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炎樹5才

炎樹えんじゅは窓から外を見てホウと溜息を吐いた。今日もまだ母様は帰ってこない。


「どうした炎樹」


「父様………母様は私の誕生日までに帰って来てくれるかなぁ………」


母様はいつも炎樹の誕生日の3日前には帰って来ているのに今回は2日前になっても帰ってこない。


「少し前に、南の戦が終わったからな。葬送歌を歌わねばと手紙で言っていた。規模が大きかったから手間取っているんだろう」


炎樹の大好きな母様は歌士の人、森の人と呼ばれる森歌しんかの民の歌い手だ。その容姿から『朱炎の歌姫』というあざなで呼ばれている。父様もまた同じく『深緑の長』『森の王』と呼ばれる歌い手でこの森歌の民の族長でもある。若い頃は共に旅をした事もあったようだが、炎樹が産まれてからは交代で村を出て旅をしている。両親共に揃っているのは年に数カ月だけだ。

森歌の民の歌は人の子の歌とは違い、雨を呼び、森を育て産まれた子をを祝福し、死にゆく人の道標となる。とても重要な歌を歌わねばならない。

その仕事はとても尊敬されるもので、世界の各地で村人や王が森歌の民が訪れるのを待っているのだ。その割に村の暮らしはとても慎ましい、自給自足の生活だ。森歌の民は誇り高く、その日の糧しか受け取らない。宝石も絹も森歌の民の誇りの前には全てが無意味。そう言われるほど彼らの生活は徹底していた。それがゆえに無駄な争いが起きない。それがゆえに外の誰もが森歌の民に敬意を示す。でも炎樹はまだ5才の子供だったので、両親が家にいてくれる方が嬉しいのだった。


「今日、学校で言われたの。誕生日にも帰って来てくれないなら母様は炎樹の事大事じゃないって」


何時の世でも子供は口さがない事を言うもの。しかし、炎樹は思いっきり傷ついていた。


「馬鹿な事を。他の子に何と言われようと、炎樹。これだけは覚えておくんだ。母様も父様も炎樹が大事だし大好きなんだぞ?そんな悲しい事を言うもんじゃない。母様が聞いたら泣いてしまうかもしれん」


炎樹の朱金の髪を撫でながら父が様が優しく炎樹を抱きしめる。


「本当に本当?」


「本当に、本当だ」


「えへへぇ」


どうやら小さなお姫様の機嫌は治ったようで、満面の笑みで父様に抱きついた。


「そら、炎樹、見て御覧」


「?」


窓の外には急ぎ足でこちらに向かう人影。炎樹と父様に気付いて手を振って微笑む。


「母様だぁ!!!」


慌ててパタパタと外に出る。そのまま走って行って炎樹は思いっきり抱きついた。


「お帰りなさい!!お帰りなさい母様!!!」


「ただいま炎樹!遅くなってごめんね?いい子にしてた??」


「うん!!!炎樹、ちゃんといい子にしてたよ?」


「ふふ。大きくなったわね!私の可愛い小鳥さん」


そう言うと母様が炎樹の頬にキスをする。


「お帰り!」


「ただいま、あなた!」


父様と母様が互いの頬にキスをする。森歌の民の親愛の情の表し方だ。


「ずるい!!父様!!!炎樹まだ母様にしてない!!!」


「あぁスマン」


そう言って苦笑した父様が炎樹を腕に抱きあげる。こうすれば母様の顔に炎樹の顔が届くからだ。


「えへ。母様大好き!」


そう言って母様の頬にキスをする。


「私も大好きよ!炎樹」


今日は母様と父様と三人で川の字になって寝るだろう。母様は外の世界であった色々な事を話してくれるに違いない。炎樹は幸せそうに二人に挟まれながら家に入って行った。

歌えぬ小鳥のオラトリオを書き終わった時に、母様~!!と飛び出してきた子がいました。炎樹です。なんとなく、終わらせたくなくなってこの形で書かせて頂く事にしました。あまり長いお話にはならないと思いますがお付き合い頂ければ幸いです。

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