56◆荒れ野の迷宮
ワルケリアナが突然朝から切り出した。
「魔兎が続いたから、今日は荒れ野の迷宮まで足を延ばしましょ!」
「弱いスパイダーがいるらしいわ!」
「ふみぃ」
「いきなりだが、準備はいらないのか?」
「いらないわ。いつもの場所から少し先に進むだけですもの。ジルベルトがいれば魔狼もしつこく来ないしね!」
「そうですか。確かに魔兎は緊張感が高まる狩場ですからね。時々外すのもありでしょう」
「迷宮だから素材は限られるぞ」
「そうね!でも糸が高値なのは変わらないから大丈夫よ」
「どこかで入れ知恵されたか?」
「そんなことはありません。ちょっとお話しただけです」
ニコニコしている導女フラバスの両目が輝いていた。
ワルケリアナになにか話したに違いない。
「その迷宮の情報はオレは持ってないけど、任せて大丈夫か?」
「ええ、そこまで強い魔物は出ないと聞きました」
それを聞いて安心するラベトリオ。
「じゃあ、いいか」
「すぐに向かうんだよな?」
「「ええ!」」
「じゃあ行こうか」
「「「「はい!」」」」
◆◇
中級の風の迷宮を越えた先に行く道筋がはっきりと大地に残っている。
ドロップを載せるためだろう台車を押す冒険者たちの姿もあり、人気のある迷宮のようだ。
迷うことなく迷宮の入り口まで辿り着くことができた。
魔狼には絡まれることはなかった。
入口には衛兵もいなければテントを張った商店もない。
なにかあれば中級の風の迷宮までいくことになるだろう。
気を引き締めて迷宮の中に入った。
迷宮の一階は土壁のくりぬかれた構造だった。
天井は高いが所々で狭いところがある。戦闘時には上手く使えると有利に戦えそうだ。
「さっそく一匹。スパイダーだと思う」
「おう」
壁の裏側からひょいと顔をのぞかせたのは八脚のスパイダーだった。
迷宮の魔物なので比べるのは乱暴だが、大きさは森で戦ったものより一回り小さい。
「キシシシシ」
すぐに槍で突き込んで盾に持ち替える。
「フン!」
相手の突進と鉤爪の攻撃を受け止める。
突き返しを入れて、右、右、右と三連撃を入れた後で盾で殴りつけた。
魔物の身体が揺れる。
「エイエイ、エイエイ!」――「ヒュパッ!」
ミキュラが強く相手に切りつける。
風の刃が蜘蛛の脚の毛を切り飛ばした。
「チェア!ソイ!チェア!ソイ!」
ラベトリオの巧みな足さばきからの連撃が続く。
「《雷矢》!《氷結》!」
ジバジバと音を立てて雷の矢が飛んで当たると、衝撃が魔物の身体全体を弾けさせた。周囲が氷付くが、魔物はもう倒れていた。
すぐに迷宮の吸収が始まる。
床に魔石と糸が残されていた。
「手ごたえはトレントぐらいかな?」
「弱い方のね!」
「んむ。それより軽い」
「スパイダーシルクが売り物だな。仕舞っておく」
回収して《インベントリー》に入れた。
この強さなら、連戦しても平気な相手だ。
「近くに何かいる」
奥に進む先に、ひょこっと顔を出したのはカボチャの顔だった。
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