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プロベイショナー 第二章『ガーデン スマイル』  作者: 早生しあ
STORY 1
1/1

思うようにはいかないもので【1】

「あー、またここはトイレか」

 俺は部屋に戻れずに扉を開けて肩を落とした。

 12部屋にリビングダイニングと聞いていたが、各部屋に扉が1つとは限らない。

 しかも、1階2階に1つずつ、マスターベッドルーム全5部屋に1つずつバスルームとトイレがついている。

 2階にある俺とメグの部屋にもバスルームがある。

 部屋の中は大きなベッドに机、本棚、ダイニングテーブル、ピアノ、そんなのを置いても余るくらい。

 俺とメグの部屋だけで、元々住んでたアパートの玄関からバルコニーまで全てが入るんじゃないかと思う。

「金持ちなんだなぁ」

 しみじみと呟く。

 今は会えない友人の家もそこそこ金持ちだったが、ここほどじゃない。

「地図を書こう、そうしよう」

 俺は分かりやすい大きな廊下を進み、玄関に立つ。吹き抜けの玄関ホールから上を見た。

 大きな窓があり、玄関が見渡せる部屋が見える。あそこはベン兄ちゃんの部屋だ。

 荷物を受け取るための机にあるメモを取った。

「ここが玄関……」

「ただいま!」

 書き始めたときに、メグが扉を開けて帰ってくる。学校が終わったらしい。

 俺は転入手続きがまだ済んでないから、今週は休みだ。

「アディ、ただいま!」

「あ、おかえり」

「どうしてん?」

 父さんが俺のメモを見る。俺は恥ずかしくてメモを隠した。

「ああ」

 父さんがその場でメモを書いて俺に渡してくれる。そこには間取りが書かれてて、俺のしてることがお見通しなんだと余計に恥ずかしくなった。

「アディ、手続きが終わったで。学校に行く前に、前の学校に挨拶行くか? ここから車で半日もかかるから、前の学校に通わせられんでごめんな」

 半日。

 伯母さんのところに行ったときも寝てたからイメージがわかない。遠いのかな。

 前の学校に挨拶。

 キャンプに行く前の週、またねと普通に帰った。

 こうなることなんて考えてもいなかった。

「カリス……」

 俺の脳裏に一番仲良かった相手が浮かぶ。

 父親がRKI(感染病研究所)の偉い人だと言ってた。家もここほどじゃないけど広くて、お母さんの作るパイが美味しかった。

「カリスってアディのお友だち? あたしも会いたいのよね」

 メグの言葉に顔を上げる。友達……。

 そういえば、最後に喧嘩して、絶交だと叫んだのを思い出した。

 なんで喧嘩したか、思い出せない。でも、会いたくない、会って何を言えばいいか分からない。

「ううん、友達じゃない。父さん、俺は挨拶しなくていい。お別れを言いたい人なんていない」

 カリスには会いたくないし、母親を娼婦だと罵っていつもトイレで殴ってきた連中にも会いたくない。

 会わなくていいなら、このままでいい。



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