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第一話「その名前で水属性じゃなかったら何やねん」
制服に袖を通すと、自分が何者かになれた気がする。
合格通知を読み返せば、少しだけ自信が戻ってくる。
「行ってきます」
はるか遠くの大切なひとへ挨拶を残して、少女は駆けていく。
春風に包まれた景色には、可愛らしい爆蒲公英が咲いていて、宙を舞う炸裂桜の花びらは、晴れ空を背にそびえ立つ、夢とロマンの新天地を鮮やかに彩る。
――バクハーツ粉技爆術学校。
一流の粉塵爆発使いを目指す少年少女が集い、知恵と力と爆発的パッションを磨く至高の学び舎。
焦がれるほどにアツく輝く、忘れられないスクールライフが始まるのだ。
「絶対、エンジョイしてみせる――」
小さな拳を握りしめ、世界に刻みつけるよう、決意とともに少女は叫ぶ。
「――だってわたしにも、人権ってものがあるんだから!」
そうして少女――シメリ・アクアミーズは最初の一歩を踏み出した。