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第十話「コムギ・コニャーンの野望」

 コムギの爆弾発言、いや、むしろ『非・爆発的』発言というべきか、ともかく衝撃の発言にシメリはわたわたした。


「えっ、魔法って……大丈夫なの!? 粉神さまが嫌いなやつだよね。天罰とかあったりしない!?」

「粉神? プロ子ちゃんのこと? むかし文句言いに来たことあるよ」


 粉神エクスプロディアをプロ子などと呼ぶこの少女は、なんと本人、いや本神と直接対面したことがあるという。

 コムギがくるくると指を振ると、これも『夢』の粉塵爆発の力だろうか、空中に『当時の再現映像』が投影される。

 夢の世界で『魔法』を創ろうと試行錯誤する、今より少し幼いコムギのもとへ、爆発的に美しいダイナマイト・ボディの女神が割り込んでくるところから映像は始まる。




★ ★ ★ ★ ★ ★ ★




『こらーっ! そこの小娘、わが崇高なる粉塵爆発のわざで魔法などというファンタジー存在を創ろうとすなーっ!』


『おねーさん、誰? どうやってここに来たの』


『わが名は粉神エクスプロディア。コナンハーゼンを創ったエライ神さまなのだ! 神にかかればこんな粉塵爆発、チョチョイのチョイで干渉できんのよ』


『えくしゅ……ぷ……ぷろ……』


『お子ちゃまには発音しづらいか。よろしい、特別にプロ子ちゃんと呼ぶことを許そう』


『プロ子ちゃん。どうして魔法を創っちゃダメなの?』


『それはね、粉塵爆発が火も風も土も、あらゆるものを創り出す、とっても尊くてスゴくてありがたくてスゴくてヤバいほどスゴい技術だからさ!!』


『なんでも創れるのに、魔法だけは創れないの?』


『うぐ……そうは……そうは言ってないじゃん!!』


 プロ子はぴゅーんと上空に飛んでいってキラーンと消えた。




★ ★ ★ ★ ★ ★ ★




「そのあともたまに来て、昔話とかしてくれるよ。魔法の創りかたも教えてくれればいいのに」

「ソ、ソウダネー……」


 想像もしないところで神話の一節みたいな出来事を目撃してしまった。

 もちろん、あの『プロ子』が粉神を(かた)るニセモノで、ただの通りすがりの一般ダイナマイトボディ女性だという可能性も否定できないけれど、コムギの創った『夢』の世界に干渉して割り込める時点で、そうとう高位の粉塵爆発使いであることは間違いないだろう。


「プロ子ちゃんはいい人だけど、友達にはなってくれないの。なんかミナミン? っていうすごい仲良い友達がいて、その人以外に友達は要らないんだって」

「アァー命名神ンン……」


 教科書でしか見かけない偉人、いや偉神の名前をそうポンポン出さないでほしい。シメリは頭がパンクしそうだった。


「シメりん、面白い顔してる。ルナちゃんも初めてのときはそんな感じだった」

「コニャーン先生も……」

「うん。ビックリして、でも私が創った『夢』の世界を褒めてくれて、なにか技名があったほうがいいって、『幸せな(ディール・)夢の続き(アイディール)』って付けてくれた」


 技に名前を付ける、そのこだわりとセンスはシメリにも理解できた。当のシメリも、実はこっそり名前をつけている技がある。

 といっても、ぜんぶ『水』を出すだけか、ほとんど何もしてないのと同じ残念な結果に終わってしまう技なのだけれど。

 結果は別として、自分で創った粉塵爆発には愛着がわいてしまうもの。神さまが世界に「コナンハーゼン」と名付けたように……というと、あまりに規模が違いすぎるか。




★ ★ ★ ★ ★ ★ ★




 それからふたりは炸裂果(サクランボーン)(かじると爆発的に果汁があふれ出すジューシーなフルーツ。現実のコナンハーゼンにも存在する)に舌鼓を打ちながら穏やかな時間を過ごした。

 友達と送る夢のような夢の時間にうっとりするシメリ。対するコムギは、最初のうち楽しそうだったものの、時間がたつうち元気がなくなってきた。


「『夢』の世界のものはね、現実には持っていけないの。ここでおいしいものをいっぱい食べても、起きたら腹ペコのまま……」


 太らなくて便利じゃん、とシメリは思うが、そういう問題ではないらしい。


「夢の中でだけ魔法を使えても、ホントの『魔法使い』とは言えない。私は現実でも魔法が使いたい。何もないところからフルーツを出して、お布団を空に飛ばして、ダック・ジャガーを巨人にしたい」


 あるいは一つ一つであれば、そういう分野の専門の粉塵爆発使いが持てる技術を尽くせば、実現できなくもないだろう。

 だが、コムギの言っているのは、そういうことでもない。似ているようで全然違う。

 それは例えば「空を自由に飛びたいな」と願っている人間が、科学技術の粋を集めて造られた最新式のドローンを見せられて、「すごいけどなんか違う」と思ってしまうのと同じ感覚。頭につけるだけで人間が思い通りに飛行できる極小のプロペラを妄想していた側からすれば、どうしようもない隔たりを感じてしまう。

 ドローンはドローンですごいから「これ注文したやつと違うんですけど」とは言いづらいけれど、内心ではやっぱり「あぁ……現実こんなもんか」「未来の世界の不思議ロボットなんて居ないんだ」となってしまう例のアレ。


 みんなにも、なんかそういう……そういうこと、あるだろ!?(これは作者から読者に向けた魂のメッセージである)


「だから私、勉強したい。いつか本当の魔法を創るために、粉塵爆発をもっと使いこなせるようになりたい! バクハーツで勉強したら、できるようになると思う。

 でも、私ほら、寝ぼすけだから。一日に十五時間は眠らないと気分が悪くなっちゃう、どうしようもないグータラだから」


 コムギはシメリにすがりつき両手をとった。


「お願い、シメりん! お昼に受けてきた授業のお話、夢の世界でいっぱい聞かせて?」

「うん! そのくらいならお安いご用でゲス!」

「げす?」

「あっ、ごめん。ヴァイニンくんのがうつっちゃった……」


 こうしてシメリとコムギは協定を結び、毎晩ふたりきりの秘密の時間を過ごすことになるのだった。

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