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【第38話】茜色に染まる空

「よぉし、これでどうにか、全員かな」


 夕方。大風の使徒の儀式場『静謐の庵』に強襲を仕掛ける作戦に参加を表明してくれたエルフの若者たち総勢20名の身体に刻まれた嵐の加護に、『ミュー・フォース』対策の『回路遮断(サーキットブレーカー)』を新たに付け足したユイナは長く息を吐いた。


 じっとりと汗をかいている彼女に、サーシャが飲み水を差し出す。


「お疲れ様ですユイナさん。加護の魔法陣へ手を加えるというから、私はてっきり刃物で直接魔法陣を壊しちゃうのかと思いました」

「そうした方が確実ではあるけど、道具と違って身体に刻んだものは中々修復できないからね。今回は魔法陣に魔力流が流れ過ぎたら、本人たちの血を使って上書きした路が壊れて詰まるようにしたから、血を洗い流せば元通りになるよ。ま、おかげで作業量が限られちゃったうえ、抵抗器の方は道具の方にしかつけられなかったけど」


 どこかやり遂げたような表情ながら、悔いを感じて力なく笑うユイナ。


 サーシャが彼女をどう励まそうかと言いあぐねていると、代わりに今しがた加護の細工が終わったエルフの青年、アダンが口を開く。


「謙遜しないでくれよユイナさん。君のおかげで僕たちでも村を守るために戦えるんだから」

「そう言ってくれるとうれしいけど、言ったようにそいつが作動したら加護は使えなくなる。過信は禁物だよ。むしろ、撤退の合図だとすら思ってくれていい」

「いやいや、何をおっしゃる。僕たちはこの日のために訓練してきたんです。加護なんかなくたって、身体が動く限りは戦いますよ」


 アダンは言うと、手にした薙刀を軽く振るって見せた。


 ウィンディアン村のエルフの青年たちは皆、小弓と薙刀もしくは槍で武装している。本来は彼らが村を守るために用意していた装備品だが長命なエルフたちは戦いがない間も日課として訓練をし続けており、冒険者も顔負けの戦闘力を持っていた。実際、レイダーラプトルの襲撃時も不意打ちかつ数で負けていたにも関わらずウィンディアン村側に犠牲者は出ていない。


 線が細く大人しくて争いを好まない印象の強いエルフたちの好戦的な態度に、ユイナも思わず苦笑いだ。


「いやはや。この村に来てからというもの、想像していたエルフ像がことごとく打ち壊されてユイナさんはびっくりしっぱなしだよ。本当に、死ぬことだけはしないでね。サーシャもその薙刀は確かに強化してあるけど、あなたの役割としては回復役兼強化役なんだから、最低限自分の身を守りつつ後方支援に徹してね」

「はい!一生懸命、皆さんのお役に立ちます!」


 ハキハキと返事をするサーシャの手に握られている薙刀は、ユイナが直々に改造を施した特殊なものだ。


 通常の薙刀と同じく長い柄の先に刃が光るが、その柄の部分にはいくつかの魔法陣と魔法発動用のオーブがはめ込まれている。いわば魔法の杖と薙刀を一体にしたもので、使える魔法の数は限られているものの両手で薙刀を振るいつつ魔導書を取り出さずに魔法が発動できる。


 ユイナが自分の作った魔法薙刀の出来栄えにウンウンと頷きつつ次なる改良点について夢想していると、(ロシュート)がカエデと共に残りの大人エルフたちを連れて来た。青年の他に、女性も数多くいるが全員手に何かしらの武器を持っている。


「ユイナ、戦えそうな人たちを集めてきたぞ。そっちは皆終わったか?」

「ちょうど今って感じ。うん、いい顔ぶれだね。もうエルフってよりアマゾネスだね」

「お前はいつも通りなのか眠くて意味わかんなくなってきてんのかどっちなんだ」

「両方ってとこ。でもここまで来るとアドレナリンドバドバで逆に目が冴えて来たよ。テスト前に徹夜で勉強して拝む朝陽と無敵感みたいな?」


 もう誰がどう見ても疲労が限界に達しつつあるユイナを本気で心配する半分、いつものあきれ半分でロシュートは肩をすくめて嘆息した。いつもは心配ばかりだから今回は妹を信じようと何度思っても、彼の性根は変わらないものなのである。


 と、武装してわいわいと盛り上がっているエルフたちを見てカエデは目を伏せた。


「ここにいる皆を危険に晒すだなんて……やはり私だけが向こうへ行って、ヴェルヴェットと短期決戦してきた方がいいと思う」

「まだそんなこと言ってんのカエデさん。そんなことしたって勝率落ちるだけだし、なにより相手はブラッドワイバーンに乗ってるんでしょ?カエデさんを恨んでいるなら、直接対決をうまくかわしてまた村の方を襲いに来る可能性だってあるしね。苦しめるために」

「確かに、その通りだが」


 いつもは理性的な判断を下すカエデがおろおろしているのを見て、ロシュートは以前妹にしかられたことを思い出した。彼女の気持ちはよくわかる。守りたいものがあるとき、自分の身を投げうってでもそれを極限まで危険から遠ざけたくなるものだ。


 ロシュートは、それではいけないと知っている。だから彼はカエデの肩に手を置いた。


「心配になる気持ちはすごくよくわかるけど、彼らの覚悟を信じられなかったらそれは拒絶と同じ。相手を拒絶しながら、同時に守るなんてことはできない。互いを信じられてこそ命を託せるんだ。だいいち、カエデさんひとりが犠牲になったら彼らはすごく悲しむし、怒ると思うぞ」

「ロシュート……」


 それでもなお迷いがありそうなカエデの緋銀色の目線に応えるように、ロシュートは笑って言った。


「あいつらがそんなに信じられないか?そんなわけないだろ。それと同じように、彼らも、俺も、カエデさんを信じているからさ」


 その言葉にカエデは目を見開き、しばし硬直したのち少しだけ微笑んだ。


「ま、アニキも私におんなじこと言われてこないだ泣いてたんだけどね」

「お前それいま言わなくてもいいじゃん!」

「妹の言葉でカッコつけてんじゃないよアニキのくせに」

「しょ、しょうがないだろ。俺もその通りだって思ったんだから」

「ぶふっ」


 ユイナとロシュートのしょーもない言い合いに思わず吹き出してしまったカエデは、兄妹の生暖かい目線を躱すようにふいっと顔を逸らした。髪の毛から突き出した長い耳の先の方が赤らんでいたために、あまり意味はなかったのだが。


 少しの間滞留したぬるい空気を振り払うように、カエデは咳ばらいをしてところで、と話を切り替えた。振り返った彼女の顔は早くもいつもの無表情に戻っている。


「ユイナ。各地に設置された魔法機の対応はどうなった。確か頼む人がいると言っていたが」

「ああ、それならもう済ませてるよ」


 ユイナはカバンから小さな板のようなものを取り出した。ロシュートの持っているスケジュール帳に似たサイズだが、木製の板の上部になにやらまっすぐ伸びた枝のようなものとその先に取りつけてある小さな赤い結晶が見える。


「ちょっとかけてみよっか」

「かける……?」

「『コール』!」


 ロシュート達が注目している中ユイナが板を持って詠唱すると、板はほんのり赤く光り点滅を始めた。そしてザザッ、と布を擦るような音がする。ロシュートには聞き覚えのある音だった。


『まだ通話実験し足りないのか小さじ脳。ボク忙しいんだけど』


 その正体をロシュートが口にする前に、トゲの中に幼さの残る声が聞こえて来た。板からフレストゥリの声がしている。ロシュートが経験したのと同じ、離れた人間と会話する魔法だ。


「こっちの準備はほとんどできたって報告。いつまでもケンカ腰じゃオトナになれないぜ、サイコ白衣さん?それより、配置とか結局どうなったよ」

『ボクの身体的成長度合いは最終的に薬品で調整するから何も心配なんかしてないって何度言ったらわかるんだトカゲ脳め。配置は最終的にボクとサーロッテがそっちで、残りが魔法機の破壊に向かう。まったく、魔法機の解析は終わったから脳筋ゴリラ令嬢やブッ飛びシスターと行動しなくて済むぶん楽じゃあるけど、なんでボクたちがキミみたいなやつの提案を呑まなきゃなんないんだよ』

「文句ならそっちのひとでなし厨二病リーダーに言ってよね。こっちだって相応のコストは払ったんだから、ぐちぐち言ってないでとっとと来てくださーい」

『チッ』


 ぶつっ、と音がしたかと思うと会話が途切れる。


「ってわけで、そろそろウマコトたちが森の中の結晶魔法機を破壊し始めるよ。結構な数あるから時間はかかるだろうけど、大風の使徒たちも気づいたら対応に回らざるを得ないはず。そしたら儀式場の警備も薄くなるってワケ。混乱は長続きする方がいいから、2人は村の防衛戦力の足しにすることにした」

「お前よくそれだけアイツらに言うこと聞かせられるな」

「ま、ちょっと工夫したって言うか。カス野郎とハサミは使いようってこと」


 ユイナは何でもないように板をしまって状況を説明したが、彼女は眠さのあまり連絡に使った道具が初披露であることを完全に失念している。だがロシュートとカエデに関しては、そういうヤツ(妹とかウマコトとか)の滅茶苦茶っぷりにはいろんな意味でもう慣れてしまっていた。


「い、今のがロシュートお兄ちゃんを助けたっていう『お守り』の魔法ですか……!?」

「その通りだ。なんか遠くの人と話せるんだって。でもな、実は俺が見たものと既に形がちょっと違うんだよさっきのやつ」

「なんという成長速度。私も負けていられませんね」


 ただひとり純粋な反応をしたサーシャにロシュートが優しく諭してやると、どういうわけかふんすっ、と意気込んだ彼女は対抗心を燃やし始めたようだった。


「……サーシャはそのままでもう十分素敵だぞ」

「すっ!?い、いえ!私も、もっとすごくなるんです!」


 ロシュートは、サーシャがユイナに影響されヘンな方向に突っ走ってしまわないか心配になってそう言ったのだが、彼女の方にその意図が伝わるとは限らない。矯正するどころかますます燃料をくべる結果になってしまったことにロシュートは気づかない。いや、気づかないふりをした。


「さて!そういうわけだからもうそろそろ私たちも出発するよ!」


 今回の作戦を指揮するユイナは台の上に立つと、眼下の仲間たちを広く見渡した。

 皆が熱意に満ちた目線を彼女に注いでいる。士気は十分に高まっていた。


「儀式場へ向かう部隊は二手に分かれる!アニキとサーシャ、村の青年たちで構成された地上部隊は気づかれないようにしつつ素早く儀式場まで移動して!儀式場は隠されていて分かりづらいから、アニキ以外もちゃんと場所を把握しておくこと。あとサーシャは色々サポートしてくれるけど森には不慣れだから、そこは所々助けてあげてね」

「よ、よろしくお願いします!」


 ペコペコと頭を下げるサーシャに雄たけびかのような声を上げるエルフの青年たちから注がれる視線には妙に気合が入っている。


 この二週間サーシャは村に滞在し、訓練などで怪我をした彼らの治療にもあたったため彼女の人となりは既に彼らの間に深く浸透している。端的に言えば、細かいところに気が利くサーシャはこの村でも大人気なのだった。


「カエデさんと私は先んじてウィンドライダーで儀式場の反対側に回り込むよ。大風の使徒、そのリーダーはこの村にも姿を見せたように、ブラッドワイバーンを操っている!あなたたちの強さは信じているけど、ブラッドワイバーンに空から攻撃を浴びせられるのは流石にまずいからね、私たちで相手をする。その間に地上部隊のみんなは儀式が実行不能になるようにすること!」


 ブラッドワイバーンの脅威は、改めて言わずとも森にすむエルフたちにはよく分かっていた。分かったうえで、ユイナの技術力とカエデの狩人としての腕を信じ、固く頷いた。


「残りのみんなは村を守って。大丈夫だとは思うけど、万が一があるから。病気の人や子供、老人たちは家の中に入れて、みんなで守るように……」

「老人も家に入れるって!?カッカッカ、冗談じゃないよ!」


 ユイナの演説に負けない声量で割り込んだのは、ラプトルの襲撃時にも持ち出していた大薙刀を携えたピンネだ。シーダ村長や、他の老いたエルフも数人いる。


「老いぼれだからとナメてもらっちゃ困るね。むしろ老い先短い身なんだ、いざという時はあたしらから率先して狼藉者どもを切り捨ててやるさ」


 大薙刀を軽々振るい、本当に老婆なのか疑いたくなる膂力(りょりょく)を見せつけるピンネ。あなたをナメている人は誰ひとりとしてこの村にはいないよ、と全員が言いかかったが、全員飲み込む。


 その少し後ろに佇んでいたシーダの腰にも、よく見れば大きな刀剣が差してある。ロシュートにははじめて見る物だったが、一方でユイナは世界で初めて見る刀らしき武器にひそかに興奮していた。状況が状況でなければ、どこで手に入れてどう作ったものなのか仔細を一晩かけて聞き出すところである。


「枯れ枝ほどよく燃える、というわけではありませんが婆さんがこの調子ですから。村長として私も出せる力は出しておかなくては、と思いましてね。無駄に年を取った老骨どもではありますが、棒の1本くらいであればそれなりの年月は持っておりましたので、若者たちの足しくらいにはなりますよ」


 シーダは静かに言ったが、後ろに控えている老人たちが本気で若者には負けていられない、と思っているオーラを隠すことなく放出しているのを見てロシュートは苦笑した。妹と同じように、彼もまたエルフという種族に対してある種の固定観念を抱いていたのだが、それは誤解だったと言って差し支えなさそうだ。


「よぉし、みんな!」


 改めて、ユイナは村人たちに呼びかける。


「真の意味での戦いは、きっと長い時間がかかると思う。一時的にでも、村を出る必要だってある。でも今日を乗り切れば、状況は格段に良くなるはず!私たちも力を貸すから、村も、この国も守ってみせようぜ!」




「それじゃ、行きますかね」

「おう。すぐ追いつくけど気をつけろよ」

「分かってるって。カエデさんは大丈夫そう?」

「問題ない」


 ユイナがウィンドライダーの運転席に跨ると、カエデも続いてその後ろに座った。騎馬と騎士の関係であるが、空を飛ぶ不安定な乗り物の上から弓を放つという無茶を通さなければならない。


 だがカエデにはそれができる。前日に行った予行演習では、疾駆するウィンドライダーの上から的を難なく射抜いてみせた。ユイナ曰く「流鏑馬(ヤブサメ)が国際競技なら確実に世界チャンピオンになっていると思う」とのこと。ロシュートには相変わらず意味が分からなかったが、まあ褒めているのだろうと解釈している。


 先に儀式場へ向かう彼女らを見送るのはロシュート達と、ミモザだった。


「ユイナ!」


 ミモザはいまにも飛び立とうとしていたウィンドライダーに駆け寄り、その運転席に座る黒髪の少女の名を呼んだ。


「なによミモザ。ここにきてウィンドライダーの改良案か欠陥でも思いついた?」

「そ、そうじゃねえけど」


 少女は不器用な少年の心中など察しない。疲労とアドレナリン以前に、そういう女だった。


 ミモザは目元を見せないよう、うつむいたまま言葉を紡ぐ。


「あの、さ。俺、何にもできないなって。色々知識はあるつもりだったけど、お前の方が、いっぱい知ってるし。俺は戦えないけど、お前は戦えるし」


 少年にも矜持のようなものはあった。


 そのことごとくを打ち砕いたからこそ、少女に惹かれたのだ。


 だが当然、悔しくないわけがなかった。いつかは追い越すと、少女が初めて空に舞った時に誓った。


 誓った相手が、追い越す前に消えてしまうかもしれない。


 少年の喉からは先の言葉が出てこず、拳を握りしめるのみ。最後に残った矜持(つよがり)が喉につかえていた。


「なーに言っとるのかねこのエルフボーイは」


 だが、それすらも少女は破壊する。


「いま私が乗っているコレ、動かすための魔力伝導液のアイデア、根本のところを閃いたのは自分だってこと忘れてない?私はどっかのサイコ白衣と違って倫理観ある研究者だからね、自分の手柄と他人の手柄は区別しているつもりだよ。他にもミモザの魔法陣を分析したおかげで、こうして誰の魔力でも起動できる乗り物になったわけだし。何もできないなんて、過ぎた謙遜はイヤミだぜ?」


 その言葉に少年は顔を上げた。


 少女は真っ黒なクマが浮かんでいる、しかし確固たる意志を持った視線と指を少年に向けて言う。


「もっと自信を持ちなよ。お前はすごいヤツだ、この元Aランク冒険者ユイナが保証してやろう」


 遮られなくなった言葉は自然と出てきた。


「ユイナ、無事に帰って来いよ!俺、お前に言いたいこと」

「待って!ミモザ、それはいまサッと言えないやつ?」


 だがその言葉を常識外れの自称異世界人ユイナはあろうことか遮った。


 ミモザは当然困惑する。というか耳まで赤くなった。エルフ共通の体質である。


「えっ、いや、うん……」

「そういうのダメなんだよこういう時に予告しちゃ。お互いにとってよくないことがね、起こるんですわそういうことすると。専門用語でフラグって言うんですけどね?イヤー危ない危ない。間一髪、ド級の死亡フラグを立てられるところだったよ」


 いつもの意味不明異世界節全開の妹にそのやり取りを第三者として見ていたロシュートは額を押さえ深いため息をついた。


 哀れ、ミモザ少年。お前が好きになったらしいそいつはもう徹頭徹尾そうなんですよ。


「だからサッと言ってもいい感じの別なことで言いなおしてくんない?」


 さらに片目をつぶり、手のひらを垂直に立てて舌を出す妹を見て、自分のことを完全に棚上げした兄はエルフの少年の心中を慮った。だが彼の憂慮とは裏腹に、二週間もユイナに振り回されたミモザはそういう所はタフであった。


「んじゃ、いっこだけ。必要になったからって黙ってロシュートの短剣からまた毒液を拝借したのは早めに謝った方がいいと思う」

「あっミモザそれ言わない約束のやつ!」

「は?」

「やべ、行くよカエデさん!」

「あ、ああ」


 ロシュートの怒気が届く前に、ユイナはウィンドライダーを発進させ森の奥へと飛び去った。残された兄はエルフの少年に事情を聴取する。


「え、どういうこと?アイツまだなんか企んでんの?」

「さあ。俺はユイナが毒液をあんたの短剣からまた盗ってきたってことしか知らないよ」

「怖い!どうせロクでもねえこと考えてるんだろうけど、それを探す時間も訂正する時間もないのが一番怖い!」


 頭を抱えてうがーと叫んでいるロシュートを見て、ミモザは少し笑った。そしてユイナが飛び去った方の、陽が傾きだいだい色に代わりつつある空を見る。


「これでちょっとは仕返しできたかな。でも頼むからマジでちゃんと帰ってきてくれよ、俺の目標」

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