第7話 「大規模戦争編」
【シーン:王国北方国境・前線陣地】
【エステル レベル32】
冷たい風が、
頬を打つ。
地平線の向こうに、
黒い影が連なっている。
魔族軍。
数は、
見ただけでわかる。
多すぎる。
エステルは、
杖を握りしめた。
ここは、
戦場。
これまでとは、
違う。
「……大丈夫か?」
隣で、
カインが聞く。
「……うん」
嘘だった。
怖い。
でも、
逃げない。
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【シーン:王国軍後方支援陣】
【エステル レベル32】
エステルたちは、
後方支援部隊だ。
前線で戦う兵士の
治療を担当する。
簡易テントが、
ずらりと並ぶ。
中には、
呻き声。
血の匂い。
「次、
来ます!」
兵士が、
担ぎ込まれる。
腹部裂傷。
内臓が、
見えている。
「……小回復」
淡い光。
だが、
追いつかない。
エステルの胸が、
熱くなる。
「……存在回復」
透明な光が、
兵士を包む。
内臓が、
元に戻る。
兵士は、
息を吹き返す。
周囲が、
ざわめく。
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次々と、
負傷兵が来る。
腕がない。
脚がない。
死体も、
運ばれてくる。
エステルは、
歯を食いしばる。
「……存在回復」
「……存在回復」
透明な光が、
何度も溢れる。
倒れていた兵士が、
次々と起き上がる。
「……生きてる?」
「夢か……?」
現場が、
混乱する。
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【シーン:前線】
【エステル レベル34】
状況が、
急変する。
魔族軍の、
突撃。
後方陣地まで、
押し込まれた。
魔物が、
テントを破壊する。
悲鳴。
エステルの目の前で、
兵士が、
首を刎ねられた。
頭が、
地面を転がる。
思考が、
止まる。
でも。
体が、
勝手に動いた。
「……戻れ!」
光が、
爆発する。
首と体が、
繋がる。
兵士は、
咳き込む。
魔族兵が、
一瞬、
怯む。
その隙に、
王国騎士団が突入。
戦線が、
押し返される。
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【シーン:戦場中央】
【エステル レベル36】
エステルは、
走り続ける。
血と泥で、
足元が滑る。
倒れた兵士を、
一人ずつ、
戻していく。
限界。
視界が、
揺れる。
それでも、
止まらない。
「……守るって、
決めたから」
呟きながら、
光を放つ。
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戦場の流れが、
変わった。
倒しても、
王国兵が戻る。
魔族軍は、
恐怖する。
「死なない兵」
そんな噂が、
広がる。
士気が、
爆発的に上がる。
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【シーン:戦闘終了後】
【エステル レベル38】
魔族軍は、
撤退した。
戦場には、
無数の死体……
の、
はずだった。
だが、
多くが、
生きている。
エステルは、
膝をついた。
もう、
動けない。
ローガンが、
前に立つ。
「……やりすぎだ」
叱る声。
でも、
優しかった。
「だが、
よくやった」
エステルは、
小さく頷く。
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【シーン:王国軍本陣】
【エステル レベル38】
報告会。
将軍たちが、
ざわつく。
「後方に、
奇跡の治癒術師がいる」
「死者を戻した」
噂は、
一気に広がった。
エステルは、
俯く。
目立ちたくない。
でも、
もう遅い。
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【シーン:野営地】
【エステル レベル38】
夜。
焚き火の前で、
リオと、
カインが座る。
「エステル……」
リオが、
言葉を探す。
「すごいな」
エステルは、
首を振る。
「……怖いだけ」
カインが、
静かに言う。
「それでも、
俺たちは、
助かった」
エステルは、
焚き火を見る。
揺れる炎。
決める。
この力で、
終わらせる。
戦争も、
悲しみも。




