12◆五階での戦闘・後編
魔術名修正。
戦闘が続いた。
複数同時戦闘にはならないでいるが、ぎりぎりの場面もあるぐらいの連続だ。
「集中する」
「すまん。少し考え事してた」
「《氷結》!《氷矢》!」
「ふん!」
ロングソードをやや乱暴に叩きつける。
狙いは相手の手首だ。ここを攻撃すると相手の攻撃にマイナスの効果が出ることが分かった。目に見えてぎこちなくなるので効果がはっきりしている。
今回もうまくいった。
「エイッ!」
後方からのミキュラの斬りつけは安定して強力だ。
斬りつけられたスケルトンナイトがきしむ音をたててのけぞる。
「カタカタカタ」
「《火炎》!《炎矢》!」
燃え上がるスケルトンナイト。ワルケリアナが呪文を盛ったらしい。
連戦でいろいろ試したくなるのはわかる。
盾で攻撃を受ける。
力比べに持ち込むのは、向こうのスケルトンが避けた。
鎧の着ていないスケルトンナイトもいれば、戦闘の上手なスケルトンナイトもいる。
綺麗にミキュラの攻撃を避けたのは、驚きだった。
すぐに盾で殴りつけて状態を固めて事なきを得たが、ソロだとあれは致命的な隙になっただろう。
本人曰く、「たまにある」だそうだが、見ているこっちもヒヤッとした。
「フン!」
相手の一撃を盾で受け止める。そのまま押し付けるがまたも力比べは避けられた。
受けた腕が痺れている。こらえられないわけではないがイラつく。
右で返す。強めに叩きつける。盾で殴りつける。相手の剣を剣で受ける。
危ない軌道だった。ヒヤリとする。
「エイ!」
ミキュラが裏から横から斬りつける。
相手の攻撃を封じられれば、それだけ成果が上がる。
オレが無理する必要はない。
「《氷結》!」
スケルトンナイトの動きがまた緩やかに変化する。
その隙をついて右で一撃入れた。
「エイエイ、エイッ!」
ミキュラの三連撃がきまり、スケルトンナイトの身体が崩れ落ちた。
「ドロップなし。魔石は大き目」
「ありがとう」
《インベントリー》に放り込む。重量を気にしなくていい《ギフト》はまさしく天からの贈り物だ。
「少し休みたいな」
「賛成」
「そうね!戦闘が続いたものね!」
「じゃあ、こっち。魔物の気配がない方へ行く」
「頼む」
小部屋に入ると宝箱があった。
「宝箱!」
「ミキュラ開けられるか?こっちで開けてもいいぞ」
「できる。任せて」
「じゃあ任せた」
「…罠はない。開けてよし」
――パカ!
音を立ててふたが開いた。
木箱の宝箱だが、目立つ位置にあった。迷宮産の宝といっていいだろう。
「首飾りと金貨が入ってる」
「首飾りは魔道具か?どんな効果なんだろうな」
「《鑑定》できるけどしてみていい?」
「そりゃ凄い。頼めるか」
ワルケリアナが《鑑定》持ちとはついてる。
「失敗したわ。でも何かかかってるのは確かね」
「「ありゃ」」
「そういうものらしいの。失敗して上達するギフトらしいわ!」
「じゃあ、次もどんどん鑑定していったほうがいいな」
「あら、そういえばそうね!」
「盾をしてみてくれ」
「いいわ!――ただの〈盾〉ね!」
「鎧もどうだ?」
「――ただの〈鎧〉ね!」
「これは何かわかる?」
ミキュラが耳飾りを出してきて渡した。
「むむむ、なんだか素早くなるみたいよ。〈AGI+〉ですって。あなたにピッタリじゃないかしら!」
「やっぱり。そんな気がしてた。ありがとう」
「《鑑定》もギルドだとただじゃないが…かまわないだろう?」
「うん。やらないと伸びないのを信じてるからね!」
「じゃあ、どうぞ」
《インベントリー》に入れてあった戦利品を出して《鑑定》した。
目だった特別な効果がかかったものはなかったが、シャドウゴブリンから確保した弓が〈シャドウゴブリンスカウトの弓〉で、わずかに当たりやすいことが分かった。
「…〈DEX+〉ですって!効果持ちだったなら高く売れていいはずよね?」
「そうだな。ギルドで確認してみよう」
「そうね」
軽い食事を済ませて帰ることにした。
ここまで来るのにそれなりに時間がかかっている。
「明日はお休みにしよう」
「そうね、ワタシもやりたいことがあるわ!」
「わかった。のんびりする」
「じゃあ上へ戻ろうか」
「「はい」」
連戦を繰り返すが、旨くミキュラが遭遇を調節してくれるので同時になることはなかった。
安定した戦闘で帰る三人だった。
ギルドの鑑定でお金を払って鑑定してもらった首飾りは、魔術の効果上昇の付与がかかっていた。
「ワタシが使うわね!」
「「どうぞ!」」
ワルケリアナが装備した。見た目的にも似合ってる。
装備強化したいところにできてよかった。
期待の〈シャドウゴブリンスカウトの弓〉はそこまで高くなかった。強い弓ではないことが原因らしい。そういうこともあるのかと得心する三人だった。
楽しんでいただけたら幸いです。