思い切って魔力を使った!
「この女どうしたの?おかしいぜ……」
「おい、何やってんだ!」
周りからいろいろな騒がしい音が聞こえてきて、私はそれらを無視し、ただ必死に意識を集中させる。
──だめだ。
魔力が湧いても、体外に送ろうとする時、魔力は停電したかのように何の反応もないままだ。
再び深く息を吸って、再度試みたが、それでも無駄だ。
「早く出て行け!」
カールはもう耐え切れない。
店員らしい一人の大男がカールの指示を受け、にっこりと私に向かって歩いてきた。
「ちょっと待って!」
私は慌てて叫んだ。
もう一度、魔力を一生懸命送ってみたが、まったく役に立たず、魔法は使えないままだ......
何度も何度も試したけど、ダメだ、やっぱり使えない……
あの大男が、もう私に近づいてきている。
「バカだな。カールに難癖つけてどうすんだ?」
と、大男は冷やかした。
私は拳を握りしめ、ゲームの魔法に関する情報を必死に思い出そうとする。
「呪文を唱えなかったせいなのか?それとも何かの手順が必要か?......太陽神様、私に力を与えてください?......光を与えてください?」
私はつぶやきながら、次々にあらゆる呪文を試し続ける。必死に。
まだダメ……涙がこぼれそうだ。どうして?どうして私は何もできないの?
酒場の大男はもう目の前に近づき、その臭い指先が私の体に触れそうになる。
二階でフードを被った人物がちらっと動いた──金髪のあの人だ。しかし、彼はすぐに黒髪の人物に押し戻された。
体は震えていて、自分が何もできない無能な子供になってしまったような気がする。今の私には、ベラの一番大切なものさえ守れない......
「早く出て行け!」
酒場の大男は軽蔑を込めた口調で、私の肩を押し付けようとしたその瞬間──
「返してよ!!!」
震えながら、私は大声で叫んだ。
大男は私の勢いに驚き、一歩下がった。
「ベラのものを、返して!」
再び胸から怒鳴った。
呪文を考える余裕もなく、ベラのものを守る信念だけがすべてを圧倒する。
変化は一瞬で、そして劇的に起こった。
目の前の空気が白い光を放ち、それはまるで火種に引火するかのように、まばゆい炎となった。
私を捕まえようとした大男は、まばゆい光に驚き、尻餅をつき、その勢いで何人かの観客にぶつかった。
同時に、カールの服の中で何かが青い光を放った。
「熱っっっ!」
体の動きは思ったより速く、カールはそれを隠そうとしたが、触れた瞬間の熱さに反応して、すぐに手を振り払って物を投げ捨てた。
しかし、その物体は地面に落ちることなく、青い光の層に包まれて空中に浮かんだ。
周りの観客たちは口を大きく開け、目を見張りながら、この不思議な光景を見つめている。
透き通った青い水晶がはめ込まれた指輪――
やはり、ベラの指輪だ!
「それは――!」
二階にいる金髪のフードの人物は驚きの声を漏らした。その声は少年のように澄んでいて――どこかで聞いたような気がしたが、今はそれを考える暇はない。
私は顔を上げ、青ざめたカールの顔をじっと見つめ直した。
「今は、指輪を返してもらえる?」
「こ、これがお前のものだったとしても、今はもう俺のものだろう!」
嘘がばれたカールは一瞬慌てたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「品物が売れたら返すなんて理屈、どこにもないだろう?」
カールはせせら笑いながら、手振りまで交えた。
「そうじゃそうじゃ!」
「そうだよ!」
酒場にはほとんどカールの知り合いや友達が集まっていて、すぐに周りから相槌の音が飛んできた。
私は食ってかかる衝動を必死に抑え、体がかすかに震えるのを感じた。
この時、さっき私を捕まえようとした大男は慎重にカールの耳元に顔を近づける。
「この娘は魔力を持ってるぜ。これから魔法学徒になるかもしれん……」
「ふざけるな、修道院のリアが魔法学徒になるだと?」
カールは大声で嘲笑い、私を一文の価値もないかのようにけなした。
「こいつ、魔法学院の入試にすら合格できんだろう!?」
失礼ですが、完璧に合格するよ、近い将来にね。
私は心の中でツッコミを入れた。
この世界では、魔力を持つ人は非常に少ない。
たとえ魔力を持っていても、魔法学院の試験に合格しなければ、魔法学徒になることはできない。
ロマンシア大陸には、多くの魔法学院が設立されている。その中で、最大のランロス魔法学院は首都イカロスに位置しており──これが、私とベラが将来入学する予定の学院だ。
魔法学院で系統的な魔法教育を受け、無事に卒業すれば『魔法使い』として認められる。『魔法使い』は、大陸全土の庶民からも尊敬される高嶺の存在だ。一方、卒業するまでは『魔法学徒』としか見なされないが、その身分だけでも大陸では高く評価される。
魔法使いの上位である魔導士ともなれば、極めて稀で、大陸全体でも指折りの存在だ。
────それこそが、四大魔法家がこの大陸で最強の勢力とされる理由なのだ。
残念ながら、魔力不足などの理由で魔法学院の入学試験に合格できない場合、その者は単なる「魔力を持つ子」にすぎない。たとえ巨大な潜在能力を秘めていても、その使い方がわからなければ、人を脅かすほどの力を持たず、『魔法使い』や『魔法学徒』といった社会的地位を得ることもできない。
これもカールが私を恐れていない原因だ。
彼は私が魔力を持っていることに気づきながらも、魔法学院の入学試験に合格する実力はないだろうと推測したのだ。
目の前の光景に直面しながら、歯を食いしばる。
……私には、何もできない。
カールの言い分はひどいが、理屈としては確かに正しい。指輪はすでに彼に売ってしまった以上、それを取り戻せるかどうかは彼次第だ。
どうしよう……あの指輪はベラにとって大切なものだ。絶対に取り戻さなければならない。
悩んでいるその瞬間、金色の光が再び現れ、結界となって私を包み込んだ。




