52◆四階の魔兎
導術を修正しました。
連日中級の風の迷宮に潜っている。
「《聖導の祝福》」
今日の目的は楽だという四階の魔兎だ。それ次第では今後の動きにも関わってくる。
狩場の候補としては荒れ地にも他の迷宮があるし、迷宮じゃなくてもこの間の調査に行った森もよさそうな場所だ。
魔兎が魔鹿やトレントより旨味のある獲物であることを確認しておきたい。
一階は簡単に歩いて抜けた。デカイネズミが今日は少ない。
二階のトレントももう同時に来ても対応できるだろう手応えだ。
「避けられない」
「わかった。やろう」
「「「はい」」」
「《聖導の守り》!《聖導の盾》!」
「フン!」
盾で幹を殴りつける。下のトレントに比べたら細い幹だ。
相手の動きに合わせて突き返しを入れた。
足元をうかがいながら余裕がある。
「セイッ!」
隙があったので連撃を決める。右、右、右と綺麗に入った。
ラベトリオが余裕のある動きで連撃を決めた。
「チェア!、ソイ!、チェア!、ソイ!」
右に左にと体を振って読ませない動きだが、トレントとは別の何かと戦っているようにも思える。
「エイエイ、エイエイ!」
ミキュラの連撃も外れることなく当たる。
風の付与が発動しているか早すぎて確認できなかった。
ジルベルトは周囲の警戒を続けている。
「《雷矢》!《氷結》!」
雷の矢が幹に突き刺さると電撃が走った。のけぞるトレント。
そのまま氷魔術の冷気がまとわりついて遅くなる。
その隙に連撃を叩き込む。
右、右、右と三連撃を入れて、盾でしかめた顔を浮かべる幹を殴りつける。
ラベトリオが連撃を途中で止めた。
「チェア!、ソイ!」
トレントが動かなくなって、迷宮に吸収され始めていた。
魔石と木材がドロップしている。
《インベントリー》に回収した。
「ふう」
「安定してますね」
「導女のおかげだ」
「そういっていただけると励みになります」
戦闘は続いたが、以前より速いペースで倒せるようになっている。
どんどん進んだ。
この階のボスがどこにいるのかは未確認だ。森の中に生えているかもしれない。
階段の小部屋から三階へ下りる。
凶悪な魔鹿と強いトレントを避けつつ進むのは、ミキュラの腕の見せ所だった。
「いけそう。意外と隙間が大きい」
「そうか、なら頼む」
「よろしくお願いします」
「ミキュラの先導とジルのおかげで安心ね!」
「ハフ!」
「ボスが近いってことはないよな?」
「ん、いないと思う」
「こっちが階段の小部屋ですね」
「入りましょ!」
「一休みしてお茶にしよう」
「そうね!」「「「はい」」」
持ってきた軽食をつまみながら湯を沸かしてお茶を入れた。
緊張していたからだろう、そこまで疲れていなかったが元気が出てきた。
四階へ下りた。
同じような森林の風景が広がっている。さらに強くなった魔物がいると考えると、無理な動きはできない。
早く慣れてかわしていけるようにならないと狩場として定番に持っていけない。
「強いのがいる」
「それはトレントか?トレントならダメだ」
「たぶんそう。じゃ避けてこっち」
「この階のトレントなら、もっと強くなってるはずだ」
「ん、見つけた」
森の中に穴を掘っていた。その入り口の前に人の大きさぐらいの兎がいた。
ひくひくと鼻を動かして匂いをかいでいる。
「でかいな」「ああ」「大きいわね!」
「やるぞ」「おう」「「「はい」」」「ハウ!」
「《聖導の守り》!《聖導の盾》!」
「《聖導の鎧》!」
――ヒュッ!ヒュッ!
二人で二本ずつ当てた。すぐに魔兎が飛び込んで跳び蹴りしてきた。
「ピスピスピス!」
慌てて盾で受け止める。
「フン!」
盾ごといいのをもらった。
――パリーン!
光の盾が砕けて衝撃を和らげてくれる。
さらに一撃!
――ガン!
強烈な衝撃で、クラクラする。魔鹿に比べられるのは肉だけではないようだ。
突き返しを入れたあと、さらに反撃しようとしたが機会はなかった。
「《聖導の盾》!《聖導の癒し》!」
柔らかく体力が回復していく。ありがたい。
「チェア!ソイ!ソイ!」
ラベトリオの連撃が入った。だが楽にはいかないようだ。
「エイエイ、エイエイ!」
ミキュラの切りつけがきらめいた。四回の切りつけでダメージを与える。
「ハウ!」
ジルベルトの体当たりが軽く避けられた。
「《雷矢》!《氷結》!」
音を立てて跳んだ雷の矢が突き刺さる。のけぞる魔兎。
そのまま氷魔術で動きを阻害されている。
その隙に連撃を叩き込む。
「ソイヤッ!」
右、右と当てて、盾で殴りつけた。
魔物の反撃を盾でいなす。丁寧に合わせて逸らすことができた。
「チェア!ソイ!チェア!ソイ!」
ラベトリオの足さばきが変わった。四連撃目を叩き込んだ。
「エイエイ、エイエイ!」
ミキュラも負けじと両腕の短剣を叩き込んだ!
ジルベルトは体勢を立て直している。
「もう一度。《雷矢》!《氷結》!」
雷の矢が刺さるとのけぞる魔兎。毛皮に覆われた体も冷えているようだ。
「ピスピスピス!」
強引に魔物が動いて攻撃してきたのを盾で叩き落とす。
「フン!」
突き返しを入れて、連撃を入れた。
三連撃が決まると魔物がふらついたように見えた。
「チェア!ソイ!チェア!ソイ!」
ラベトリオの足さばきが見事だ。また四連撃だ。
「エイ、エイ!」
ミキュラが少し体勢を崩しつつ続けた。
「ハウッ!」
その脇からジルベルトが突進して体当たりした!
「これでいいわね。《雷矢》!《氷結》!」
のけぞる魔兎。動きにキレが無くなっている。
と思ったらもう床に倒れた。すぐに迷宮の吸収が始まる。
魔石と塊肉が残っていた。ほかにも皮が出ている。
《インベントリー》に回収する。
「よおおおし!」
「やったわね!」「ん!倒せた」
「こちらの方が相性が良さそうですね」
「頑張ってみました」
「さすがの動きだった。ラベトリオ」
「まあ、これくらいはしますよ」
「とても、参考になる」
「巧みな動きだったわ!」
「正直まだいけるけど、帰った方がいいだろうな」
「そうしますか」
「そうね!できるってわかったから通い方に慣れましょ!」
「ミキュラ頼む」
「ん、わかった。練習もかねて動いてみる」
その後は三階を隠れつつ避ける動きで時間を費やした。
一度も魔物に当たらなかったのは他の冒険者が戦っていたからというのもあるが、ミキュラの探知の凄さを物語っている。
こちらも合わせて動くのに大分慣れた。みんなの安全に直結する大切なことだ。
◆◇
三、四階にだいぶ慣れた気がする一日だった。
これ以上奥へ進むと小部屋で仮眠をとることを考えて動く必要が出てくるだろう。
時間をかけて遭遇を避けて迷宮を上がって出てきた。
素材の買取と清算も済み、酒場で果実水を飲んで一息ついた後解散した。
「疲れた」
「ゆっくり休んでくれ」
「ガラアックもよく休む」
「ああ、そうするよ」
「おやすみ!」
「「「「オヤスミナサイ!」」」」
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