94◆スカラベの先へ・その3
包帯だらけの魔物のマミーのうろつく度合いが高いので、戦闘が連続する。
さらにその合間にスカラベが大玉を運びつつやってくるのでせわしない。
移動であまり距離を稼げない時間が続いた。
「こっちに進む。魔物が〈薄い〉」
「わかった」
石組みの壁が迷路のように入り組んでいる。
進んだ先で壁に囲まれた大部屋に行き当たった。
〈地図〉を描いているワルケリアナがミキュラと話している。
空白になっている部分に進む方法がないようだ。
「この辺りなんだけど、もし行けるなら道がありそうじゃない?」
「ふみぃ。調べてみる」
ラベトリオにパンプキンマスクを出して渡す。何か見つかるかもしれない。
北側、東側の壁には何もなかったが、西側には明らかに色の違う壁があった。
「この壁だけ違いますね」
「そうだな。言われてみるとそうわかる」「はい」
「抜けられるかも!」
「エイ!」
――ボコ!
ミキュラが短剣の柄で壁を軽く殴った。当たったところから崩れて穴が開いた。
「「「「「おおー!」」」」」
「オレがやるよ」
戦闘棒を出して、壁の穴を広げるように叩きつけた。
――ガラガラ!
先が続いている。すぐに人が一人ずつ通れる穴が開いた。
いままでとは違って狭い通路になった。
包帯だらけの魔物が出て来た。三体で一体の魔物だ。
「ウ…ア…ウ…アァァ…」
――アグアグ!アグアグ!
――アグアグ!
「フン!」
盾で受けるが数回受け損ねた。意外と素早い動きに翻弄される。
それでも身をそらせてなんとか食らわずに済んだ。
突き返しを入れて反撃する。三連撃にもう一撃加えて盾で殴りつける。
「《浄化の聖風》!そして《聖風の一陣》!」
導女フラバスの導術が魔物の呪いや澱みといった負の力を削いでいく。
衝撃波が光を伴って炸裂した。魔物の身体が硬直する。
「《双氷刃》!」
ワルケリアナの氷魔術が大きな二枚の氷の刃を作り出し魔物を切りつけた。
魔物の身体が氷付いていく。
「エイエイ、エイエイ!」――「ヒュパッ!」
前からのミキュラの連撃が背後のときと同じように放たれた。
魔物の身体が切り刻まれる。
「バウ!」
ジルベルトが魔物の足元で吠えて牽制している。
「チェア!ソイ!チェア!ソイ!」
ラベトリオが攻撃すると同時に巧みな足さばきで瞬く間に下がる。
そこへ後ろからハービスホークが勢いよく飛び出してきた。
「ウォー!タァー!リャー!」
旋風のような連撃が魔物に当たりマミーの体力を削り切った。
魔物三体が崩れ落ちる。
――ボフン!
茶色い煙を出して迷宮に吸収されていく。
魔石が残されていた。
ハービスホークが嬉しそうにラベトリオと話している。
「いい動きだぜ!」
「狭いからね」
魔石を回収して先へ進む。
空気が変わってしっとりとしてきている。
行き止まりの壁に丸い窪みがあった。
穴の上の壁にはスカラベの姿が刻まれている。
「わかりやすい」
「「「「「うむり」」」」」「ハウ」
「円盤をはめたい人は?」
《インベントリー》からスカラベの描かれた円盤を取り出して聞く。厚みのある皿みたいなプレートだ。
「では私が」
導女フラバスが前に出た。なぜか胸を張っている。
迷宮の謎に挑戦するのも彼女の使命だからかもしれない。
導女フラバスが重そうに円盤を壁の穴にはめる。
――ズズズズズ!
脇の壁から物音がして一枚の板のように横にズレていった。壁のあった先に暗く開いた空間が続いている。
「宝箱ではないようですね」
「ザンネン」
「まあ、先へ行ってみよう」
「「はい」」「おう」
すぐにジルベルトがうなった。
ミキュラも足を止めた。
「待って」
「なんだ?」
「おかしい、すぐに床がない」
「お?」「おお?」「これは」
先が続いていると思った床は空洞だった。床が抜けていて下は見えない。
すぐ右側に壁沿いの階段がらせん状に下へと続いていた。
「危なかったわね!」
「助かった。二人とも優秀だな!」
「「助かりました」」
「これぐらい普通。でももっと褒めていい」
「「「「ミキュラもジルベルトもエライ!」」」」「おおう」
「ハウ!」
「《ともし火》」
「《聖導の光》」
ワルケリアナと導女フラバスの二人のおかげで周囲が明るくなった。
それでも暗い階段は下へどこまで続いているかわからない。
足を滑らせれば危険だ。
「注意して進もう」
「「「「「はい」」」」」
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