私はついでに主人公を攻略した!?
「それで何?」
私があまりにも堂々とした態度を取ったせいか、ルースと他の女の子たちはまるで鬼でも見たかのように目を丸くしていた。
「私の将来の恋しい相手がベラを好きになったとして、それはベラが立派で優しいからよ。
いったいどこが悪いっていうの?ベラは何も間違ったことなんてしていない!
逆に、好きな気持ちが報われないからって、ベラに嫉妬していじめるあんたたちのほうがよっぽど醜いよ!」
「……ひっ」
私がこんな答えをするとは思わなかったようで、誰もが唖然としていた。
「私だって、世界で一番ベラが好きだ!これからどんな人に出会っても、一番好きなのはベラだ!」
「あんた……」
私の話に詰まり、何も言えなくなったルースは、憎々しげな目で私を睨みつけた。
──睨み合いの対決か?
ちょうどいいよ、私はこのゲームの一番の悪役なんだけど!
私の鋭い目つきにビビったのか、誰も話を続ける勇気がない。
ルースは私に何か言い返したそうだったが、結局仕方なく、恨めしそうな表情を浮かべながらその場を去った。そして、他の人たちも次第に散っていった。
一応ホッとし、振り返ってベラの様子を見ようとしたら、なぜか彼女の目からぽろぽろと涙がこぼれ始めた。
「ど、どうしたの!?」
慌てて彼女を慰めようとするが、どうしたらいいのかわからない。
「さっき私が言ったことが、嫌だった?」
「ううん……」
ベラは首を横に振りながら、目尻の涙を拭った。
「リアの言葉を聞いて、すごく嬉しかったの……
私の気のせいかもしれないけど、小さい頃からずっと一緒なのに、私はよくリアを怒らせていたような気がしてた。
今日、リアが実は私を嫌っていないことがわかって、本当に嬉しいよ。」
「嫌いなわけないでしょう、ベラはこんなに優しい子なのに。大好きに決まってる!」
私はため息をつきながら、ハンカチを取り出してベラの顔を優しくぬぐった。
「実は私、あんたに一つ告白したいことがあるの」
私の言葉を聞くと、ベラは怪訝そうな顔で私を見つめた。
そして、私はポケットから水晶指輪を取り出し、それをベラの手にそっと置いた。
「ベラ、ごめんね。
あなたが落とした指輪を私が拾ったの。でもずっとあなたに返さなかった……
今日はもう少しで売るところだったけど、私は持って帰ってきた。
あなたを傷つけることなんてできないから……
ベラ、本当にごめんなさい。私を許して」
──持っていったのは私じゃないけど。
──売ったのも私じゃない。
でも、過去のリアの身元を受け継ぐと同時に、彼女の過ちも一緒に引き受けるしかない。
私は心の中でそっとため息をついた。
しばらくの間、ベラは驚いた表情を浮かべていた。しかしすぐに、彼女はショックから気を取り直し、私の手をぎゅっと握る。
「大丈夫よ、リア。気にしないで。本当に怒ってないから。」
ベラは微笑みながら、そっと指輪に視線を落とした。
「この指輪、覚えてるよね?両親が残してくれた、私にとって唯一の形見。だから、失くした時は本当に怖かった……リアが拾ってくれて本当によかった、ありがとう」
私の目を見つめるベラの碧い瞳はまるで世界で一番美しいエメラルドのようだ。
──さすが主人公、なんて優しい子だ!
本当に、私さえ見惚れてしまいそうになる。
私は心の底から感心しながら、ベラの手をぎゅっと握り返した。
「私こそ、ベラが私のことを嫌いにならなくて嬉しいよ」
「もう一つ、リアに聞きたいことがあるんだけど……怒らないでね」
「ベラに怒るわけないじゃん。言って、ちゃんと聞くから」
「さっきリアが、どんな人に出会っても、私のことが一番好きって……ホント?」
頬を赤く染めて、恥ずかしそうにベラは尋ねた。
「当たり前のことよ!私、ベラが大好き。今も、将来も!」
私はすっきりと答えた。
すると、ベラの口元には微笑みが綻び、目を輝かせた。
「ありがとう、リア」
ベラの質問が、将来でいったい何を意味するのか、今の私には何も知らない。
ただ、最初の嵐は無事に過ぎ去り、ようやく安心感を覚えた。