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第8話

 講堂での入学式は、呆気ないほど淡々と続いた。

先生の話に飽き飽きしたあたしは、こっそり周りを見る。

式の席は自由席だったので、隣にはゆきがいる。

ゆきのカッターシャツは白で、あたしのは水色。

2人とも胸に銅色の校章バッジを着けている。

制服で他に変わったところはないから、人か否かはシャツで判断すればいいのか……

周りには白が半分、水色が半分だから、生徒の割合は丁度半々のよう。

こんなにも自然に紛れ込めるんだなぁ……と感心する。

「これで式を終わります。生徒は速やかに教室へ……」

気が付いたら話は終わっていた。



 「華音ちゃん、私の校舎2号棟だから、ここでバイバイ!でも変だよね、1号棟には普通科以外立ち入り禁止なんて」

ゆきは不満そうだ。

そう、科が違うと、校舎まで違うらしい。

理由を知っているあたしは、

「はは……。何でだろうね?」

笑って誤魔化した。

そろそろ、ゆきを誤魔化すことに慣れてしまったようだ。

きゅ~っと胸が痛む。

ゆきと別れ、1号棟へ向かう。

ここからが学校生活本番だ!



 ガラッ!

呼吸を整えてから、教室のドアを開ける。

途端に視線が一気に集まる。

うっ……

人と話すのは苦手な方ではないけど、流石にこのびみょ~な空気には逆らえない。

教室にいるのは半分位だろうか?

普通科は殆ど中学からのエスカレーターだから、仲良しグループが完成している。

おはよう!

と言うタイミングを完全に外し、とぼとぼと席に向かった。

赤城だから、もしかして……という予想は見事的中!

出席番号1番の席に(赤城華音)と書かれていた。

当然だけど、窓際最前列。



 ついてない。

ふっと視線を上げると、

あっ!

咄嗟に喉まで出かかった声を抑えた。

視線の先には……神白君。

席はあたしの斜め後ろ。

学長や久瀬先生から脅されたおかげで警戒態勢に入ったあたしをちらっと見ると、すぐに視線を逸らして目を閉じた。

やな感じ。

でも、一瞬見えた彼の目は、日本人としてありふれたダークブラウンだった。

あたしは席に座る。

すると、クラス内の視線がもっとあたしに集まった……気がした。

最前列だから、その視線が本当かどうかは振り返って確認するしかない。

でも、振り返れば確実に神白君が視界に入る。

悶々と悩んでいる間にチャイムが鳴った。



 「チーッス」

チャイムと同時にダルそうな男が入って来た。

ぼさぼさの髪に眠そうな目。

よれたスーツを着崩している。

新卒ですと言っても通じるほど若そうだ。

「えー、HRを始める。いないやつー。いないな。」

そう言うと手元の出席表にのろのろと何かを書き込んだ。

「これから1年間、お前らの面倒を見る紺野だ。面倒事を起こすなよ」

頭をポリポリ掻きながら言い放つ。

「じゃ、質問あるやつ」

「先生、彼女いますか?」

「担当教科は?」

「種族は?」

部屋のあちこちから質問が上がった。

そりゃそうでしょ。

さっきの自己紹介では情報が足りなさすぎる。

「種族は妖狐、中国ではフーヤオと呼ばれてる。担当教科は変装と潜入。」

ここで、にやっとして、

「彼女は……秘密だ。」

途端にクラスからは楽しそうな笑い声。

掴みはよかったらしい。

担当教科に疑問を持ったが、話はどんどん流れる。

「このクラスは外部からの入学者は4人だ。じゃ、殆ど知り合いだと思うが、そっちから順に自己紹介。名前、種族と一言」

というと、あたしに視線が移った。

ああ、出席番号の呪い……

「えと……、赤城華音です」

そう言った瞬間、興味なさそうだった人たちも、がばっと顔を上げて凝視された。

やりにくい……

「種族はヴァンパイアです。よろしく」

何とも無難な自己紹介!

こういう時、心底センスが欲しいと思う。

「じゃ、次」

2番目の人が自己紹介を始めても、視線はあたしに集まったまま……な気がした。

お蔭でみんなの話が頭に入らない。

「神白陸です。種族は人狼」

そう聞こえたとき、視線は彼の方へ。

この人も外部なのかな。

何より、突き刺さるような視線が離れてほっとした。


 プリント配布と諸注意が終わると、紺野先生は

「授業は明日からだぞ。それと、最後に一言いいか」

「赤城と神白を特別扱いする気は更々ない。普通に接してやってくれ。以上だ。今日は解散」

そう言うなり出ていった。

生徒たちは、一斉に帰る支度を始める。

あたしはプリントの内容チェック。

明日の時間割は……

1限・技術1(開錠技術)、2限・国語、3限・変装と潜入、4限・世界史

ん?

おかしくない?

時間割表には、高校の授業としては相応しくない教科が所々に入っていた。


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