01◆難敵と撤退
二人は迷宮の二階の階段で思案していた。
三階ではどれぐらい魔物が強力になるかわからなかったからだ。
「行ってみるしかないけど、撤退も考えておいてね」
「了解」
三階ではすぐに魔物と遭遇した。
オオコウモリだ。
「《氷矢》!」
「あたらないわね。《氷矢》!」
素早く飛び回って、攻撃が当たらない。
素早い羽ばたきで翻弄されたガラアックの顔を爪が引き裂いた。
「ぐあああ!」
剣を振り回しても余裕でかわされているようだ。当たらない。
じりじりと後退している間にもう1匹飛んできて、あたりを飛び回り始めた。
「下がろう!無理だ」
「悔しいけど、そのほうがよさそうね!」
「走るぞ!」
「わかったわ!」
引き離して階段を上る。
小部屋で傷の手当てをした。
「このロングソードだとちょっと重いな」
「私の魔術も当たらなかったわ」
「今日は二階で終わろうか」
「そうね」
酒場で果実水を飲み干す二人。
「もう一人入れたいな」
「同じようなランクの人がいればいいわね」
辺りにはすでにパーティの出来上がったベテランの姿しかない。
「魔術の種類を増やしてくるわ。使わないと思って取ってなかったのがあるの」
「頼む」
「振りの早い武器に切り替えるのも手かもしれない」
「お金足りるのかしら?」
「足りないから稼ぐしかないな。しばらくは二階で狩ろう」
「そう」
魔術師ギルドに向かうワルケリアナと別れて武器屋をのぞく。
ギルドの併設の購買でもよかったが、中古の武器を探したかった。
「短剣の中古はないか?」
「中古の短剣なんて止めておけ。すぐにガタが来るぞ」
「新品には手が届かないな」
「ふむ。壊れた奴でも、古い装備でも金属ならまとめて持って来れば交換してやってもいいぞ。素材が不足気味でな。新しい迷宮で、人が増えてるんだ」
「わかった、探してみるが…すぐに使いたいんだ。振りが早いのだとどれになる?」
「予算が足りないならつなぎで戦闘棒でもいいんじゃないか?意外と使いまわしはいいぞ」
「これなら買えるな…。一本もらおう」
「毎度あり。さっきの話も覚えとくといい」
「ああ、ありがとな」