シェアハウスはいつも騒がしい。 -犯人はヤス!?-
「そんな…嘘だよね?」
「マサカ、ワタシ達をウタガッテルンですか?」
「そいつぁ、心外だぜ…」
「勘違いじゃないのぉ?」
「いや…お前らの中に犯人が居る!」
「「「「!!!」」」」
「俺の…俺の大事な物を奪い、あろう事か、その罪を他人に擦り付けようとしている奴が!」
◇◇◇
ここのシェアハウス、ナンバーナインの住み込み管理人の俺、柊秀斗は今日朝7時に家を出発し、毎月1日限定発売の食べ比べシュークリームセットを買いに家を出た…。
その時点で起きていてリビングに居たのは、留学生のヤコブ·スイートマンと、ゲーム配信者の八洲優吾の二人。
俺が帰ってきた時には自称ダンサー、安斎恭一以外の三人はリビングに居た。
優吾はリビングのソファで爆睡し、ヤコブは大学院生の戸谷傑と談笑していた。
俺がシェアハウス内の家事を終わらせるまで凡そ2時間。その間に恭一が帰宅し、優吾が起きてきたようだ。
誰だ…誰が俺の買ってきたシュークリームを…!
《優吾視点》
やばぁ…しゅうとが本気の目してるよ…。
昨日の夜から今日の朝までずっと配信やってたから、糖分欲しくて隙見て1個もらっちゃったんだよね…。
確かにやけに美味しいと思ったよ。チョコレートクリームと生クリームが合わさってふわっふわで最高だったなぁ…!
でも、僕がもらった時にはまだ3つ残ってたけどな…?
いや、とにかくここは白を切ろう。僕が食べたのは1つだけだ。しゅうとのシュークリームを全部食べたなんて大罪を背負わされる訳にはいかない。
《恭一視点》
おいおい…秀斗が珍しく真剣じゃねぇのよ…。こいつぁ、悪いことしちまったか?朝まで飲んじまったから、気分転換に良いと思って一個もらっちまったんだよな…。
旨かったな、抹茶小豆のシュークリーム…!抹茶の仄かな苦味と、小豆の柔らかな食感が見事にマッチして…!
いや違う。今はシュークリームの味を思い出してる場合じゃない。俺がもらった時には既に三個でしかも開封された後だった。
誰かが食べてるようだったから俺も貰っちまったが、秀斗が食ってない…となると、俺の他にも食った奴が居るのは確実。
この場は黙っておいて、そいつが出てくるのを待ってから、一緒に謝ればいいんだ。そうすれば俺一人が怒られることは無い筈…。
《ヤコブ視点》
Oh,No!!マサカあれが、シュートの買ってきたモノダッタナンテ…。
ワルイことしました…。でも、キイテほしいのです、ロクロー。
ワタシ、日本のシュークリーム、ハジメテダッタのです…。ハコの中に2つもノコってましたし、ダレカの捨てた包みがあったカラ、タベテ良いモノダト、オモッタのです…。
でも、カッテに食べてしまったのもジジツ。これはショウジキにイワナイとですね。中のstrawberryとcreamが最高ダッタと…。
《傑視点》
うわ〜!!やっちゃった!あれ秀斗君のだったか…!
朝、ヤコブ君とスイーツの話で盛り上がったからなぁ…。てっきり誰かが買って来てくれたのかと勘違いしちゃった…。確認すれば良かったなぁ。秀斗君、ごめん!
でも、僕が食べたのは箱に残ってた1個だけなんだよね。
ここで僕が食べた、なんて白状すれば他のやつも食べたと思われるに違いない…。それだけは避けないと!
それにしても、あのカスタードクリームと生クリームが一緒になったシュークリーム、本当に美味しかったなぁ!これが終わったら、お店教えてもらお…
◇◇◇
リビングに集まった俺達はお互いの顔を見合わせ、誰が犯人かと探っている。
このままでは、一向に話が進まず、俺のシュークリームも俺に食べられなかった無念で浮かばれない事だろう。
一人ずつアリバイでも聞くか。
「どうしたヤコブ…。今日はやけに静かじゃないか」
「そ…ソウデスか?別に…フツウですヨ?ワタシ、いつも通りゲンキネ!」
「そうか?じゃあまず…」
俺はヤコブがほっとしたのを見逃さなかった。俺でなきゃ見逃していただろう。
「俺と朝会って、そのままここに居るだろうヤコブから話を聞こうかな」
「やっぱりワタシなんですか!?キョーイチさんの方がハナシが短くスムのでは…?」
「じゃあそれでも良いや。恭一、帰ってからどうしてた?」
「お、俺かよッ!?あ〜、そうだな…。俺は朝までダンサー仲間と一緒に居て、お前が家事終わらせてくる1時間くらい前に帰って来た。そっからシャワー浴びて、腹減ったから、昨日の残りを食ってたよ」
「その時には俺はシュークリームを冷蔵庫の中に仕舞っていた。何か気付かなかったか?例えば開封されていた、とか…包み紙が捨てられてた、とか…」
「い、いや、俺はその時飯を食おうとしてたからな?!特に何も分からん。だが、誰かがシールを貼り直したような跡があった気がするな…」
「「「!?」」」
《優吾》
恭一…間違い無い。この慌てよう、確実に同じ罪を背負ってるな…。
更にこの言い方から察するに恭一は僕の後に食べた、2番目だ。と、なるとまずい…。あの二人がどう出てくるかで僕の立場が変わる…!
二人が恭一に続けば、最初に食べたのは僕だと分かってしまうだろう…。だが、恭一の発言によって、反応を示したあの二人も食べてると見ていい。即ち、この空気に耐えられなくり、どちらかが自白すれば…!
《恭一》
俺が誰かが開けたらしい事を言っただけで、禄郎以外の全員が反応を示した…。さてはこいつ等、全員食ってやがるな…?
だが、これだけじゃ誰が最初に食ったかは分からねぇ。俺はあくまで誰かが食べてたから食べただけ。このスタンスを崩さない事が重要…!
《ヤコブ》
これはキョーイチにやられましたね…。オソラク、カレは今の反応でワタシ達全員が犯人であるコトをカンジタでしょう…。
こうなってはモウ、ダレが先に自白するかのカケヒキになりました…!先に言っテしまうコトで罪を軽くスルか、最後に実は自分も…とバラスか。コレは順番がヒジョウニ重要になってキマシタ…!
《傑》
参ったなぁ…。恭一君の証言によって、この3人の中に居るだろう事はほぼ確定した。だけど、僕が食べた最後の1個、あれともう1つだけじゃ、あの大きさの箱に入るとは考えにくい…。
つまり、シュークリームはあの箱の中に最低でも3つはあったと考えるべきだ…。恭一君が食べていないとすると、逆説的に優吾君、ヤコブ君、僕が食べた事になる。そしてこの二人のどちらかが最初にシュークリームに手を付けた…。
うん、二人の話を聞くべきだな…。
「秀斗君、とりあえず恭一君の話も聞けたし、優吾君かヤコブ君に話を聞いてみようよ。特に恭一君に話を聞くよう誘導したのはヤコブ君だし…」
「What!?スグルさん!?」
「傑の言う通りかもな…。ヤコブ、今日何してたか教えてくれ」
「う、うう…」
「さぁ」
「ス…スミマセンデシター!ワタシがシュートのシュークリームを食べました…」
地べたに崩れ落ちるヤコブ。
やはりな…。ヤコブ、お前だったの「すまん!俺も食った!!」
え!?
声の方向を見ると恭一もヤコブの隣に正座していた。
「マジですまねぇ…食って良いもんだと思っちまったんだ。だが、何も食ったのは俺らだけじゃない。そうだろ?」
恭一が傑の方を見ている…。まさか!?
「うん…僕も食べました…。黙っててごめんなさい…」
自白が遅れた事の気まずさか、恭一に見破られていた事への恥ずかしさか、視線を左へ逸らしてゆっくりと手を上げる傑。
「で、それぞれ何個食べたんだ?」
3人は顔を見合わせると。
「1つデス」「一個だ」「1個もらった…」
「あれ、そうなるともう1個余る筈だけどな…」
俺達はそこの最後の一人に視線が集まる。
「あ、食べたの僕だよ。何なら最初に食べたのも僕」
「「「「お前かい(カイ)!!」」」」
全員食ってたのかよ…。通りで誰も言い出さない筈だ…。
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