95◆スカラベの先へ・その4
反響して靴音が響く。
大きな円筒状の空間にらせんを描く階段を伝って下りていく。
通常の小部屋にある階段とは違って、それのみで続いているので長く感じる。
「長いわね!」
「かなり深くまで続いてる」
「ここまで下ると何階分なんだろうな?」
「何か見えるまで進もうか」
「はい」
「階段と暗闇ばかりです」
◆◇
「お、踊り場だな」
「でも階段しかないですね」
床が広くなっていて休めそうだ。反対側には下への階段がさらに続いていた。
「ふむ。何もない」
周囲の壁をミキュラが調べたが何もないらしい。
つまり上と下への階段しかつながるところはない。
床が崩れることはなさそうなので、休憩することにした。
「休憩しよう」
「そうね!」「んむ」「「はい」」「おう」
「こんな構造も迷宮にあるんですね」
「階層を抜けるほど巨大な吹き抜けのある迷宮もあるらしいです」
「それは大きい迷宮だろうな」
「そうですね。サリユクーノの大迷宮にあると聞きます」
「迷宮の中に城があるって話よね?」
「それか。貴族たちが封鎖したがったが結局は魔物が怖くて冒険者を入れざるを得ないと聞いたな」
うなづく導女フラバス。
「そういうところは多いですよ」
土の迷宮の廃墟都市を見た後だと冗談ではなく本当に聞こえてくる話だ。
「減らしていないとハグレがいつ出てくるかわかりませんからね」
「ふみぃ」
「魔羊なら出て来ても歓迎だけどな!」
「「ふふふっ」」
魔羊は毛も刈れるし肉も獲れるので人気の獲物だ。
この辺りのタカイダイーチより、北タカイダイーチのほうが多く見られるし人気がある。
あまり居ついてしまっても疲れが出るので適度に休憩を終えて下へ降りる。
◆◇
踊り場までの段数と同じぐらいの段数を下った所で底が見えてきた。
帰ることを考えたくない段数だ。
「底ですよ!」
「「やっとか」」「「「おおー」」」
円形の床の端に出入口のアーチがあるが土壁で塞がっている。
ミキュラがこっちを向いてうなづいた。
また戦闘棒の出番だ。
――コンコン!ガラガラ!
手応えを確かめつつ崩していく。
先の空間に魔物は潜んでいないようだ。
長い階段のものとは違う空気が入ってくる。緊張感が増す。
「なんだかゾクゾクするところだな」
「ええ」
中に入ると五階と同じ石組みの壁が続いていた。
小部屋になっていて、壁にスカラベの模様が彫り込んである。
こちらには穴はない。
「強すぎる…かも」
ミキュラがあやふやなことを言う。
耳も尻尾も動かしつつだが、困った顔をしている。
「慣れてないからわからない」
「そうだろうな」
「引き返しますか?」
ラベトリオが聞いてくる。
続く階段につられて下りてきてしまったがここはかなり下の階だ。
魔物の強さも格段に上がっているだろう。
正直迷うが魔物の姿を確認しておきたい。
そこからわかる強さの〈差〉もある。
「姿を見てからにしよう」
「う」「なるほどね!」「ほう」「うーん」
「危ないのではないですか?」
「ダメそうなら」
「「「「走って逃げる!」」」」
「「はぁ」」
「そういうことだ!」
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