18◆護衛の達成条件
五階に下りた。
スケルトンナイトには慣れたとはいえ油断できる相手ではない。
最短距離で監視所まで向かうことにする。戦闘回数は少ない方がいい。
「監視所まで行けば、監視の冒険者が案内してくれるから安心だ」
「そうなんですね」
「凄腕が守ってるから見れるといいな」
「あれはスゴイ。幸運だと見れる」
「ほぉー」
「一体来る」
「おう」
戻ってくるミキュラの後ろからカタカタと音を立てて白い骨が動いてきた。
剣と盾、鎧も身に着けている。当たりといえるが今回は護衛だから外れだ。
「落ち着いて行こう」
「「「はい」」」
槍は戦いの感じが変わるからしばらく封印だな。
「《雷矢》!」
強力な雷魔術が突き刺さった。かなり効いているように見える。
「フン!」
盾で突進を受け止めた。体が浮きそうになるのをこらえる。
そのままロングソードで突き返す。
「ヤァ!」
ダイアドアラントも剣で斬りつける。いいタイミングだ。
スケルトンナイトの硬直が、ぎくしゃくと全身に伝わる。
「カタカタカタ」
「エイエイ、エイ!」
ミキュラの三連撃が続く。
「《氷結》!」
ワルケリアナの氷魔術でスケルトンの動きが遅くなった。
盾で殴りつける。
相手の剣を持った小手を狙うが、簡単には捕まえられなかった。
力任せに叩きつけるが、盾に防がれた。
「エイエイ!」
「ヤァッ!」
ミキュラの連撃と、ダイアドアラントの一撃が決まる。
安心して剣を振るっているようで、思い切りがいい。
どこかグリーブスの動きにも似た感じがある。
「フン」
ぎこちない相手の剣を受けて押し返す。狙われるようにしているから自由にはできない。
返す剣は盾に防がれた。
「エエイッ!」
ミキュラの気合の入った一閃が後ろから魔物を切り裂いた。
スケルトンナイトの剣の切っ先がこっちを向いていた。盾で弾く。
右、右、右と三連打する。当たり、盾、盾で防がれた。
「ヤァ!」
脇からのダイアドアラントの攻撃が当たる。
すかさず追撃を入れた。
崩れ落ちるスケルトンナイト。
床に鎧と魔石が転がった。
「よしっ!」
「いつもより早いね」
「ダイアドアラントのおかげだな」
「はいっ。ありがとうございます」
「次は?」
「しばらく平気そう。進む」
「よし。監視所を目指そう」
「ん」
次の一戦も問題なく倒せた。
一戦ごとにダイアドアラントの枷が外れるように生き生きと動き始めた。
するとそのタイミングで全員の動きに波ができるようで戦い易かった。
監視所まで連戦したが苦戦はしなかった。
「今日も着たか」
「はい、よろしくお願いします。あと護衛任務なので休憩前に守護者まで行ってもいいですか?」
「おお、あの件な。来てるのはどこの戦士だ?」
「ワタシがグレイ氏族の代表、ダイアドアラント・グレイです」
「わかった。出よう。依頼は守護者までだったな?」
「はい。あれ?ということはここまでなのか?」
「そういうことになるな」
「じゃ、行くぞ」
「オレ達はここの階の監視をしてるグリーブスとアームスだ。よろしくな」
「よろしくお願いします」
「いたら蹴散らしてくか」
「「「「はい」」」」(ワクワク)
――バーン!
「うわぁ」
スケルトンナイトが木っ端みじんにバラバラになるのをまた見た。
やっぱり自由に動いてるように見える。
ダイアドアラントも目を白黒させていたが、どことなく緊張感も感じた。
プレッシャーからはもう解放されていいんだが。
「あれが守護者だ。そこまで強くないがまだ止めといた方が良さそうだな」
「でしょうね」
「大きなサソリ。その奥に迷宮の核があるんですね…」
「そういうことだ」
いつもと同じように白と灰が混じったような色合いの巨大なサソリがそこにいた。
迷宮の核が呼び出す強力な魔物だ。
とはいえ倒せないわけじゃない。迷宮を守るために人が護衛を出すほどだ。
難関といわれる巨大な迷宮ほどの強敵ではないのだ。
「分かってるわ!でも必ず倒すわよ!」
「勇ましいな。クリームのお嬢様は」
「で、お前たちの護衛は完了した。ギルドの登録証に記録したぞ」
「ここまでですね。護衛ありがとうございました」
「ありがとう。でも帰りはどうするんだ?」
「ほら、あれだ」
離れて後ろから来ていた家来組が迎えに来ていた。実力的には余裕の人たちなのだろう、気構えが散歩の延長のようだ。
「楽をさせてもらった。また会うことがあったらよろしくな」
「はいっ!ご親切にありがとうございました」
「またね。こんど氏族会であったら話しましょう!」
「はいクリームの方と知り合う機会が出来て嬉しかったです」
「ん、次はもっと強いところに行こう」
「はい。ミキュラさんもお元気で!」
家来組に囲まれるようにしてダイアドアラントは去っていった。
「オレ達は休憩させてもらおう」
「おう。茶ぐらいなら出してやるぞ」
「ごちそうになるわ!おやつも持ってきたし!二人の分もあるわよ」
「そりゃいい」
「携帯食だけで飽きてるからなあ。ごちそうになりますか」
楽しんでいただけたら幸いです。