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92◆スカラベの先へ・その1

夜越しの探索を覚悟して、買い物をした。

普段から少しずつ買い足しているおかげで食料の在庫は豊富にある。

それでも人数が増えたこともあり、安いこの時期に食材をある程度まとめて買っておくことにした。

迷宮内で温める以上のことをするなら道具も増やしておきたい。

道具があれば使い分けもやりやすい。


「行こうか」

「んむ」「いいわ!」「「はい」」「おう」


天気は良く荒れ地の遠くまで見渡せた。魔狼は見えない。

「遠い。多分来ない」

「ハウ」

ミキュラと一歩先を歩く、ジルベルトも同じ感想のようだ。


中級の風の迷宮入口付近は賑やかになった。

一度はあきらめた開発も再開されるかもしれない。

常設のテントだろうにかなりの数並んでいる。

テント群を横目に見つつ衛兵に挨拶をして迷宮に入った。


一階のデカイネズミは来た分だけ倒した。

二階のトレントも似た感じで最低限の戦闘だ。

「強いのがいる。多分ボス」

「やろう」

「んむ」「いいわね!」「「はい」」「え」

「たぶん下のトレントと同じぐらいの強さだろう」

「そうね!」

「お、おう。今度は倒されないぞ!」


「準備します」

「《聖導の守り》《聖導の盾》」

「《聖導の壁》《聖導の羽衣》」

柔らかい光が全員を包んで導術の防御の支援で満たした。


それほど歩かずに魔物の所まで辿り着いた。

二回りほど小さいが、あの手強い瘤のあるトレントだった。

「小さいけど油断せずに行こう」

「「「「「はい!」」」」」


――ヒュッ!ヒュッ!

二本ずつ放って全部当たり。魔物が進んでくる。

根をくるくると回転させながら進んでくる。

禍々しくねじ曲がった枝は鞭のようにしなっていた。

「ズリズリズリズリ!」


「フン!」

――ゴン!

盾を構えて体で当たる。それほどの衝撃はなかった。

盾で殴りつけて右手のロングソードにつなげる。

右、右、右と当てて追撃も入れた。


相手の攻撃を予測する。

魔物の風の魔力の高まりを感じ取る。

盾で殴りつけて邪魔をする。

「くるぞっ!」

今回は魔物の実行力が勝った。

――ビュー!ゴォー!

「ふん!」「おわっ!」「きゃっ!」「うわ!」

「くぅ」「ぬぬぬ」

属性の刃がパーティ全体を襲った。

切り裂かれるような痛みが全身に二回当たる。

導術の防御が効いていて、前回と比べる程じゃない。


軽減されたが、それでも痛みはある。

「気をしっかり持て!」

「んむ!」「「「はい!」」」「…」

全員が対応に一歩遅れを取った。

チェインの頭装備が温かくなっているが、今回は知らせるだけの発揮のようだ。

約一名ダウンしたが戦闘に巻き込まれそうにないので置いておく。


「《聖導の癒し》!」

導女フラバスの癒しの導術がパーティ全体を包んだ。

回復を促す力が体に満ちる!

「ありがてぇ」「ふあ」「よし!」「いいわ!」「…」


足元を注意しつつ右を叩きつける。

三連撃の後で盾で殴りつけた。

「エイエイ、エイエイ!」――「ヒュパッ!」

ミキュラも動き出した。連撃が深く切り裂く。

「チェア!ソイ!チェア!ソイ!」

ラベトリオの強い連撃が決まった。不気味な魔物の顔が一瞬、幹に浮かんで消えた。

「ハウ!」

ジルベルトが瘤のある根に噛みついて引きつけて放す。

魔物に集中力があるなら気をそらすのにいい動きだ。

「《氷弾》!」――バン!

炸裂音と共に魔物の幹へ着弾して破裂した氷の破片が飛び散った。

周囲が冷却されて氷付く。


「ズリズリズリズリ!」

魔物の根の動きに力強さがない。

足元を警戒しつつ、振り回してきた枝を盾で受けて叩き落とした。

――ブン!ブン!

「フン!」

――ガン!ガン!

続けてくる攻撃を盾で受け止めた。

突き返しを入れて追撃の隙を伺っていると、叫び声を上げてハービスホークが目覚めた。

「ウオー!」

飛び起きたハービスホークが攻撃を開始する。

「タァー!リャー!ウォー!」

両手剣の連撃が嵐のように魔物に襲い掛かると、三連撃が命中して魔物の体が浮き上がるように悶えた。

魔物の動きが止まって、枝が萎れた。すぐに迷宮の吸収が始まる。

魔石と杖と上質な木材が床に残されていた。


「ふぅぅ。やれたな」

「そうね!」

「んむ」

「下の魔物の方が手強いです」

「「「「ウムリ」」」」「お、おう」

みんながうなづいている。


「怪我の重い人はいますか?」

「平気だ」「大丈夫」「「大丈夫です」」「…ちょっと寝ただけさ。平気だ」


「苦労はしなかったが、くらったな」

「うむり。腕輪が温かくなった」

「あの攻撃は止められないのかな?」

「できるようになると戦いが変わりますね」

「試してるけど盾の殴りじゃ魔物が耐えてる感じだ」

「そうなのね!」


「杖は《魔術の強化》で風属性なんだけど…前の杖のほうが物として良さそうだわ」

「じゃあ売り物でいいな」

「ええ。そうね!」

「まだ残しておいてもよいのでは?」

「そんなにいい物?」

「このパーティはいい物が出ている気がします。少し寝かしておいても損はないかと」

「ふみぃ」

「なるほどな。そうするか」

「うん。かまわないわ!」


「少し休んで進もう」

「「「「「はい」」」」」


三階の魔鹿は避けて進んだが、途中でミキュラが反応した。

「すごく強いのがいる。遠いのにピリピリする」

「ボスか?」

「たしかに肌に何か感じますね」

緊張感にも似た何かを肌にチクチクと感じる。

さすがに近づかない方がいいだろう。

魔鹿のボスが楽に倒せるとは思えない。

「避けましょ!」

「ああ」

注意しつつ進む。

進行方向の魔鹿とトレントを倒して階段の小部屋に入った。


「ふぅ」

緊張していたミキュラが息を吐いた。

「帰りにやろうとはいいにくそうだな」

「んむ。きっと今までで一番強い」

「ハハハ、それはいつかやる時が楽しみだな!」

「強気ね!いいわね!」

「おいおい?」

「今はやらないよ!」

胸をなでおろすハービスホークだった。





楽しんでいただけたら幸いです。評価、ブクマありがとうございます。

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