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31◆未発見のはぐれといつもの迷宮

「ギシャシャシャ」

トカゲは洞窟から出て来て満足していた。

穴倉の中よりも森のほうが肌に合っていると感じていた。

魔力は弱いがそれも珍しく心地よい。

ライバルの多い迷宮の中よりも、こちらのほうが自由にふるまえるとわかっていた。

何かに誘われるように鼻を向けると獲物を求めてそちらへ向かい出す。


未発見の上級迷宮からのはぐれは珍しいことではないが、この地域では稀なことであった。


森の中で魔物たちが騒ぎ始める。強い魔物も上位個体が現れたことに敏感に気が付いていた。

しばらく森の中が落ち着くことはないだろう。


◆◇


中級の風の迷宮に来ていた。

一階は慣れてきたので安定して通り抜けることができた。

すれ違った冒険者たちもボスの匂いはしていなかったと、ミキュラがいう。

「どっかにいるか、倒されたまま。きっと隠れてる」

「なら先に進もう」

「そうね!」


二階でトレントと対峙する。

イメージは訓練場の戦士の動きだ。

自分流に変わっているが、だんだん動きが自然につながるようになってきた。


「フン!」

盾で体当たりする。と同時に根っこの警戒をする。予兆はない。

打ち寄せてくる枝を盾で受ける。

「でぁ!」

渾身の力が必要だが、わずかに余裕も出てきた。

すぐに突き返して、追撃も入れる。枝も幹と同じく攻撃が効いてる感触がある。

うまくすると次からの攻撃が格段に弱まる。


「《雷矢》!」

音を立てて雷の矢がトレントの幹に突き刺さる。トレントがのけぞって、一瞬動きを止める。

「エイエイ、エイ!」

ミキュラの三連撃が綺麗に決まる。

こちらも盾で幹を殴りつけて、右を三回入れた。自分でも驚くぐらい素早く出来たので、相手を見る余裕がある。もう一撃入れればよかった。

――ザワザワ!ガン!

茂った枝の払いを腰を落として受ける。

「フン!」

力比べになった。分が悪いのは承知だが、狙いがオレなら文句はない。そのままを維持する。血が頭に上る。


「エイエイ、エイ!」

「《双炎矢》!」


ぎりぎりと歯を食いしばる。

「エイエイ!」

「《氷結》!もどかしいわ」


盾にかかる力が弱くなるのを見逃さなかった。押し返して突きを見舞う。

「テイヤッ!」

続けて右の連撃を入れる。右、右と当てて様子を一瞬見る。

裏でミキュラも斬りつけている。

「エイエイ!」

隙があった。右、右ともう一度連撃を叩き込む。

警戒して防御体勢に入った時にはトレントの動きは止まっていた。

静かに迷宮に吸収され始める。魔石が出てきた。

ドロップはロッドだった。《癒し手》が持つ物だろうか?

ワルケリアナが首を横に振るので、《インベントリー》に納まった。


ポーションを飲んでおく。

力比べでかなり消耗して両腕に重みを感じているのが軽くなる。


「さあ、次だ」

「うん」「ええ!」


続けて連戦をこなした後、ミキュラが階段の小部屋にたどり着いたといった。

「階段の部屋に来た」

「じゃあ休もうか」

「ん。わかった」

「ちょうどいいわね。食事も取りましょ」


先客がいた。一パーティの五人組だ。

「《マードの爪》よ。よろしく!」

「《南風戦旗》のミリャオンだ。よろしく」


「おお、追いついてきたか」

「知り合い?」

「そう。酒場で話したことがあるんだ」

「やあ、そうなった。でもミリャオン達の狩場はもっと下だろう?」

「いやすぐ下だ。魔兎だけだと飽きるし勘が鈍るんでな。手強いが魔鹿でも稼いでるのさ」

「そうなのか。魔鹿にも手強いのがいるんだな」

「お前たちだってなかなかじゃないか。三人でここまで来るなんてな」

「仲間が優秀なんだよ」

「そうね!」「ん」


「レンジャーのガーベク。猟師のスニーフニット。《癒し手》のマルシクラヌ」

「それに戦士兼荷物持ちのアンピドーだ」

最後はクロスボウを持った大男だった。

「うちも仲間が優秀でな。それでも苦労はする」

「だなあ」

「トレントも強くなるからな」


「強くなるのか?」

「ああ。経験したことがないのか。上の階層で出ていた魔物が下でも出るときには強くなって出てくるぞ。注意するといい。ほぼ別物だ」

「始めのうちはな」

「まあ、慣れるわね」

「そういうことだ」


「ありがとう。いいことを聞いたよ」

「いいってことさ。また酒場で話そう」

「じゃあな」

「ああ、また」


休憩だったのだろう《南風戦旗》のメンバーが下へ降りていった。

下の階の魔物はどれくらいの強化がされた魔物なのか興味がわいた。

それは全員そうだったらしい。


「どうする?」

「見ていくでしょ!」

「ん。油断しないで逃げる」

「だよなあ」





楽しんでいただけたら幸いです。

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