82◆階段の小部屋で一休み
魔鹿との戦闘の後はさすがに息切れしているので小部屋で休めるのはありがたい。
道具も出して本格的に昼食にする。
「あれ出して!この間渡した奴よ!」
ワルケリアナと導女フラバスに渡された小瓶を取り出して渡す。
「あれで通じるとは…ガラアックの方がお母さんみたいですね」
「んむ。それはあるかも」
「パーティのまとめ役とはそういうものかもしれないですね」
「まあ好きに言ってくれ。渡したぞ」
「ありがと!」
「ありがとうございます!」
パンと軽めのスープを準備してある。取り分けてみんなで食べ始める。
出来立てを《インベントリー》に入れておいたものだ。
「お前も食べていいからな」
「いいのか!?」
「ああ、食べずに力が出ないと困るからな」
「へへへ。実は腹が減ってたんだ」
渡した瓶が回ってきた。中身はベリーのミックスジャムだった。甘い香りがしている。
「いいのか?」「いいのよ!」「はい」
「植物迷宮で取れたベリーが安かったから、ジャムにしたのよ!フラバスも一緒に作ったの!」
「ワルケリアナさんと相談して一緒に作ってみました。素材がいいので美味しく出来たと思います」
ニコニコしているフラバスは本当に優しい導女に見える。
食べるだけじゃなくて、作る方も好きみたいだ。
パンに載せて食べてみた。
いろいろなベリーの香りがしてからしっかりした口当たりで濃い甘さが広がる。
迷宮産でも新鮮な〈ベリー〉はいいジャムになるということに納得する。
「すげーうまい。ごちそうさまだな」「でしょ!」「うふふ」
「次ワタシ」「おう」
ミキュラも気に入ったようだ。ミキュラの反応がいいのは珍しいからかなりいい味だということだ。
ラベトリオも静かにしているが、盛って食べている。
「これは美味しいですね」
「うまっ!うまっ!」
「迷宮の中でもこんなもの食べてんのかよ!干し肉と堅いパンぐらいだったぜ」
「それが普通ですよ。ここが恵まれてるだけです」
「普通のパーティならそうだな。欲しけりゃあるから出せるぞ」
「いやだ。こっちがいい」
「ハハハ、素直な奴だ」
「これだけ食べられるのはツイてるぞ。魔鹿もあるしな。幸運だったな」
「魔鹿がこんなにタフだとは思わなかったぜ」
「そんなわけでオレ達もあまり倒してないんだ。長くかかるからな」
「でもハービスホークがいたから楽だった方よ!」
「んむ。前より楽」
「そりゃそうかもな」
自分が良く評価されているので嬉しさを隠せない顔のハービスホーク。
「次は下で魔兎狩りだ。こっちのほうが相手をしやすい」
「普通の魔兎じゃないんだろ?」
「普通をどれくらいに考えるのかは故郷次第だろうな」
「それは…うん。見てから考えるよ」
「いつもこんな感じなのか?」
「何がだ?」
「戦闘も休憩も、迷宮もだ」
「まあ、いつも通りだな。長めの戦いになったのは珍しいけど」
「そうか」
何か考えている様子のハービスホークだった。
「茶を飲んだら行こう」
「好きねそれ!」「「「はい」」」「おう」
「お前も飲むか?」
「いや、いい」
「〈果汁〉たっぷりの果実水もあるぞ」
ハービスホークがお手上げの仕草をして断った。
楽しんでいただけたら幸いです。評価、ブクマありがとうございます。




