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その道化師は夢を見ない  作者:


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episode1 開演のベルが鳴る

 

 天上の星を地上へ引きずり落としたがごとく煌めく照明、夜にも関わらず移動遊園地は人混みで賑わっていた。光の中を駆けるメリーゴーラウンド、景品が飾られたミニゲームに食べ物の屋台……さらにその奥にはひときわ大きなテントがそびえ立っている。


 そこは非日常の異空間。


 興奮と期待に頬を染め、人々はチケットを手にその中へと吸い込まれていく。


 開演前にも関わらず、早くも熱気に包まれた空間が突如暗くなった。

 数人の客が驚くも、すぐに鳴り出したベルと軽やかなメロディーにサーカスがはじまるのだと誰もが中央の舞台へと目を向けた。


「レディース・アンド・ジェントルマン」


 声と共にスポットライトが灯った。


 光を一身に受けて胸に手を当てるのは一人の男。

 身なりのよい服を纏い、恭しく礼をする様は紳士そのものだが……上げられた顔に誰もがその正体を知る。

 頬に描かれた黒い雫。涙を表す化粧にどこか人を食ったようなお道化た表情。


「ピエロだっ!」


 立ち上がり叫んだ小さな観客へと道化師は軽く手を振る。

 慌てて子どもの口を塞ぎ座らせようとした若い母親の頬がその笑みに淡く染まった。道化師を演じるのはまだ若く容姿の整った男だったからだ。


「本日はようこそお越しくださいました。サーカス『fantasia(ファンタジア)』の団長を務めますジャバウォックと申します。今宵は日常を忘れ、めくるめく一夜の夢をお楽しみください」


 道化らしからぬ落ち着いた口上を述べた彼の元へ台車の付いた台が運ばれてきた。白い手袋をした手が台の上の棒と瓶を掴む。


「まずは、この名に相応しい演出を」


 大きく息を吹いた口から業火が放たれる。


 黒き竜(ジャバウォック)の放つ炎に会場が一気に盛り上がった。


 その後も華やかな演出が次々と続いていく。

 百発百中のナイフ投げに、やたらと色男な魔術師の奇術、可憐な姫君の歌と踊りに、男装の美女による綱渡り……。

 息をするのも忘れ観客は舞台に食い入る。歓声を上げ、ときには手に汗をにぎり、誰もが子どもに返ったように瞳を煌めかせて。

 夢のようなひと時は猛獣使いによるショー、そして息ピッタリの空中ブランコで幕を閉じた。


 舞台に集う演者たちへと贈られたのは、割れんばかりの喝采と鳴りやまぬ拍手。スポットライトとそれらを浴びた彼らは手を繋ぎ大きく礼をした。


 ひと時の夢から醒めてなお、チケットを胸に抱いた観客たちは夢見心地でテントを後にし…………やがてそこには団員たちだけが残された。


短期間集中連載、全十話前後を予定しております。

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