53◆ワルケリアナの日課
解散して屋敷に戻ってきたワルケリアナ。
中庭で魔術の練習をしていた。
十字の木組みが直線状に三本立っていて、ワルケリアナからだと一本の陰になる。
「《雷矢》!」
音を立てて雷の矢が手前の的に突き刺さると、衝撃が後の木組みにも抜けていった。後ろの木組みも衝撃で揺れている。
姿勢を変え、歩きながら続ける。
「《雷矢》《氷結》《雷矢》!」
「ふーっ!」
一番使っている魔術を繰り返す。
「全部に当てることなんて、あるのかしら?」
続けて中央の十字に狙いを変えて打ち込む。
今度は当ててはいけない練習だ。
「《雷矢》《双炎矢》!《雷矢》!」
やはり当たった木組みから衝撃が後に抜けていくが、今度は手前はもちろん、後ろの木組みにも当たらなかった。
「《雷矢》《双氷結》!《雷矢》!」
丁寧な動きで、角度を変えて魔術を撃ち続ける。
「ふう。さっぱりした!」
「ガラアックにもミキュラにも当てられないし。最近はラベトリオも増えたから、的も増やしてもらおうかしら?」
ふと考えるワルケリアナ。
盾を構え攻撃を受けるガラアック。魔物の後ろを陣取り風のごとく斬りつけるミキュラ。二人とも大切な仲間だ。
ラベトリオと導女フラバスがそこに加わった。新しい二人も同じように大切な仲間になっていくといいなと思う。
そんな仲間達のことを自分の魔術で傷つけるなどあってはならないことなのだった。
「お嬢様そろそろお休みください」
召使が顔をのぞかせた。
「いいのよ。これが仕事なんだから。でもあなた達が眠れなかったわね!ここまでにしましょ!」
「ありがとうございます」
「さあ、おやつにしましょ!一緒にあなたも食べるでしょ!」
「はい。ご相伴に与らせていただきますとも」
「良いお茶の葉が南方より届いてますよ」
「迷宮産?イワバランドかしら?」
「はい。香り高いものと聞いております」
「じゃあそれを頂くわ!」
「今度風の迷宮産の魔鹿の肉を持ってくるわね!あなたたちにも食べさせてあげる!」
「はい。楽しみにお待ち申し上げております」
「うふふ!」
放っておくと皆が眠れなくなるので声をかけるのだが、その役目は持ち回りとなっている。
主人の気まぐれで時間が変わるため遅くまでかかることもあるが、役得もある。
その日の迷宮探索のおしゃべりを聞くのが楽しみな使用人は少なくないのだ。
そのため、持ち回りなのは人気があるからなのであった。
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