81◆風の迷宮四階を目指す
三階に降りてすぐのところで、何やら賑やかなパーティが狩りをしていた。
魔鹿を相手に特に問題はなさそうなので通り過ぎた。
以前すれ違った《戦神の斧》だろう。
斧が光を反射してきらめいていた。
「結構実力のあるパーティみたいだな」
「そうね!」
「いつも通り下へ」
「んむ。わかった」
「ここは抜けてもう一つ下で戦う」
「強いのか?」
「弱いのさ」
「はん?」
「楽に早く倒せるほうが危なくないからな」
「ふうん」
ミキュラの誘導で戦闘をせずに階段部屋の近くまで来たが、倒せずには抜けられそうにないのがいた。
大きな角を持った体格もいい魔鹿だ。尻尾をプルプルとさせて余裕のある立ち姿だ。
「あれは避けていくのは無理」
「そうだな。やろう」
「魔鹿ね!手強いわよ!」
「「おう」」「はい」
「《聖導の盾》《聖導の守り》」
ガラアックを柔らかな光が包み込む。守備の力が底上げされる。
「《雷矢》が効き難かったな」
「ええ!違うのを試すわ。新しい魔術を仕入れたのよ!」
「それは楽しみだ!」「んむ」「お、おう」
――ヒュッ!ヒュッ!
二本ずつミキュラと矢を放って全部当てた。
「ビエエエエー!」
走ってくる魔鹿の頭が下がる。突進からの衝突を見越して盾を構えた。
「フン!」
盾に力を集中して全身で受け止める。
――ガン!
角での一撃目!
盾で斜めにいなして避ける。
――ガン!
二撃目を撃たせないようにしようとしたけどできなかった。
だが盾で受け止めきれた。腕が痺れて重たい。
突き返しを打つが外された。そのまま連撃を叩き込む。
「おい!大丈夫なのか!?」
目を丸くするハービスホーク。
「まあな!」
「エイエイ、エイエイ!」
ミキュラの連撃が綺麗に決まる。以前とは違う手応え。
「チェア!ソイ!チェア!ソイ!」
ラベトリオの巧みな足さばきが最初から出て、強く連撃を叩き込んでいる。
ラベトリオと反対側でハービスホークが両手剣を振り回す。
「タァー!リャー!ウォー!」
荒っぽい打撃が魔鹿の腹に当たる。手応えが良かったのだろう、本人はドヤ顔で構えている。
「《氷弾》!」――バン!
強い破裂音がして氷の塊が飛んでいった。魔鹿の身体に当たって全身に冷気を広げた。
「すげぇ!」
ハービスホークが驚いている。
「長くなるぞ」
「オレ全力で叩いたんだぜ…」
首をねじるように誘導して盾で抑え込む。
連撃を食らうのは抑えられた。
――ガン!
盾で受け止める。いい角度なのでダメージはない。
突き返しを角に入れてみたが効いてる感じはない。
連撃を首筋に叩き込む。右、右、右、と入れて盾で抑え込む。
「エイエイ、エイエイ!」
連撃を入れた後、スッと気配を消すミキュラ。
「チェア!ソイ!チェア!ソイ!」
ラベトリオの調子がいい。連撃が小気味良く続いて出ている。
「タァー!リャー!ウォー!」
つられたのかハービスホークもいい感じだ。
「油断せずに行こう!」
「「おう!」」「んむ」
前衛が応える。
「《氷弾》!」――バン!
破裂音の後に魔鹿の身体でさらに破裂しているのか氷の破片が飛び散っている。
パリパリと凍り付く音が破片のそばからもする。
「ビエエエエー!」
頭を押さえ付けようとして角に盾を引っかけられた。
そのまま顔を押し付けて、下を向いてからの突き上げ!
――ガギン!
「うわっ!」
危うく体に突き刺さるところだった。
――パリーン!
光の盾が砕けて衝撃を和らげてくれる。それでもかなりの破壊力があった。
「おいっ!」
「まだまだ!」
「《聖導の盾》!《聖導の癒し》!」
防御の支援と回復を促す導術がガラアックを包み込む。
まだやれるという気力も回復に合わせて安定する。
反射的に盾で魔物を殴りつける。
連撃につなげるほどには余裕がなかった。
「エエーイ!!」
ミキュラの渾身の一撃が魔物を後ろから斬り上げた。魔物の身体がびくりと跳ね上がる。
「チェア!ソイ!チェア!ソイ!」
華麗な足さばきからの連撃が続いている。ラベトリオの顔に微笑が浮かんでいた。
「うわぁ!」
意気込みすぎたのかハービスホークが攻撃を外した。慌てて構えに戻ろうとしている。
「焦らなくていいぞ!」
「平気だ!」
「《氷弾》!」――バン!
氷の破片が魔物に命中したところから飛び散りながら周囲を冷却する。
魔物の頭を抑え付けるのが上手くいった。
角での連撃をつぶす。足の爪で蹴られそうになったが回避した。
「フン!」
盾で殴りつけてから連撃に入る。右、右、右と入れて盾で殴り飛ばす。
「ビエエエエー!」
「もうちょいだ!」
「エイエイ!」
ミキュラが流れるように連撃を入れた。
「チェェイ!」
わずかに下がってからの強撃が魔物の身体を捉えた。ラベトリオの身体が浮いているように見える。
――ドウ!
魔鹿が音を立てて倒れた。
すぐに迷宮の吸収が始まる。
魔石と塊肉が床に残る。他にも角と革が出ていた。
「うお!うお!うお!」
「よしっ!」
「まずまずね!」
「なかなかいい感じじゃないか?」
「んむ!」
「まだやれそうですかね。みなさん?」
「やれないこともないが、無理することもないだろう」
「一休みしましょう。階段部屋がすぐそこですから」
「「「「「ウムリ」」」」」
階段部屋で一休みすることにした。
それなりに時間がたっているので食事もしよう。
楽しんでいただけたら幸いです。評価、ブクマありがとうございます。




