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15◆槍を試してみる・その2

四階で森の中を移動していると、ミキュラが魔物の気配を見つけ出した。

「こっち」

「おう」

「わかったわ」


距離が近かったので、ミキュラの投げナイフが戦闘開始の合図になった。

こちらも槍で先制攻撃に参加する。


一撃が強力に決まった。

――ガシッ!

二体同時に貫く形で突きがかすめた。

すぐさま迎撃態勢に入ろうとするシャドウゴブリンの二体だったがそうはいかなかった。


「《雷矢》!」

ワルケリアナの雷魔術が二体を捉えて痺れさせたまま倒した。

どれもが戦闘時間の短縮につながる連携だった。

「旨く行ったな」

「そうね!でももったいないかもしれないわ」

「調節は任せる。撃ちすぎて疲れるくらいなら休むか帰るかしよう」

「ん、それがいい」

「わかったわ!」


その後の戦闘でも槍を交えた戦闘でも十分に戦うことができた。

剣と比べて相手を選ぶのは確実だが。


五階へ降りる階段へついて小休止する。

そこまで疲れてはいないが気分的に区切りをつけるためだ。


「いいかい?」

「いいわよ!」

「ん」

「槍は隙が無い限り止めておくよ」

「新しい魔術は積極的に使うわ!」

「こっちも隙があれば新しい動きを試す予定」

「よし、行こう」


◆◇


槍を使って五階で戦闘するのには防御に不安があった。

なので今回はパスだ。もう少し熟練したらいいかもしれないが。


「一体来てる。待ち構えてやれる」

「わかった」

「見えたわ。《雷矢》!」

スケルトンナイトの動きが衝撃でおかしく痙攣する。

「カタカタカタ」

隙を見せている合間に槍で一撃入れた。

そのまま勢いを殺さずに槍を返してもう一撃。

ミキュラが回り込まずに切りつけた。

「エイエイ!」

綺麗にスケルトンナイトの鎧の隙間に切りつけている。


「動き出すぞ!」

盾に持ち替えて殴りつける。きれいに当たった。

「カタカタカタ」

態勢を崩しつつ、切りつけてくるのをかわす。

ロングソードで相手の手首を狙って斬りつける。

狙いが浅かったか外された。


「《氷矢》!」

綺麗にワルケリアナの魔術が当たって氷づかせる。

スケルトンナイトの動きが鈍った。

その間にミキュラが裏に回り込んでいた。

「エイエイ、エイ!」

三連撃が綺麗に当たる。それとほぼ同時に、盾で殴りつける。

続けて、右、右、右の三連打を繰り出すが、当たったり外れたりした。

少し荒い戦いになりつつある。反省だ。

腰を落として相手の動きをよく見る。

出始めを感じ取って盾でいなす。剣が滑って嫌な音を立てる。

――ギャッ!

「エイエイ!」

「《火炎》!」


ミキュラの連撃と、ワルケリアナの火炎が同時に当たった。

それが魔物の体力を奪い取った。ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。

魔石が残る。


「ふいー。楽にはならないか」

「そうね、油断できない相手だわ!」

「でも安定してる。ガラアックのおかげ」

「そういってもらえると、うれしい」

「進めるか?」

「「うん」」


連続して戦うことにはなったが、同時ではないのが救いだ。

ミキュラの探知は見事だ。


数戦繰り返して小部屋を見つけた。

壁に開いたのぞき窓から見られているのがわかる。人の視線だった。


「おおい、誰だ?」

「冒険者か」

「休むなら入れてやってもいいぞ」


「パーティ名《マードの爪》の冒険者だ。いいよな?休ませてもらおう」

「「もちろん」」


「正直疲れてたし助かった」

「《マードの爪》ね。オレ達も退屈していてな。話し相手が欲しかったんだ」


「ここの階と核の監視をしてるグリーブスとアームスだ。よろしくな」

金属鎧の格好も勇ましい領主の雇った迷宮の護衛だった。

二人組だが、一人でもオレ達を相手に余裕で立ち回りそうな雰囲気を持っている。動きに余裕を感じた。


「氏族長の命令で雇われたのがオレ達ってわけさ」

「指示が出てても間違えて迷宮の核を倒す冒険者がいないとも限らないからな」

「なるほど」

「そこまではっきりといわれたことはないぞ?」

「さては告知の掲示を読んでないな?」

「ぐっ。そっちはワルケリアナに任せてるからな」


「まあまあ。これでホントだってわかったじゃない。《守護者》っていうボスは別にいるのよね?」

「いるぞ、大した強さじゃないが、核のある場所を守ってるな」


「お前たちだとまだ挑むのははやいんじゃないかな?」

「む、それはホントウ?」

「勧めはしないな。ただの勘だが」

「むう」

「ここまで来るのに結構疲労してるからな。しばらくは無理だろう」

「あら、諦めがよすぎよ!」

「もうちょっとここのスケルトンナイトを楽に倒せるようになってからでもいいと思うんだ」

「…そうね、わかったわ。でも姿だけは見て帰りましょ」

「ああ、それは賛成だ」

「うむり」


「じゃあ、ここを出てついてくるといい」

「案内してくれるのか?」

「まあ、仕事なんでな」

「助かる」


途中でスケルトンナイトに絡まれたが一撃で倒していた。

あのスケルトンナイトをだ。

これにはワルケリアナもミキュラも黙った。

比べられているのはもちろんオレだ。


スイって違づいて、バーンっと骨が飛び散った。

有無を言わさぬ一撃だった。


「あれだ」

遠目に確認できた。

虫のような体に大きな針。巨大なサソリの魔物だった。

両方の爪に房がついていてモサモサしていた。

なにかの特殊な力を使うのかもしれない。

「「「ゴクリ」」」


「実力的に感じ取れるなにかがあるなら、いい線行くかもしれないが」

「やるか?見ててやるぞ」

首を振る三人だった。


小部屋に戻ると休憩がてら雑談が続いた。


「オレ達だな」

「まあ、見たら倒してるからな」

階層のボスを倒して歩くと迷宮の成長が促進されるらしい。育てて産業にしたい氏族長との契約で、内容に含まれているのだそうだ。

氏族長は実質領主みたいなものらしいし、酒場の噂も馬鹿にできないな。

「他にも交代で入ってるがそいつらはどうしてるか知らんな」

「逃してたらいるんじゃないか?」


「今の状態だとほぼ誰も狩れないんだ」


「ああ、じゃあ間引く程度にしておくか」

「そうだな。新人迷宮にしては中身がなさすぎるからな」


「うちらも階のボスに挑戦できるとやる気が出る」

「いいことだ」


そろそろ引き返すことにした。時間が結構かかるから、疲れも馬鹿にできない。

監視の二人は泊まり込みらしい。


「じゃあな」

「親切にしてくれてありがとう」

「また近いうちにくるわ!」

「ここは休憩所に使えるからな。そのつもりで飛ばしてくるのもいいぞ」

「そういうことだ」


グリーブスの動きが目にチラついていた。

あんな動きをしてたら、剣が何本折れるかわからないぞ。

槍を交えて叩くのに慣れてきた帰り道だった。

特に各階のボスもいることもなく、魔物を倒して三人は帰ってきた。





楽しんでいただけたら幸いです。

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