55◆カバン妖精たち・その2
「最近迷宮で戦闘ばかりしてるのよ」
「それが冒険者の仕事でしょ?」
「いつ見つけてくれるかしら!」
「ドキドキするわね」
「「「ネー!」」」
「簡単じゃないもの!でもその方が盛り上がるわよね」
「「「ネ!」」」
「でもそれって、魔物とたくさん戦って危ないんじゃない?」
「その方が嬉しいって、前の冒険者は言ってたな。懐も潤うし、街の売り上げも上がるんだって」
「「「へー」」」
「大きい街になるなら、いい職人も来るわね」
「そうしたらいい革細工もできるね!」
「素敵なカバン!素敵なバッグ!」
「「「~ウットリ~」」」
「何よ、前には職人製のは嫌だって言ってたじゃない!」
「そんなことないわよ。いいものはいいのよ!」
「どうしても、今いる所と比べちゃうのよ!」
「まあね!ただの背嚢なんかよりずっといいものだわ!」
――グサッ!
二人のカバン妖精の心に突き刺さる言葉だった。
「見てなさいよ!今に素敵な○○《候補》捕まえて素敵なカバンに入るんだから!」
「ワタシもよ!上質な素材のカバンに潜り込むわ!あなたたちなんか頼まれたって入れて上げないんだから!」
「「「ぶぅーっ!」」」
「それで予言の話はしたのかしら?」
「何の話?」
「《予言》よ。よ・げ・ん!」
「タイニーパンはタイニーチャイミーみたいに全然人の話を聞かないんだから!」
「聞いてるわよ。他の事も考えてるけど」
「むむむ。人が心配してあげてるのにっ!」
「そうよ!そうよ!ちょっと上質なカバンにいるからってズルイわ!」
「意地悪する気はないわよ。荒れ地に来ればいいわ」
「「遠い!」」
「疲れたからワタシ寝るわね」
「あ、もうちょっと待って。彼の話がまだ」
「そうよ他の《候補》の話だって聞きたいのに!」
「今日は集まりも悪いし解さーん!」
「「ああっ」」
全員がめいめいのカバンに消えてしばらく。
小さな光とともに鐘の音が響いた。
「あれれ?いま来まちたよ?」
「遠いと遅くなるなあ」
「誰もいないねぇ。帰ろっと」
再び鐘の音が小さく響いた。
導女フラバスのカバンの中から光が漏れていたが、ぐっすり眠る彼女は気が付かないのであった。
「他の《候補》だって素敵なカバンを持ってるかもしれないし、まだ教えなくてもいいわよね。そうよね」
パンっと叩く音が小さくして、カバンの明かりは消えた。
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