70◆小袋の中で
土の迷宮が様変わりしていた。
パンプキンズがどこにも見えない。
そのためパンプキンズ目当てで来ていた冒険者達はすぐに手を引いていた。
戦いやすい迷宮なのに、数日前ほど混み合っていないのはそのためだろう。
一階のスパイダー、二階のリザードを倒し、三階へ進む。
「寂しい洞窟になったな」
「元に戻ったのかも」
「そうですね」
スリムなゴーレムを倒しつつ、迷宮を進む。
属性剣の長剣をもう一本。可能なら短剣も手に入れられるといい。
三階のゴーレムに集中して狩りを続けたが、属性剣は出なかった。
質の良い魔石がたくさんと、属性防具がいくつか手に入った。
質の良い革装備のアームガードはガラアックに。
腕輪はフラバスが使うことになった。
全員分の属性防御まで手が回るとは思えないが、手に入った分は身に着けておいて損はないだろう。
◆◇
質の良い革袋に飛び込んだタイニーチャイミー。
しばらく自分の住処にするべく中で頑張っていた。
「ベッドはここでちょ。椅子はこっち」
「鏡は見やすい所で、ああ衣装ダンスはどこにちようかな?」
手前ではジャラジャラと金貨が入ったり出たりしている。
ここは特別な場所なので、気にする必要はない。
だが元が小袋なので割合で狭くなるのは仕方のないことだった。
「うふふ。タイニーパンが来てもこれで大丈夫!」
お茶の道具を棚に仕舞うと、うっとりと革の匂いを嗅いでわずかに羽ばたいた。背中の小さな羽がパタパタと動いた。
「んー?他の子たちも来るには狭いかも」
「次はもっと広いところに入れるといいな!」
あまりこだわる方ではないタイニーチャイミーだが、仲間を招待するなら入れる広さが必要だ。
普段は腰に付けられていて使われることのないお財布は、なかなか静かな住処と思われた。
「外の様子も見てなきゃ!」
持ち主はワルケリアナという魔術士らしい。
タイニーパンのいる上質な革カバンの持ち主とは同じパーティだ。
はやくタイニーパンに会っておしゃべりをしたいが、それにはもう少し落ち着いてからの方が良いだろう。知っておきたいこともある。
このパーティのこととか、《ギフト》のこととか。
《インベントリー》のいい匂いはここにいても漂ってきている。
チャンスがあればタイニーチャイミーも試すつもりだ。
《インベントリー》への引っ越しを。
タイニーパンがダメでも自分はわからない。
世界にカバンと同じぐらい不思議なことはたくさんあるのだから。
「ネー」
楽しんでいただけたら幸いです。評価、ブクマありがとうございます。




