83◆魔兎の手応え
充分に休憩して四階に下りた。
森の木立が一層濃くなる。
魔兎狙いだが今日の引きはどうだろうか。
「どんな感じだ?」
「魔兎もいるけど強いトレントがうろうろしてる。前より動きが激しい」
「孤立してるのを探せるか?別々じゃないと苦しいからな」
「んむ。わかった」
移動を始めた。時々不意に戻ったりするのは魔物の移動に合わせて避けているからだ。
「そこに迷宮の罠があるから近づかないで」
なんてことない木々の間の一か所を指さすミキュラ。本人は回り込むように歩いて先に進む。
「森の中に罠か…かかるとどうなるんだ?」
「落とし穴だと思うけど、調べないとわからない」
「解除する意味はないだろうな。避けて通ればいい」
「時間があれば調べて対処の練習したいけど、今は無理」
「ふむ」
「怖いところだな」
全員怖いもの見たさでのぞいているが、どこに仕掛けられているのか全くわからなかった。
「いた。あれ」
魔兎が巣穴から顔を出しているのが見えた。
「どうだ?」「でかいな!」「ふふ」
「やるぞ」「「「「はい!」」」」「おう!」
「《聖導の盾》《聖導の守り》」
柔らかい光がガラアックを包み込む。
――ヒュッ!ヒュッ!
二本ずつ放って全部当たり。すでに魔兎がこちらへ走っている。
「スピスピスピスピ!」
「フン!」
魔兎の両前足での飛び蹴りを盾で受ける。
突き返しを入れて、連撃につなげる。
「ソイヤッ!」
右、右、右、と入れてもう一撃入れた。盾で殴りつけて構えに戻る。
「エイエイ、エイエイ!」――「ヒュパ!」
ミキュラの二本の短剣が素早く斬りつける。
「チェア!ソイ!チェア!」
ラベトリオはいつも通りの動きだが調子が出ていないようだ。
「タァー!リャー!ウォー!」
ハービスホークの攻撃が二回当たって魔兎にダメージを与えたが本人は納得いってない様子だ。
「横からでも避けやがる!」
「《氷弾》!」――バン!
破裂音とともに氷の塊が魔物に当たる。全身に冷気が広がって動きを遅くする。
「スピスピスピスピ!」
魔物の動きが変わったのについていく。
飛び蹴りが来た。
――ガン!
「フン!」
盾で受ける。勘が働いた。追撃がくる!
――ガン!
「ウリャ!」
盾できっちりと受ける。その上で突き返しを入れて、連撃で反撃する。
魔物が激しく動いて合わせきれなくて、強くは入れられなかった。
魔物の動きがとらえきれない。ミキュラの体勢も崩れたのが見えた。
「エイエイ!」
それでも攻撃を当てている。
「チェア!ソイ!チェア!」
警戒しながらのラベトリオの連撃が慎重に決まる。その分ペースは落ちている。
「ああっ!」
ハービスホークは魔物の動きについていけなかったようだ。完全に外した。
「《氷弾》!」――バン!
破裂音の後に氷の破片が飛び散る。魔物の周囲が冷気で氷付いた。
「いつも通りよ!落ち着いて!」
「「「おう!」」」「ん!」「はい」
「スピスピスピスピ!」
「フン!」
盾でいなして相手の動きを妨害する。
相手の攻撃の出始めをつぶせたので相手が戸惑っている。
その隙に連撃を入れた。
「ソイヤッ!」
右、右、右と入れてさらに右を入れる余裕があった。盾で体ごと殴りつける。
「エイエイ、エイエイ!」
ミキュラが冷静に連撃を入れた。素早い連撃だ。
「しまった!」
珍しくラベトリオが完全に裏をかかれて攻撃できなかった。
巧みな足さばきでもカバーできなかったようだ。
ハービスホークは外さないように機会をうかがいすぎて、手を出しそびれた。
「《氷弾》!」――バン!
強い破裂音とともに打ち出された氷の塊が魔物に当たると、跳ねあがるようにして魔物が倒れた。
冷気が周囲に広がる中で、迷宮の吸収が始まる。
魔石とドロップの塊肉が出ていた。他にも皮とふわふわの付いた頭装備が出た。
「ふいー」
「外してばかりだ」
「慣れるまではそういうこともあります」
「…」
「この頭巾は氷属性の耐性装備らしいわ!残しておきましょ!」
「わかった。使うのはミキュラか、導女フラバスかな?」
「ワタシはまだいい」「私もまだいいです」
「人数分出るまでここに来る気がするから、決めなくていいか」
「そうね!そんな気がするわね」
「使う機会があるかどうか。迷宮次第ではあります」
「魔物でもいるかもしれない」
「「「おおー」」」「「なるほど」」
「ちゃんと売らずに保管しておこう」
「はい」
「ありがとう」
渡された魔石とドロップを《インベントリー》に回収する。
楽しんでいただけたら幸いです。評価、ブクマありがとうございます。




