夏休み
~quest and event~
35学生万歳・投稿日:2020/7/15(金)09:33:02
もうすぐ夏休みだな
36社長炎上・投稿日:2020/7/15(金)09:34:22
>>35てめーは俺を怒らせた
37名無し・投稿日:2020/7/15(金)09:34:28
>>35ああ、そろそろエンシェンティアも夏休みイベントが始まる季節か
38名無し・投稿日:2020/7/15(金)09:36:03
つい最近エンシェンティア始めたサラリーマンで、イベントとか全然分からない。誰か詳しく
39名無しという名のシナナ・投稿日:2020/7/15(金)09:36:59
>>38七月下旬になったら嫌でも分かる。 去年のテーマは花火だったか
40名無し・投稿日:2020/7/15(金)09:37:10
今 年 の テ ー マ は 肝 試 し と い う 噂
41名無しに代わって俺様が通ります・投稿日:2020/7/15(金)09:39:48
>>40ソースは?
42名無しという名のナナシ・投稿日:2020/7/15(金)09:39:59
>>41ウスター
43名無しに代わって俺様が通ります・投稿日:2020/7/15(金)09:41:01
>>42一生ROMってろ
44社長炎上・投稿日:2020/7/15(金)09:45:45
そういや、ヒバナ君が今回のイベントでどんな活躍するか期待age
45名無し・投稿日:2020/7/15(金)09:46:03
>>44
46底無し喰・投稿日:2020/7/15(金)09:46:05
ヒバナ君は私のもの
◆
「そうそう、ヒバナってクエストやったことある?」
「クエスト? あの、依頼を達成して報酬貰うやつ?」
「そうそう、まだレベルが低いからクエストの種類も少ないけどレベルが上がれば随時クエストが追加されるし、新しいアーティファクト目当てでやってみない?」
タウンの噴水広場の一角で江坂と仙波は会話していた。陽は高く夏特有のジリジリとし日差しが降り注いでいる。無論、現実ではなくゲームなので暑さを感じることはない。
彼らの周りでは数多のプレイヤーが往来を繰り返しており喧騒が大きい。
そして仙波は江坂と会話しつつも実際は脳内で別思考を繰り広げている。
――――前、なんかククルなんて女の子と一緒にいたのはさんざん問い詰めたし、うん。別にいいよね。それにあのククルが私と緋花のことをカ、カップルとか勘違いして散々だったけど大丈夫。今は今だし。
「で、ちー姉。さっさとクエストやろうぜ。時間の無駄だし」
――――底無し喰からしょーもないメールも来てたけど無視無視。緋花にアーティファクトあげたとか言ってたけど大丈夫大丈夫。
「おい、ちー姉、気分でも悪いのか?」
「あ、いやいや何にもないよ! そだね、早くクエスト始めよっか」
仙波が立ち上がると彼女のキャラのアバターである桃色の長いツインテールが楽しそうに揺れた。彼女がやってきたのは噴水広場から武器屋の方角へと向かい、そこを通り過ぎてさらに進む。そして道の隅に設営された小ぶりの緑色のテント。そこが目的の場所のようだ。
「ここがクエストを受けるところか?」
「そうだよ。プレイヤーはクエスト屋なんて呼んでるけど……。ちょっと待っててね」
そう言って仙波はテントの前でしばらく武器屋ウィンドウと似たような動作をすると、江坂の方を向いた。
「よし、クエスト受注完了。早く達成しよっか!」
そして二人はクエストを受注して密林のエリアへと来た。空は蒼く雲が線を引いてる。周囲は木々に囲まれていて一本道が木々の中央を通っている。道を逸れて木々が密集しているところに入ると暗く、いつモンスターと出くわしてもおかしくはないだろう。
「で、このキノコを10個集めればクエストクリアなのか?」
「そうそう。頑張ろう!」
「なんかこうさ……もっと凄いモンスターを討伐するようなクエストなんて……」
「まだ早すぎるよ?」
「だよな……」
「ほらほら、早速一個あったよ」
仙波が道を逸れてキノコを手に取った瞬間に~Battlefield development~の表示が頭上に現れる。しかし仙波は慌てるでもなく江坂を手招きする。
「ほらほらヒバナ。こんな雑魚程度に手こずってちゃ駄目だよ?」
「任せろって」
江坂は背後の虚空から大剣を引っ張り出し、構える。そして前方から木々を分けて出現したのは身の丈2メートル強はあろうかという赤銅肌の鬼だった。その巨体が一歩を踏みしめるたびに地面が軽く揺れる。金棒を振り回し江坂に近づいてくる。
「これ、やばくないか?」
「う、うーん……大丈夫大丈夫。ヒバナでも勝てるよ、多分」
「最後の一言が余計なんだって……」
やはり高レベルの仙波が参戦すると一瞬でカタがついてしまうからか、彼女は離れた所から傍観を決め込んでおり戦闘役は実質江坂一人のみである。
そして赤鬼は金棒を振り上げ、振り下ろすが手応えは感じていないようだ。それもそのはず。江坂は横に避けて金棒の一撃をやり過ごし既に大剣を振りぬいていた。鬼の口から発せられるのは苦悶の声。鬼の傍に赤い数字で32とある。
「ほらほら、ヒバナでも勝てるよ!」
「弱い俺でも勝てる、みたいな言い方はやめてくれよ……」
苦笑しながら江坂はフットワークを最大限に活かして鬼の一撃を避け続け隙ができたところで大剣で薙ぐ。ヒットアンドアウェーの戦法を取っている。それが継続すること数分。遂に江坂は赤鬼を撃破するに至る。
「やったねヒバナ!」
「まあ、こんなもんだろ」
江坂は大剣を虚空へと仕舞って一息つく。
「よし、次のやつを探すか」
「ほら、あったあった」
仙波はすぐさま次のキノコを見つけ出して手に取る。しかしその直後にまた~Battlefield development~の表示。そして木々の陰からまた先ほどと同様の赤鬼が現れる。
「なあ、ちー姉。もしかしてこれって……」
江坂は疑問を呟きながら虚空から大剣を引き抜いて構える。
「ヒバナの考えてる通りだと思うよ。キノコ採るたびにこの鬼が出てくると考えて間違いないと思う。じゃ、頑張ってねー」
仙波はそう言って桃色の着物を翻しながら後方へと跳ぶ。呆れたように、しかし半ば諦めがついているのか、江坂は大剣を構えて赤鬼を迎え撃った。
「はい、クエストクリアおめでとー」
「まあ、レベルも上がったし良かったかな」
二人はタウンに帰還すると先程向かったクエスト屋へと向かう。仙波はまたテントの前で操作をすると江坂と彼女の頭上に~quest clear!~の表示が浮かび上がった。依頼達成が認められると二人はまた新しいクエストを受注して、再び噴水広場へと歩き始めた。
「ヒバナも大剣以外のアーティファクトを持たないとそろそろ厳しいよね」
「そうだよな……前、クリアボーナスで手に入れたやつはマシなのは壊れたし、それ以外のも強いとは言えないから強力なのを欲しいけど……」
そう言ったヒバナの脳裏に過るのは“底無し喰”から譲り受けた“バスターブレード.verラピッドアクセル”というA級アーティファクトの存在。劣化率99%で使い物にならないが修理すればまた使えるようになる。もっとも修理するだけで莫大な金額が必要になるのだが。
「まあ、タウンで売ってるやつを買ってもいいし、エリアに行ってゲットするのも良いし……」
「やっぱり自分だけのアーティファクトとか憧れるよなぁ」
「そだねー。合成素材は持ってるんだしA級のアーティファクトと合成したら良いやつができるんじゃないかな。どっちみち早すぎるけど」
やれやれ、と言うように仙波は首を振る。そして二人の背後からダダダと誰かが駆けてくる音がする。それに気づいたのは江坂だけのようで彼だけが後ろを振り返る。
「ヒッバナくーん!」
江坂は見た。身の丈以上の戦斧を苦ともせずに背負い蒼い長髪を一本結びにした女性―――“底無し喰”がこちらに向けてダッシュして飛びかかって来ているのを。
「おわぁ!?」
当然受け身をとることすら許されずに地面と衝突して彼女に覆いかぶさられる。江坂の隣にいた仙波は状況を掴めずにただ現状を呆けて見ているだけだ。しかし数秒が過ぎると思考が追いついたのか底無し喰―――ハルナを江坂から引き剥がす。
「ちょ……な、なな、何をしてるの!?」
「えー、ヒバナ君にハグするぐらい別にいいじゃない」
不快感を露わにする仙波はハルナにくってかかる。
「……目障りなんだけどさ」
「あ、ヒバナ君! 私があげたバスブレどうかしら? 私が修理費肩代わりしてもいいんだけど」
「バスブレってB級のアーティファクトじゃない」
「違う違う。私があげたのは限定版のラピッドアクセルだからA級だけど」
「……なにそれ、ヒバナ?」
江坂には分かる。仙波が怒っていると。昔からこうなった仙波だけはいつまでも苦手だ。
「何でヒバナ君に説明を求めるのかしら。ちゃんとあなたにメール送ったじゃない。無視されたからこうして直に会いに来たのに」
「……知らない知らない。宛先間違いで送信されなかったんじゃない?」
「パーティアドレス持ってるのに間違えるはずもないんだけどね」
「そんなことはどうでもいい……まだ初心者のヒバナが上級アーティファクトを使っても“ベベ”になるだけじゃない!」
「ベベ?」
聞き慣れない単語に江坂は思わず疑問を口にすると、ハルナが説明してくれる。
「本当は赤ん坊とかっていう意味なんだけど、ここじゃ自分でレベル上げをせず他のプレイヤーに寄生して高レベルだったりアーティファクトだけ強いものを持っていて、肝心の実力が伴っていないプレイヤーを指す隠語よ。要は他人に頼ってばかりで自分は楽をしている奴の事」
―――って事は、俺がこのバスブレを使うようになればこれに頼ってばかりで進歩しないから、ちー姉は怒ってるのか。
ハルナは続けざまに言う。
「まあ劣化率は99%だし使えても一回限り。無駄にしたくないのなら修理費を稼がなければならない。その稼ぎだけでも相当な練習になるはずだけど。もちろんさっきの私が修理費云々はジョークジョーク」
「そう……もういい。さ、行こっかヒバナ。早くクエスト終わらせちゃおう」
そう言って仙波は強引に江坂の腕を引っ張り、ゲートの方へと足を進めていく。ハルナはすぐさま踵を返してタウンの人ごみの中へと紛れて行った。
「ちょっ……ちー姉!」
仙波の強制誘導によってエリアまで来た江坂は洞窟のようなその構造のエリア内を数歩進んだところでやっと解放された。
「…………」
仙波は変わらず無言のままである。足を止めて俯いたままだ。江坂は声をかけるべきか判断がつかず数歩先にいる桃色の着物を着た幼馴染の背中を見ている。
「あーあ、私らしくないなぁ……」
そして彼女が零したのは自嘲を含んだ独白だった。そして江坂には分かる。今まで仙波は怒っていたんじゃない。今にも泣きそうなほどに悲しんでいただけだ。
「そんなこと気にしてたらキリがないぞ? 早く行こうぜ!」
今度は少年が少女の手を引く番。少女は恥ずかしそうに顔を伏せたまま少年に手を引かれるがままに歩を進める。
洞窟内は光が入るような箇所が無いにも関わらず、視界は良好だった。それは洞窟の壁や天井などに生えている苔の影響だ。この苔は自然発光し洞窟内を適度に照らし出している。発光している苔は緑色の淡い光を放ち洒落たランプのようにも見える。
「で、クエストの内容はどんな感じなんだ? さっきのような採集?」
「んー、違うよ。このダンジョンの最奥部にいるボスモンスターの討伐だよ」
「よっしゃ、やる気出てきた!」
江坂のその姿をみた仙波はやっと笑った。それを横目で仙波に悟られないように確認した江坂はまた内心で一息をついた。
そして雰囲気が軽くなってきたところで戦闘が開始される。二人の前に立ちはだかったのは形状を留めていない黄色のスライムが三体。その有色透明のゼリー状の体の中には核と思しき球体がある。
「さっさと倒してボスも倒すか!」
「あ……ヒバナストップ!」
駆けだした江坂に制止を呼び掛けた仙波だったが遅かった。三体の内の一体が迎撃を開始する。そのスピードは江坂の予想を超えているもので反応が間に合わない。そして一撃を喰らってしまう。それだけで江坂の残りのHPがレッドゾーンに突入したなど本人には理解が追いつかなかっただろう。
そして体勢を崩している江坂に向けて残りの二体から追い打ちがかけられる。しかしその両者の間に割り込んだのは青い硝子のような障壁だった。ゼリーの攻撃はその障壁に阻まれ、江坂は危機から逃れた。
「もう……ヒバナはもう少し慎重に、ね?」
「まさかこんなに強いとは思わないって……」
江坂を守った張本人の仙波は江坂の傍に立つ。そして障壁は未だ展開したままで三体のゼリーはただ無暗に攻撃を繰り返すだけだ。
「当たり前だよ。今のヒバナよりワンランク上のダンジョンだし。ここ」
「それを先に行ってくれよ」
「エリアの情報を確認するのは当然だよ?」
「つまり俺が悪い、と」
「反省してくれたら万事オッケー」
そして仙波の背後に現れるのは彼女の身の丈の二倍の大きさはあろうかという折り鶴。その時障壁が解除され黄色のゼリー達がなだれ込んできたと思われたが瞬間、その三体が火柱よって葬られていた。
「その分、経験値は多いんだけどねー」
その証拠として江坂の体が黄金に輝いていてレベルアップしたと強く主張していた。
仙波は江坂のHPを回復させると一つの腕輪を取りだした。
「はい、これ。私のお古だけどまだ劣化率は大丈夫だし……」
仙波の左腕にこの腕輪型アーティファクトと同型の物が装備されていることを江坂は知っている。しかし効力までは知らないが。
「さっき私が使ったみたいに障壁を張るアーティファクトだよ。防御手段がほとんどないヒバナはこれぐらい無いと厳しいから」
「ありがとう。早速使わせて貰うか」
仙波から受け取ったアーティファクトを装備すると、左腕に腕輪が装備された。
◆
ククルはパーティを組まずに一人でエリアへと足を運んでいた。エリア自体は自分のレベルより下の場所を選んでいる。今回の目的はエリアクリアではなく新しいアーティファクトの試運転。ヒバナとキョウスケの協力の元で手に入れることのできたレアアーティファクト。
今までのククルの使っていた魔導書と同じ。今までは二冊だったがそれが三冊に増えた程度。キョウスケは召喚獣を使役するタイプと言っていたが。そして魔導書を詠み、喚ぶ。
「ソロモン第57柱―――オセ!」
ククルの足元に魔法陣が広がり、そこから彼女の召喚獣が姿を現す。
◆
ククルはタウンに帰還していた。あのアーティファクトは想像以上に強力で自分でも驚いたほどだった。むしろ自分ごときが本当に使っていい代物なのか心配になってくる。
「はあ……それに夏休みイベントもあるしなぁ」
つい十数分前に公式HPで公開された情報だった。参加条件として“旅団≪りょだん≫”とやらに参加しなければならないらしいが、詳しく調べはせずそのままエンシェンティアにログインした。なぜなら早くあのアーティファクトを使ってみたかったから。
一旦ログアウトして詳しく調べたようとした矢先に、自分の前方を見知ったプレイヤーが歩いて行く。
―――ヒバナ君?
それと隣を桃色の着物と同色のロングツインテールのアバターのプレイヤーが歩いている。明らかに女性だ。もしかしたら以前、リアルで偶然会ったときにいたチヅルさんかもしれない。話しかけてみよう。そう思った。
「ヒバナ君!」
そう言うと男性プレイヤーの方が先にこちらを振り向いて、少し遅れて女性プレイヤーの方を振り返った。
「おう、ククル」
江坂は右手をあげて挨拶するが、対する仙波は一瞬の不快感を表情に表わし、すぐに引っ込める。
「あ、えーと、前にヒバナと一緒にいた女の子だよね?」
「そうそう」
江坂に確認を取った仙波は少しの安堵を浮かべる。そしてククルがこちらに向かってくる。
「えっと…夏休みイベントのこと聞きました? ついさっき情報が出たんですよ!」
「夏休みイベント?」
「あ、発表今日だっけ確か」
疑問に首をかしげる江坂だが仙波は思い出したように人差し指を唇にあてている。
「えっと、その参加条件が五人一組を作って参加申請をすることみたいです」
「で、ククルちゃんはそのメンバーにヒバナと?」
「はい……今すぐに連絡できるのはヒバナ君だけでしたし」
言い知れないプレッシャーを感じながらククルは説明をする。この圧力は何によるでもないただの錯覚の類なのだろう。しかし感じるのは目の前にいる仙波が怖いと思ってしまうからだろうか。




