暖炉でロダン勝負!
暖炉でロダン勝負、チキチキ耐熱レースが開始された。
レースの内容は薪を焚べて燃え盛る暖炉の前で、ロダンの考える人のポーズを取るだけ。
もちろん台座や椅子などはないので、筋力勝負でもある。
勝てば賞金十万円がもらえるとあって、雪山のある地方のマイナー大会にしては高めの金額だ。
ただ参加者は全員公平を期すため、女性用の競泳水着を着用する。男も女も関係ないのだ。LGBTにも配慮した素晴らしい大会。
「んなわけねぇだろ」
アホみたいな大会に強制参加させられたのは私、事務員のジーコだ。サッカーの神様の一人じゃないよ。
私は五年勤めた会社を、騙されて辞める事になった。縁あって前の会社の親会社に入れたので、ある意味ざまぁと奴らに言えた。
だけど、この会社の女社長は変わっていて、奴らに生き残りをかけ勝負を持ちかけた。
それがこの暖炉でロダン勝負。耐熱っていうか、この町は寒いから暖炉の火はあったけぇだけだよ。
むしろ水着とか寒いじゃん。だからこれは根性試しじゃない。ただの使えるマッチョレースだ。
「これは事務子ちゃんの復讐チャンスなんだよ」
確かに座り慣れ細身の私と、酒太りしたロジハラ上司や先輩方には勝てそうだ。
だが営業は精鋭揃いだ。足の鍛え方が違うだろ。
こうして始まった謎の大会。会社をクビになっても大会上位に入れれば、親会社に転職出来るとあって、彼らの目の色が違う。
特設会場で行われた大会は暖炉の熱気よりも異様な熱気に包まれていた。
だいたい広場を借り切って、小さな暖炉前で三百名一斉に水着姿でロダンポーズを取るとか、誰が見るんだよ。
せっかく子供の奇病が治まったばかりの地域で別な悪夢を生みそうだ。
それでも未来がかかっているとあって、前の会社員達は必死だ。
――――やめろ、笑かすな。
私を罠にかけたA君を始め、課長や部長がぷるぷるし始めた。
私? 余裕だよ。五年座り続けていたけれど、腰の落とし方はプロだ。あと薄い。
脱落者は当然体格と筋力の劣るものからだ。ガタイがよくても身体の重さをあの姿勢で支えるのは難しい。
残り二十名になった所で競技は終了した。会社に入るかどうかは別として、賞金は貰える。私も残った。これで温泉行ける。
二十名の内、採用されたのは半分の十名だった。採用条件は会社の主力商品の金魚ビールを飲めるかどうかだった。
最初からそれだけで良かったんじゃ――――そう思ったけれど、たっぷり笑えたので社長には感謝してるのだ。
お読みいただきありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5の投稿作品となります。
ざまぁ、その後とタグにしてます。金魚ビールが縁で社長秘書になった話しでは、書ききれなかったアフターストーリーになります。
事務子さんと、社員を引き抜かれた会社は落ちぶれて行くことでしょう。
事務子さんのあだ名のジーコは契約書を交わした時に社長が付けたと言う設定です。
サッカーの神様にあやかったそうですが、千文字に入りきりませんでした。
なんだか毎日投稿になってます。面白いと思ってもらえればいいのですが。
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