視点の低いメリークリスマス
今日は寒い日だ。
街では人々が電飾で着飾った木を眺めたり、赤い服を来てケーキを売ったりしている。まるでお祭り騒ぎだ。何がめでたいのかわからないけど、こんな寒い日によくやるよ。
ぼくは足を早める。今日は楓のところでご飯を食べよう。
楓っていうのは中学生の女の子、ぼくが関係を持ってる可愛い女の子の一人。以前街で声をかけたら簡単に家にあげてくれた。ぼくは女の子によくモテるからね。楓もすぐにぼくを受け入れて、その日は一緒に寝た。
楓は活発な子でよく気が利く。楓のお母さんもぼくには良くしてくれる。だから今日は楓の家でご飯を食べよう。
この後の夕食に思いを馳せながら道を行く。すると視界の端に白が過ぎった。
電柱の傍で寂しそうに佇む女の子。綺麗な白い毛。スラッとした身体。この辺では見かけない綺麗な子だ。
『そんなところでどうしたの? 風邪引くよ?』
どうしても気になって声をかけてみる。近寄ると、ふわりと良い匂いがした。
『家、追い出されちゃって』
『どこか行くところは?』
『……』
ぼくの問いに、彼女は俯きながら沈黙で答える。
『じゃあ、ぼくと一緒に来る?』
自然とその言葉が出た。ぼくにも誰かを思いやる気持ちがあるのかもしれない。
『え?』
また、正直チャンスだと思ってもいた。こんな綺麗な子はなかなかいない。
『でも、きっと迷惑かける』
『大丈夫さ。ぼくはたくさん家を持っているからね。その一つに君をあげるくらい大したことないよ』
『…………じゃあ、お言葉に甘えて』
最初は躊躇う彼女も、やはりこの寒い中にずっといるのは嫌なのか、若干の間を起きながらもそう答えた。そして、並んで歩き始める。さて、楓には何て言おうか。
近道を通ると楓の家にはすぐ着いた。ぼくは専用の入口から入る。
「あっ、来てくれたのね? 今日はもう来てくれないかと思っちゃった。あなたの分のご飯も用意してるよ」
楓がお皿を持ってきてくれる。そこで楓は彼女に気付いた。
「あれ、その子は?」
『ああ、この子は――』
「ふふ、もう一皿持って来るから少し待っててね」
楓はぼくが一瞬言いよどんだことには気にせず、またすぐに奥へ引っ込んだ。どうやら彼女のことも受け入れてくれるようだ。楓はすぐに戻ってきた。
「はい、お待たせ。それとメリークリスマス! ミケ」
楓がぼくの特徴にちなんだ名前を呼ぶ。
『メリークリスマス、楓』
何がめでたいのかわからないけど、今日は何だか祝いたい気分だ。
隣でご飯に夢中になっている白を見ているだけで幸せな気分になる。これが一目惚れというやつなのかもしれない。
なるほど、これがホワイトクリスマスってやつか。
「ニャ~」
笑顔でぼくらの前にしゃがむ楓を見上げながら、もう一度祝いの言葉を口にした。
私猫飼ってないんですが、猫は好きです。