91◆導女フラバスの訓練
冒険者ギルドの受付に導女フラバスの姿があった。
今日は休みなので、それぞれが好きなことをしている。
「戦闘訓練受けられますか?ええと、強い人でお願いします」
「受けられますけど…中級でよろしいでしょうか?いま上級は受け付けてませんので」
「ハイ」
「では500になります」
「どうぞ」
「はい。確かに。ドコヴァックさーん!お願いします」
「おう」
盾持ちの戦士が出て来て、フラバスは少し安心した。
ガラアックに訓練をつけたのと同じ男だがフラバスはそれを知らない。
腕のいい戦士と聞いて名の上がった一人だということはわかった。
「オレでいいのか?あんた導女様だろう」
「いいのです。よろしくお願いしますね」
「じゃあ訓練場だ」
◆◇
「どんなことをやりたいんだ?」
「全般ですね。あと攻撃を受けた時の感想を聞きたいです」
「ふむ」
「導術の効き目を確認したいといえばわかりますか?」
「なるほどな。支援の導術を掛けられて殴られろというわけだ。これはパーティの仲間には言いだしにくいだろうな」
「フフフ。同じ方ばかりだと勘が鈍りますから」
「わかった。導術に関しては任せる。それはいいが、その格好でいいのか?」
導女フラバスはカバンを斜めに掛けたいつもの装備にメイスを模した棒を手に持っている。
ドコヴァックから見てカバンだけが不思議と浮いて見えた。
「普段のままでやらせてください」
「さすがにカバンは外したらどうだ?」
「あら、そうですね」
柵の支柱に掛けて戻ってきた。
「よし。いつでもいいぞ」
「《聖導の拳》!」
光の玉が頭上に現れてすぐにドコヴァックの頭に落ちた。
――パキン!
「くぁ!」
瞬間だけだがドコヴァックの意識が遠くなる。《癒し手》が使う攻撃支援の導術だ。
弱い攻撃魔術くらいといってもいい。
酔っ払いや態度の悪い患者相手に自衛的に使う事もある導術だ。
間合いを詰めていくフラバスのメイスが振りかぶられて叩きつけられた。
――ガン!ガン!
体つきは男に劣るとはいえ、全身を使った兆打にドコヴァックは防戦一方の形になった。
盾を引き付けて反撃の機会をうかがっている。
実際はいつでも反撃を放てるがフラバスの好きにやらせてみようという、様子見の構えだ。
「打たせてはくれませんか」
悔しそうなフラバス。
「ふむ。いいだろ」
構えから盾をずらして隙を見せた。
――ガン!ガン!
メイスが鎧に当たる。それなりの衝撃だが、練習用の模造品では衝撃止まりだったようだ。
ドコヴァックが姿勢を変えて盾で受けると、さすがに打ち疲れたフラバスが姿勢を崩した。
「いい鎧をお持ちのようですね」
「そこそこの物は揃えてある。次は?」
「《聖導の盾》!」
ドコヴァックの身体を光が優しく包む。防御の支援だ。
「さあ、続けましょう!」
盾に当たっている間は先ほどと変わらなかったが、鎧に当たると光の盾が弾けた。
――パリーン!
「衝撃が弱くなるな。いつも通りの導術だ」
ドコヴァックの態度では変化がわかりずらい。だが話してくれればわかる。
「では次を」
「《聖導の守り》!」
光がドコヴァックを柔らかく包む。これも防御の支援だ。
――ブン!ブン!
「身が軽くなった気がする。避けてていいのか?」
「ええ、そのまま続けてください」
メイスを振り続ける導女にいささか不穏なものを感じるドコヴァックだった。
◆◇
導術を切り替えての訓練は続いた。
フラバスが満足したのは一通りの術を試し終わってからだった。
「運動不足になりがちですからね!」
「ありがとうございました!」
「《浄化の聖風》!」
二人に浄化の導術がかかる。清廉な風が体と装備を通り抜けた。
「よくやるもんだ」
タオルを片手にしたドコヴァックが感心していた。
フラバスのカバンの奥で、小さく手を叩く音がしていた。
――パン!
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