74◆ミキュラの休日
「宝箱を開けるときに笑い声を聞いたの?」
「んむ」
「罠を仕掛けてるのは迷宮じゃなくて悪戯妖精って話だけどねえ。ホントか嘘か知らないわ」
「へぇー」
「じゃあ次これ外して。箱開けるまでやってね」
「わかった」
「気を付けなよー。仲間に《ギフト》持ちがいると変なのが寄ってくるからさ!」
「んむ」
「迷宮の宝箱にも罠が仕掛けてある確率が上がるらしいんだよね」
「そうなの?」
「噂だけどね。その分いい物が入ってるって話。そうそうギフト持ちとなんか組んで箱出て開けたりしないけどさ」
「ああ、固定なら話は別かあ…ミキュラちゃんも気を付けなねー」
「わかった。気を付ける」
「できた」
「まだ開けてないじゃない。仕掛けの罠だけで判断するのは駄目よ。魔術の罠でわからないこともあるんだから」
「ありゃ」
「はい反省してね。じゃ次はこれ」
「んむ」
「宝箱の罠は悪戯妖精の仕業…笑い声もその妖精?」
「そうかもね。外されて喜ぶなんて、悪戯妖精らしいけど。こっちとしちゃあ仕掛けられた分迷惑な話ね」
「ふみぃ」
◆◇
ギルドの酒場でミキュラが切り出した。
「明日は休みにしたい。訓練する」
「いいけど、訓練!?」
「どんなことするの?」
「探知と罠外し。時間があれば短剣も教えてもらう」
「「「「真面目だ!」」」」
「そ。ちゃんとやってる」
「じゃあ頑張ってね!ワタシも何かしようかしら?」
「オレは弓を軽くやって休むかな。休むのも仕事だ。ここのところ頑張ってたし」
「「そうね!」」「ふむ」「ウフフ」
「神殿で奉仕活動に顔を出してますね」
「私は手紙を書いて出しますか。おお我が愛しの君よ!」
「彼女?」
「婚約者です」
「「「おお!」」」
「「出会いのところ詳しく!」」「あはは」
「じゃあ次は明後日ね!いつも通りここに集合。中級の風の迷宮のつもりでいてくれて構わないわ!」
「「「「はい!」」」」
◆◇
探知の訓練は実習なので野外でする。
迷宮に行くこともあるが大抵の場合は、屋外で予想を当て合うことで訓練する。
「つまんない」
殆ど一人勝ちするのでミキュラからするとつまらない訓練なのだ。
実際、教官よりもミキュラの方が上を行くこともあるので、出てこなくても構わないと言われているが、訓練セットのメニューの一部なので参加している。
参加者の会話の内容が聞こえると近くの話ばかりしている。
ミキュラの辿れる〈匂い〉の範囲からすると、他の受講者は近くでも全部をわかっていない印象だ。
魔兎に魔鹿、スパイダーにスネーク。林の奥の森にはリザードもいるようだ。
だが遠すぎてどのリザードかまで、はっきりとはつかめない。
魔狼と狼の匂いが混じっている。魔狼になって群れから追い出された匂いだが、これは荒れ野のものだろう。
今回は木の枝の上で昼寝して待っていた。
お昼前には罠の講習に入れると思っていたがその通りになった。
おしゃべりの時間が多いので、この時間を楽しみにしていた。
「こんにちはジュール・チョコル」
「こんにちはミキュラ」
現役の冒険者なので、迷宮の情報も新鮮だが。
中級迷宮の落とし穴の話はホントウなのか教えてもらえてない。
「はい、この罠外してみてね」
「むむむ、落とし穴の話聞きたい」
「それはまた今度」
「難しい、この罠」
「解けなきゃ次の講習ランクには上がれないぞ」
「…がんばる」
「そうそう素直に、素早く、正確に、やって頂戴!」
ミキュラの訓練は続く。
楽しんでいただけたら幸いです。評価、ブクマありがとうございます。




