09◆二階のフロアボス
「二階のボスはスケルトンナイトが出るらしいぞ」
「そうなのね」
「見たことない」
「剣と盾で武装した、強いスケルトンらしい」
「いつもいないわよね?」
「倒されてるからな。でも今日はスライムのボスがいたからなー。もしかしているかも」
いました。
ボス部屋の扉が固く閉じていた。これは中身がいる状態。
「挑戦してみるか!」
「いつも通りでいいのかしら?」
「ふんす!」
「ああ、動きの邪魔をする氷系統がいいと思う。頼んだよ」
「ええ。任せなさい!」
「相手のタフさによっては長期戦になるかもしれないけどそのつもりでやろう」
「はーい」「ん。わかった」
ドアを開けて中へ入り込む。
鎧を着たスケルトンが盾と剣を構え始める。
だが警戒しているだけなのかこちらに進んでは来ない。
鎧も着てるじゃないか…。
「やるぞ!」
「エイッ!」
ミキュラと二人で弓を構えて矢を放つ。当たったが弾かれたように落ちて刺さらなかった。
さすがにスライムのようにはならないな。
「カタカタカタ!」
通常のスケルトンより足は遅めのようだ。盾を構えて待ち受ける。
ガシッ!
「フン!」
スケルトンの剣を盾で受け止める。即座にコチラも反撃で相手に切りつける。
盾を構える前に当てられたが、鎧に当たっているので効いているか微妙な手応えだ。
「エイエイ!エイ!」
後ろに回り込んだミキュラがすさまじい勢いで斬りつけた。もはや削り始めたという感じだ。
「負けてられないわね。《氷結》!」
ワルケリアナの魔術が当たって、スケルトンナイトの動きがのっそりとしたものに変わる。
「いいぞ!」
「《氷矢》!」
床と足元が凍り付いて、スケルトンナイトの動きを封じた。
右、右、右とロングソードで叩きつけるように斬りつける。相手の盾にもあたるが気にせず叩きつけた。
「エイ!」
ミキュラの斬りつける位置が微妙に変わった。鎧の隙間を狙っているようだ。
さすがだ。自分から腕がいいというだけのことはある。
――バシッ!
「フン!」
スケルトンナイトがこちらの攻撃をものともせずに反撃してきたのを受け止める。
足元が固まっているからこの程度だが、素でうけたならかなりの強撃だっただろう。
流れるように盾でそのまま押しかえす。圧力を強めて、姿勢を崩す。
「カタカタカタ」
「フッ!」
ミキュラの短剣が鎧の下のほうから斬りつける。かなりのダメージになったと思う。
だがスケルトンナイトの動きは止まらない。
――ガン!
そこへ盾で殴りつける。むこうも盾で受けたので大きな音が響いた。
なんどか盾同士の殴り合いになった。有利な姿勢をとらせないためにお互いが無理をしているのだ。
冷や汗が出てくる。
「《氷矢》!」
「エイエイ!」
隙をついて二人の攻撃が綺麗に決まる。
だが、スケルトンナイトの剣がこちらの盾の隙間を通って切りつけてきた。
「はっ!」
ぎりぎりで回避する。押し付けることにこだわり過ぎたかもしれない。
再び盾と剣での応酬が始まる。
そこへ背後からミキュラの渾身の一撃が決まった。
「エイッ!」
「ミキュラ!?」
やや強引ともいえる強撃だった。スケルトンナイトの身体が震えて崩れ落ちた。
「ふいー。危なかった」
「安定していたと思うけど」
「そうだったの?斬りつけられたように見えたから、少し焦った」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「「無事でよかった」」
「倒せたわね!」
「全員の攻撃がいい具合に当たってたな」
「ん」「そうね!」
「この分なら次もいたらやってもいいな。ちょっと焦る場面はあったけどいい手応えのあるボスだ」
「そう。五階はこれが普通に出てくるって聞いた」
「それは驚きね」
「おう、そうなのか…強くならなきゃな」
「うん」「そうね!」
「ドロップは鎧」
「今付けてるのより弱いから売り物だな」
「そう」
「盾の方が出たら欲しかったんだが」
「次に期待する」
「ああ」
「今日はこれで帰る?強敵だったけど」
「そうするか。少し気を張りすぎたかもな」
「賛成」
「ボス戦もあると余裕の感じではないわね」
「でも安定して倒せたんだ。次もいけるよ」
「「うん!」」
慣れてきたスケルトンを蹴散らし、スライムをつぶしサッサと引き上げる三人だった。ボスの魔石が二つもあり大きな黒字の稼ぎであった。
楽しんでいただけたら嬉しいです。