84◆続く魔兎狩り
続けて魔兎を狩っていた。
幸いトレントが別な所へ行ったと見えて、こちらには絡んできていない。
探知範囲は広くなさそうなので、近くにいなければ大丈夫だろう。
ハービスホークも慣れてきて、外しても愚痴を言わなくなった。
「向こうの森だと魔兎もここまででかくない」
「じゃあ狩りやすいか?」
「ああ。もっと手頃な獲物だ」
「そうか。こっちのはそうとは言えないな。外の森だと弱いのがいるぞ」
「ああ、いるのか」
それを聞いて安心した様子だ。
「あんたあんなに攻撃受けて平気なのか?」
「平気じゃないさ。でも《癒し手》がいるから余裕になった」
「スゲーな…盾持ちってそういうものなのか」
「《癒し手》が凄いのさ」
頭を振って聞いているハービスホーク。会話が通じているがかみ合ってないかもしれない。
「まずい。強いトレントが走って来る」
「強い奴だな?」
「そう。この階の奴」
「避けるのは?」
「ムリ。挟まる」
「わかった。迎え撃つぞ」
「あい」「「おう」」「「はい」」
「〈匂い〉が違うから気を付けて!」
「「「「「おう!」」」」」
「ズリズリズリズリ!」
太い瘤のある樹木が根をくるくると回転させながら移動していた。
幹も枝も太く、禍々しくねじ曲がっているのに動いている。
見た目で上のトレントたちより上位だとわかる風体だ。
気が付いているのかいないのか、真っ直ぐこちらへ向かってきていた。
「《聖導の盾》《聖導の守り》」
――ヒュッ!ヒュッ!
ミキュラも一緒に矢を放つ。二本ずつ当てて魔物を引き寄せる。
「フン!」
槍で突いた後、盾に切り替えて体当たりをする。重い当たりだが途中で相手が止まった。
しめしめと思って盾を叩きつけて剣の連撃につなげた。
右、右、右と当ててさらに一撃入れた。
魔物の風の魔力が高まり属性の刃となって一気に全体に吹き付けた!
――ビュー!ゴォー!
「うわっ!」「きゃ!」「これは!」「ぐぅ」
「あう」「むむ」
吹き飛ばされはしなかったが、切り裂かれるような痛みが全身に当たる。それが二回!
チェインの頭装備が温かくなる。体感で装備の魔術抵抗が発動したことはわかっていたが、ほかのみんなはそんな装備を持っていない。
「大丈夫か!?」
「ゴゴゴゴゴ」
――ブン!ザワザワザワ!
――ガン!
「フン!」
瘤のある太い枝の叩きつけを盾で受け止める。だが受けきれずに斜めに受け流した。
無理が効く場面ではない。
突き返しを入れて、ロングソードを叩きつける。
右、右、右と入れて、盾で殴りつけた。
――返事はない。
視界に入るのはいまいましいハイトレントと片膝をつくラベトリオと倒れたハービスホークだ。
「起きろみんな!」
「これは…やられました」
ラベトリオがよろよろと起き上がる。
「フラバスを起こせ!」
「はい」
ふらふらとラベトリオが歩いていく。手探りでポーションを取り出して飲みながらだ。
――ブン!ザワザワザワ!
――ガン!
「フン!」
盾で受け止めた。耐えられない力ではないことに小さく安堵する。
下半身からの力も使って耐える。重い鎧が今は頼もしい。
突き返しを入れた。瘤に力一杯の斬りつけをぶつける。
効いてる手応えではないが右、右、右と入れて、もう一撃入れた。
「起きろ!みんな!」
腹に力を入れて叫んだ。
「ミキュラ!ワルケ!ハービスホーク!」
「フラバスは!?」
返事はない。ラベトリオが代わりに叫んでいた。
「導女様起きて!フラバス!起きなさい!」
――ザワザワザワ!ドン!
「フンン!」
太い瘤付きの枝が振り下ろされて地面に叩きつけられた。盾でずらせてよかった。
突きを入れて、反撃を入れる。足元を確認して根が進んできてないことを見た。
右、右、右と斬りつけて盾を太い幹に叩きつける。
一瞬だけ顔が幹に浮かんで恐ろしい顔で睨み返してきた。
強気でもう一度盾で殴りつける。
「ゴゴゴゴゴ」
払いの一撃が太い枝で襲ってきた。
倒れている方に行かないようにするのに気を使うと上手く抑えられなかった。
――ブン!
――ゴン!
――パリーン!
光の盾が砕けて衝撃を和らげてくれた。それでもキツイ。
「ぐはっ!」
内臓がきしむようにうめき声が出た。盾ごとの打撃だが受けきれていないのだ。
それでも跳ばされずに抑えつけるのには成功した。
ハービスホークがピクリともしないのが気になる。
ミキュラはどうした?
ワルケリアナは後ろでどうしてる?
もう一度〈あれ〉が来たらマズイ。そこだけは止めなければならない。
集中して盾越しに相手を感じ取ろうとする。
ラベトリオがポーションをフラバスの顔にぶちまけるようにかけた。
すると急に顔に表情が戻った。
「はっ!!」
「《聖導の癒し》!《聖導の羽衣》!」
柔らかな光が幾重にも重なって大きな光となると全員を包み込んだ。
加えてベールのような光が全員を包みこむ。
回復を促す力がもりもりと湧いてくる。
同時に周囲を見回す余裕が出てきた。
「ワルケとミキュラを頼む!」
「「はい!」」
「あれは次は弱まって受けられます!安心して戦って下さい!」
フラバスが叫んでいた。防御のための耐性の支援を混ぜていたのだ。
「わかった!」
叫びたい気分なので大声で応える。
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