90◆ハービスホークの内心
やべえ奴らだった。
様子見で連れていかれた先で死にかけた。
自然体で迷宮の奥に逃げるとか、それで休むとか普通は言わねえ。
一抱えもある魔羊並みの魔兎とか平気で狙うし。
伝説の首狩り兎じゃないかと思って内心ビクビクしていた。
そんなそぶりはなかったし、戦い終わってもガラアックの首は繋がっていた。
こっちは外した戦いが多くて情けなくなる。
〈盾持ち〉だからできるのかもしれないが、オレには無理だな…。
背は俺より小さいが、できる〈盾持ち〉なのが戦士のガラアックだ。
見たこともない美形の少女がリーダーだった。
フードで隠れているが、そこにあるのは並じゃない美形だ。
気も強いがはっきり言う性格はわかりやすくてなかなかいい。
故郷じゃ魔術士は見かけないから新鮮だ。
見たこともない強力な魔術をバンバン放つ。
両手剣を振り回すよりも強いかもしれないぜ。
それに負けないくらい綺麗な獣人の少女。斥候の腕前が半端ない。
「いる」と言えばいるし、「いない」と言えばほんとにいない。
パーティにいたらいいなという冒険者の姿をこれでもかと詰め込んだみたいな女の子だ。
周囲を警戒しつつ魔物の背中から短剣で切り裂く姿は頼もしい。
それでも回避できない強敵はいるらしく、木の化け物と戦ったが、一発でのされた。
ほぼ全員が倒れてたらしいが、倒れていたので正直わからない。
その後も戦って生き延びてるのがおかしいくらいだ。
上の階のを楽々倒してるのに避けるのが不思議だったが、納得だ。
あれで出るのが木材とか持って帰るのが大変すぎて労力に見合わねぇ。
戦士のガラアックはいい鞄を持ってるみたいで、ホイホイなんでも回収していく。
そこがこのパーティのヤバイところだろう。
なんでも金に換えられるから、捨てていくところがない。
一日の稼ぎをもらって驚いたもんだ。
一発で離れる気が無くなる稼ぎだ。
様子見だというのにきっちりくれたのは甘い奴らだという印象もあるが助かっている。
鎧を新調したら、あまり残らなかったからな。
いつもニコニコしてる《癒し手》の導女フラバスは故郷のやり方と違うやり方で役目を果たしてる。
〈盾持ち〉のガラアックとの組み合わせで何が来ても耐えさせていく。何が来てもだ。
避けては斬りつけてたオレ達とは違うやり方だ。
頭がおかしいとまでは言わないが、受け続けてガラアックが耐えられているのが今でも信じられない。
導女の護衛だというラベトリオの動きは、振り回すばかりのここいらの戦士の動きじゃない。
綺麗な動きで避けて切りつける。橙色に輝く属性剣は両手剣並みにカッコイイ。
攻撃役の役割をこなすだけじゃなく、さらに盾持ちもできるらしい。
最初は盾持ちと勘違いしたが、間違いでもなかった。
デカイ犬の従魔を連れているが、従魔連れの戦士なんて見たことなかった。
ランクは近いらしいが、どこかで戦い方を身に着けた経験があるのだろう。
それも事情があるかもしれないな。
ジルベルトが魔力でできてるってのは信じがたい。本物の犬に見える。
鼻が利くというし、指示の通り警戒していることもできる。
酒場の残飯をもらい損ねて鼻を鳴らしてる駄犬とは違う出来だ。
金になると思って自分を売り込んだパーティだが、とんだ所だった。
攻撃を受けることがほぼないから楽だと言えばそうだが、その分とんでもない魔物と戦わされている気がする。
次に倒されたら抜けようかなと思うこともあったりする。
狙われてないのに倒されたなんて故郷のやつらに言ったら一生笑いものにされる。
攻撃がスカり続けていても何も言われないのが恐ろしくもある。
早くまともにぶちかませるぐらいには慣れたいもんだぜ。
そうしたら必要な分を溜めて、成人の儀の《伝説の村》探しに出よう。それがいい。
楽しんでいただけたら幸いです。評価、ブクマありがとうございます。




