77◆迷う狩場と落ちないドロップ
土の迷宮の三階にて。
お目当てのドロップを求めて狩りを続ける《マードの爪》の姿があった。
「ああーまた出なかった」
「ホントにレアだったんだな」
「誰かの幸運が引き当てたんでしょうね」
「うむり」
細身のゴーレムを倒してもドロップは質のいい魔石ばかりということが続いた。
◆◇
ここのところ中級の土の迷宮と風の迷宮とを交互に訪れていた。
魔兎と魔鹿、それに属性剣目当てと、稼ぎと装備強化を兼ねている。
ドロップ目当てのみだと緊張感が緩むので、探索も進めていきたいところだ。
進みやすいのは土の迷宮だが、風の迷宮も行き詰っているわけではない。
コツコツと実力を着けてきた成果が戦闘の対応力に出てきているのだ。
どちらもそれなりに先へ進めているので泊りがけになりそうなのが悩ましい。
疲労感が大きいのでなるべく帰ってきたいところだが、そろそろ慣れていかないといけないのだろう。
防御力的にも増強していきたいところだ。
「土の迷宮でいいか?」
「風の迷宮のほうが続けていけるんじゃない?」
「迷宮内で集中力が切れないのも大事よ?」
「どっちでもいい」
「じゃあ土の迷宮で」
「属性剣欲しいわね!」
「ああ」
「ふみぃ」
「手応えに慣れるとかなりいいですよ。できるなら他の属性の物も欲しい所です」
「先は長いな」
ドロップの属性剣を手にしてから明らかにラベトリオの戦力が上がった。
おかげで安心して攻撃役を任せられて楽できている。
同じようにこちらも持てばかなりの強化になるはずだ。
ミキュラの使う短剣も手に入ればさらにいい。
当然、戦士として羨ましいのもある。
次は出てくれると旨い果実水が飲めるんだが。
迷宮のドロップだ。迷信も数多くある。
幸運が付いて回るなら神殿への喜捨も弾む。
「深い階へ行く方が強力な装備を取れるというのもあるよな」
「そうね」「ありますね」「んむ」
「危険ですけどね」
「装備を整えつつですよ」
じっとりとした視線で導女フラバスが念を押すように見ていた。
「どこでも迷宮の踏破を目指すなら、属性装備はサボれない」
「「「「うむり」」」」
「でも気分転換は大切よ!」
「魔鹿、魔兎だけのパーティみたいにするつもりはないわ!」
「おう」「ん」「はい」「なるほど」
迷宮の探索はせずに安定して魔鹿、魔兎を狩り続けることだけに注力するパーティも多くあるのだ。
そうする気はないとワルケリアナが断言した。
「迷宮を攻略して踏破していくのが《マードの爪》よ!」
「そうだな」「んむ」「はい」「わかりました」
「進みましょ!」
「「「「おー!」」」」
◆◇
街に戻り解散して寝床で休んでいる一人。
眠っている導女フラバスの枕元では、小さな光が灯っていた。
「素敵なカバン~素敵な冒険~」
「素敵なカバン~美味しい料理~」
「ですわ~」
クークースヤスヤ~。クークースヤスヤ~。
「素敵な《ギフト》~たくましい戦士~」
「素敵な《ギフト》~困難な迷宮~」
「ですわよ~」
「んーん」寝返りを打つ導女フラバス。
「ムニャムニャ」
クークースヤスヤ~。クークースヤスヤ~。
冒険の疲れからかぐっすり眠っていて目を覚ますことはなかった。
パンと手を叩く音がして枕元の小さな光は消えた。
そしてカバンの中で光が灯る。
「お仕事もちゃんとしてましてよ」
「連絡ないけど、タイニーチャイミーはどこにいったのかしら?」
「まあ今日はもう寝ますけどね。おやすみなさいませ!」
パンと音がして明かりが消えた。
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