23◆中級:風の迷宮・二階
昨日の通り進んで絡まれたのは一体だけ。魔狼だ。
「意外と鼻がいい」
ミキュラが感想を言った。
迷宮に入ってからは絡まれまくった。
これは仕方ないらしい。
「倒し続けるしかない」
「わかったわ!」
「フン!」
盾で弾き飛ばした後も、別の一体に一撃を入れる。
合計三体に絡まれている。
「ヂュジジジ!」
ミキュラと同じ敵をやる。その方が早く倒せる。
だが攻撃され続けていて思うように手が出ない。
頼みの綱はワルケリアナの魔術だ。
「《氷結》《氷矢》!」
集中していた1体が倒れた。
――ガシュ!
痛い!やられた。
噛みつかれた脚についているデカイネズミを蹴り飛ばす。
「ヂュジジ」
もう一体が顔に飛びついてきたのは盾で叩き落とした。
「エイエイ、エイッ!」
ミキュラの三連撃が綺麗に決まり、デカイネズミは倒れた。
残りの一体に突き刺す元気がなかった。
盾を構えてカウンターを狙う。
「《氷結》!」
「エイッ!」
二人の攻撃が当たり、デカイネズミは静かになった。
「結構痛いな。貫通した」
ポーションを振りかけて残りは飲み下す。
そこまで悪い味じゃないが飲みすぎると腹に溜まる。
すぐに痛みが引いていく。頼もしい。
「戦いにくいわね」
「ん。今のは不可抗力。耐えるしかない」
「次があったら別の魔術を試すわ。まとめて吹き飛ばしてやるんだから!」
「頼むぜ。集られると弱いみたいだ」
「弱気なこと言わない!」
「あいよ。もういいぞ」
「わかった。進む」
その後もちょくちょく絡まれたが、単体だったので苦労はしなかった。
ミキュラ曰く「多すぎ」だそうだ。
階段の小部屋まで来た。一休みする。
食事も携帯食料で済ませる。ちょうどいい時間だ。
「もっといい鎧が必要。金属にするべき」
「そうだなあ。でも重いと動きがな」
「こっちでフォローするのは難しいから優先」
「そうね!大切なことだわ」
「ガラアックが耐えられなかったら、私たちには耐えられるわけないもの!」
「わかった。一応考えてはいたけどいいのがあったら早めに変えていくよ」
「ん。そうすべき」
◆◇
二階に下りた。草原の風景は似ているが木々が増えている。
木立もあるようだ。
「ちょっと強いかも」
「どれだ?」
「近くにいるはずなのにわからない」
「ん?」
「魔物の話も聞いて来ればよかったな」
「ああ、たぶんトレントね。ワタシの方では話に出ていたわ。見分けがつかないって」
「木に擬態する魔物よ。弓で撃つか魔術を撃つかすればいいかしら」
「見えてる木々全部がそうだと戦えないな」
「その時は逃げましょ」
「なんとなくわかってきたかも」
「そ、そうか?それならいいんだが…」
「あれ」
そういって指さしてからミキュラが弓を放つ。耳がピンと立って気を張っている。
綺麗な線で矢が弧を描いて当たった。すると木の根が地面を突き破って飛び出し、走り始めた。もちろんこちらへだ。
「《雷矢》!」
音を立ててジバジバと放電する矢が飛んでいき直撃した。かなりのダメージと思うが構わず突進してくる。
――ゴゴゴゴゴ
「フン!」――ゴッ!
留められるとは思っていないが、標的をこちらに固定するための受け止めだ。
いがいと当たりは柔らかかった。
すぐにしならせた枝の攻撃が襲ってきた。
「はっ!」
強烈な衝撃で、目がくらむ。それでも耐えられた。
連続してくる攻撃が、反対側になるのが難点だ。
「エイエイ!」
ミキュラの連撃が入り放題に決まる。
「《双炎矢》!」
二筋の矢が飛んでトレントの一部を燃やす。
右、右、右と枝を攻撃しつつ、幹にも当てる。
邪魔はない。ゆったりとした動きの枝の先がこちらを捉えていなければ、意外と自由になる時間があることが分かった。
「エイエイ、エイ!」
枝の攻撃を盾で防ぐ。お返しに斬りつけようとしてバランスを崩す。
足元から根が進んできていた。
「うぁ!」
転んだところに叩きつけを食らった。
「ぐっはぁ!」
「「ガラアック!」」
転がりながら追撃はかわす。
一瞬姿を消したミキュラが再び現れたのは別の場所だった。
「エエイ!」
完全にトレントの裏を取った斬りつけが幹に突き刺さる。
トレントの攻撃がミキュラに向かい始める。
起きがって派手にロングソードを叩きつけた。
「てぃや!」
続けて右、右。それでもまだこちらに向かない。
「《双炎矢》!」
再び二筋の炎の矢がトレントを燃やす。
苦しみだすトレント。
ミキュラがスッとトレントから離れた。
その間に盾で太い幹を殴りつける。
そこに顔が浮かんでいるのを見つけてゾッとした。
剣を突き立てて押し通す。
暴れていたトレントの動きが止まった。
すぐに迷宮に吸収され始める。
ドロップ品は杖だ。魔石が転がっている。
「早めに上に戻って休もう」
「そうね!作戦会議しましょう」
「うむり。それがいい」
戦闘を避けてすぐ近くの階段部屋に退避する。
ここならまず魔物は入ってこない。
休憩時間だ。ポーションを飲んで腰を落とす。
「やられたな…」
「やられたわね!」
「ん。危なかった」
楽しんでいただけたら幸いです。




