60◆土の迷宮・レアな魔物
「ほかと違うのがいるみたい」
「ボスかな?」
「たぶん違う。レアなやつ」
「なら見てみよう。倒せるなら倒しておきたい。取られる前に。それに、帰りよりいいだろう」
「ん、こっち行ってすぐ」
大きいパンプキンゴーストがそこにはいた。
カボチャ色の濃いオレンジが透けている。コウモリの翼が頭だけの身体から生えていて、顔の目の部分からひときわ強い光を放っている。
時々手招きするような仕草をするが、こちらは見つかっていない。
「よし、やろう」
「あ、待ってください」
「んむ」
「死霊や悪霊の類の時に、武器が効かないことがあります」
「後衛でなんとかしますから、引き付けていてくださいね」
「危ないのではないですか?」
「なんとかするわ!」
「わかった。いつも通りでいいってことだな?」
「はい!」
「《聖導の守り》《聖導の盾》」
「《聖導の鎧》」
ガラアックを含めて、全員に改めて防御の底上げの導術がかかった。
――ヒュッ!ヒュッ!
矢が素通りして、相手の魔物は気にせずその場にいる。
ミキュラと顔を見合わせて、肩をすくめた。
「ソイヤッ!」
盾を前にして突進する。
――スカッ!
右手のロングソードが手ごたえを感じなかった。
それでも嫌な感触をゾワゾワと通り抜けた腕から受ける。
「ヒュヒュウ!」
――サワサワ~!
小さく伸びた魔物の両手が触れたところから、力が削られていった。
パタパタと羽ばたいて小回りが利いた動きをする。
「うわ!」
剣と盾を振り回して、どうにか戦いの形にしたいがすり抜けて上手くいかない。
「エイエイ、エイエイ」――「ヒュパッ!」
ミキュラの振るう短剣から出た風の刃が、魔物を切りつけた。
「チェア!ソイ!」
ラベトリオの攻撃は控えめだ。手ごたえを確認しつつやっているようだ。
「ハウッ!」
ジルベルトの体当たりが決まると、魔物の顔が一瞬しかめっ面に変わった。
相性がいい相手なのかもしれない。
「《聖導の癒し》!《聖導の春風》!」
ガラアックに回復を促す導術がかかる。
そして、温かい春のような風が戦場を吹き抜けた。
魔物が大きく揺れる。効いているのだ。
「ヒュヒュウ!」
「《氷弾》!」――バン!
冷たい氷の塊が透けている魔物の身体に直撃した。
普段と同じく砕けた破片からも冷気が押し寄せて魔物を氷付かせる。
魔物が飛んだまま動き回るのではなく、こちらに向かってくるからやれているだけのように見える。
「このままでいいのか?」
「ハイ!」「いいわよ!」
掠ったぐらいも攻撃が効いていない気がする。
ブローチもなければ全くダメージは入っていないかもしれない。
右の剣を振るうが魔物をほぼ素通りする。
手応えのない相手にどうにもやりようがつかめない。
盾で殴りつけるが、通り抜けて体を捕まれた。
「ヒュヒュウ!」
――サワサワ~!
再び魔物の両手が触れたところから、力が削られていく。
「ぐわ!」
ゾクゾクする悪寒が体を走った。
「エイエイ、エイエイ」――「ヒュパッ!」
ミキュラの攻撃も強くは当たってないが、風の刃が効いているのだ。
それが当たるたびに魔物が大きく揺れている。
「チェアソイ!」
ラベトリオは足さばきの練習のように動いているだけで攻撃の手は控えめだ。
「ハウッ!」
ジルベルト飛びつきからの噛みつきが上手くいった。魔物が大きく弾む。
「ヒュヒュウ!」
「《聖導の癒し》!《聖導の春風》!」
柔らかな光とともに、回復を促す導術がガラアックにかかる。
そして、再びの〈春風〉だ。
魔物も再び大きく揺れる。
「《氷弾》!」――バン!
氷塊に撃ち抜かれた魔物の身体が冷気で遅くなる。
ヨロヨロと飛んだところで、ミキュラが待ち受けていた。
「エイエイ、エイエイ!」――「ヒュパッ!」
――ポフン!
風の刃が切り裂くと、魔物の身体が外側を残して空気がしぼむように潰れた。
そのまま地面に落ちて動かなくなった。
すぐに迷宮の吸収が始まる。魔石とアイマスク型のマスクが出ていた。
「やりました!」
「やったわね!」
二人で喜び合う、導女フラバスとワルケリアナ。
ミキュラもジルベルトも胸を張った。
「ふんす!」「ハウ!」
「みなさん見事でしたね」
「助かったぜ。ありがとう」
「マスクは何か意味あるのかな?」
「このマスクは付与がかかっているみたい…」
「『このマスクは見えないものを見えるようにする』ですって!」
「良ければ私が着けていましょう」
「そ、そう?」
ラベトリオが気に入ったらしい。素直に渡すワルケリアナ。
ハットも被るか迷っていたが、実は仮装好きなのかもしれない。
《インベントリー》に魔石を収納する。
「じゃあ、進むか」
「階段の小部屋で休んでもいいかもね」
「そうだな」
楽しんでいただけたら幸いです。評価、ブクマありがとうございます。




