96◆スカラベの先へ・その5
石組の壁の細い通路を歩く。
緊張感が高まったまま前進する。
ミキュラの緊張した尻尾がはっきりと強敵しかいない階であることを示していた。
「一体来た。多分重い」
「重い?」
地響きが近づいて来た。
――ズシン!ズシン!
止まって後退する。相手に探知されない距離まで下がりたい。
重量のある魔物なのだろう、迷宮の壁や床までが揺れている。
「こ、これは」
「でかいな!」
「ムリ」
「退きましょ!」
「ウゴゴゴゴ!」
迷宮の通路の幅いっぱいの大きさをしている。
巨大な体格のせいで高い位置にある肩が迷宮の天井を意識させる高さにある。
太い両足が床を踏みしめるたびに振動が起きた。
――ズシン!ズシン!
胸に大きな光る結晶をはめ込んだ姿は、魔物というより岩の化け物のように見えた。
その魔石から発する光でぼんやりと周囲が明るく照らされている。
圧倒的なその姿に、少し落ち着いて眺めてしまう。
「おいおい!なんだあれ!」
「同じ石の魔物でも土の迷宮のとはサイズが全然違うな!」
「そうね!」
「あの腕の太さ、殴られたらただじゃすまなそうだ」
「今の私では癒しきれないと思います」
「これは無理でしょう。盾があっても意味なさそうです」
「走って逃げるべき」
ミキュラがそう宣言した。
「だよなだよな!その反応が正しいよな!」
「まあ、気づかれてないから静かに下がろう」
「「はい」」「ん」「わかりました」「そ、そうだな。ふう」
アレが走って追いかけてくることがあると思うと、現時点ではこの階で戦うことは困難だろう。
「調査に行った森のハグレのトカゲより上かもしれない」
「「「「ああー」」」」「へぇ」
通り過ぎてからもじっくりと待った。
振動が来なくなってもしばらくミキュラの耳がピクピクしていた
「次が来た。一組いる。たぶん包帯巻き巻きの強いやつ」
「ふむ。相当強いだろうからやり過ごすのもありだが」
「うむり」
「ウ…ア…ウ…アァァ…」
五階でうろついているのとは違ってゆっくりとした動きだ。
同じように見た目は三体で動いている。
遠くからでも威圧感で体にゾクゾクとした悪寒が走る。
通路の先の十字路を魔物が横切って行った。
先ほどの石の巨体ほどは脅威に感じないのは確かだ。
ただし、感覚が麻痺しているのはあるかもしれない。
「やりますか?」
杖を握り締めた導女フラバスが聞く。
「ハハハ」
「「「「ええー!?」」」」
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