(じゃあ狩屋さんおやすみなさい。)
彼女はまたニコリと笑うと暗い夜道を歩きだした。俺は衝撃、いや電流が体の中を走っていくのを感じている。
決して恋とかではなく今の時代、こんな苦労している女性がいる事に。
と同時に腹が立ってきた本当はお金がほしいくせに無理しやがって!
親切で男気だした金を返された事で俺のプライドは傷付いたのだ
勝手にしろ!
なんかおさまらないから一杯飲んでいくか!