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第3話 「ギルドの監視対象になる」



【シーン:王都冒険者ギルド・受付前】

【エステル レベル27】


重たい扉を押すと、

いつもと同じ喧騒が広がった。


酒の匂い。


金属のぶつかる音。


冒険者たちの笑い声。


その中に、

エステルは、

そっと入り込む。


まだ、

胸の奥がざわついていた。


昨日の光。


消えた魔物。


ステータスに表示された、

見慣れないスキル名。


存在回復。


意味は、

わからない。


怖い。


でも、

生きて帰れた。


それだけは、

事実だった。


受付に立つと、

ポリーが顔を上げる。


「あっ、

エステルさん」


すぐに、

気づいてくれた。


それが、

少し嬉しい。


「依頼の、

報告です……」


依頼書と、

魔物の素材袋を差し出す。


ポリーは、

中を確認する。


「スライム……ラット……」


袋の底で、

黒ずんだ爪が、

転がった。


ポリーの動きが、

止まる。


「……これ、

腐蝕グールの爪、

ですよね?」


エステルは、

小さく頷く。


「……いました」


ポリーは、

一瞬、

言葉を失った。


「下水遺跡の

初心者向け区域に……?」


「……はい」


ポリーは、

奥の部屋を見る。


「少々、

お待ちください」


---


【シーン:ギルド長室】

【エステル レベル27】


重厚な扉の向こうで、

ローガンは腕を組んでいた。


鋭い目。


歴戦の冒険者の目だ。


「話せ」


短い言葉。


エステルは、

下水遺跡で起きたことを、

震える声で説明した。


腐蝕グール。


致命傷。


光。


生きていたこと。


ローガンは、

黙って聞いている。


最後まで、

表情を変えなかった。


「スキルは、

何だった?」


「……存在回復、

と表示されました」


その瞬間、

ローガンの眉が、

わずかに動いた。


「……もう一度言え」


「存在回復、

です」


部屋に、

重い沈黙が落ちる。


ローガンは、

ゆっくりと椅子に座った。


「ポリー」


「はい」


「この件は、

極秘扱いだ」


ポリーは、

強く頷く。


エステルは、

何が起きているのか、

わからない。


「……私、

何か、

悪いことを……?」


ローガンは、

首を振った。


「違う」


「だが、

普通じゃない」


---


【シーン:ギルド長室】

【エステル レベル27】


ローガンは、

古い棚から、

一冊の本を取り出した。


革表紙。


端が、

擦り切れている。


「古文書だ」


「神代の記録が、

断片的に残っている」


ページを、

ゆっくりめくる。


指で、

一か所を示した。


『存在の再定義』


読めない文字も、

多い。


だが、

その言葉だけは、

はっきりしていた。


「死ではない」


「時間逆行でもない」


「存在そのものを、

引き戻す力だ」


エステルは、

息を呑む。


「……それって、

すごい、

んですか?」


ローガンは、

即答しなかった。


「……神ですら、

扱うのを避けたと、

書かれている」


心臓が、

跳ねる。


「私、

そんなの、

いりません……」


正直な気持ちだった。


ローガンは、

静かに言う。


「だからこそ、

誰にも言うな」


「使いどころも、

考えろ」


「お前は、

しばらく

低ランク依頼だけを

受けろ」


「こちらで、

様子を見る」


---


【シーン:王都路地】

【エステル レベル27】


ギルドを出ると、

足が少し震えた。


世界が、

急に大きくなった

気がする。


自分は、

ただの

追放された治癒術師の

はずだった。


それなのに。


「……普通に、

生きたいだけなのに」


そう、

呟く。


空を見上げる。


雲が、

ゆっくり流れている。


エステルは、

杖を握りしめた。


決める。


この力は、

誰かを助けるためにだけ

使おう。


それ以外には、

使わない。


---


【シーン:簡易宿・小部屋】

【エステル レベル27】


狭い部屋。


硬いベッド。


でも、

屋根がある。


エステルは、

ベッドに腰を下ろす。


ステータスを、

そっと開く。


【スキル】

存在回復


説明欄は、

空白だった。


わからない。


でも、

怖い。


それでも、

逃げない。


「……冒険者、

だから」


小さく、

呟いて、

目を閉じた。


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