THE LEGEND マゾヒスト故の選択
2020年、なろうデスゲーム。
30日勝負を選ばずにあえて10日勝負を選んだ作者
勝てるのか? 本当に勝てるのか?
"10日で1万PV超えを達成したMの誇り"
『ドMだからタンク職極めてみた』
誰も行かない道を行け、ランキングの中に答えはある
・作者も作品もドM
PV数を稼ぐという点において、長く掲載すればその分増える可能性は高まる。初手でバズを引けばそれを維持することで良い結果を残せるのは先に述べたとおりである。それにも関わらず、この作品の作者である人外娘愛好家先生は10日勝負という暴挙に出た。
それは出遅れですらなく、予定調和。ターフを駆ける金色の不沈船を想起させるマゾヒストの少女。俄然分析したくなるというものだ。
・分析:PV数
PV数の変遷は以下の通り。
投稿5日目に日間PV数が1000を越えると、後はもううなぎ登りにPV数が増え続けている。執筆時に日間ランキングでジャンル別3位に入っていることを考えれば、このブーストは当然といっていいだろう。
・分析:投稿時間
投稿時間は夜間に集中している。さらに、投稿初日だけは2話連続で投稿しているというのも特徴的だろう。
・分析:小説そのもの
①文字数
文字数平均は3300文字と普通。
②文字の硬さ
主人公がお嬢様然としているので硬いかと思いきや、意外とそうでもない。文の硬さどうこうと言うよりかは、主人公の奇行に真っ先に目が行き、そしてその奇行を追っているうちに話が終わっているのだ。
勢いに任せて読むことができるというのはとても良いことだ。なぜなら勢いに乗って読めば時間が短縮されるからである。なろう小説に求められるのは一時の爽快感。その意味ではこの作品はウォータースプラッシュにでも乗車したかのような気分になるだろう。
③タグ
以下の通り。
R15 残酷な描写あり 近未来 人工知能 電脳世界 VRMMO 神ゲー 主人公最強? ガチエンジョイ勢 スキル制 縛りプレイ 女主人公 コメディ 戦闘狂 変態 ドM 初投稿
目を引くのはやはりドM。他にも戦闘狂だの変態だの、女主人公と銘打っている作品には是非とも載せたくないワードのオンパレードだ。
だがそれが逆に目を引く。タイトルのドMでタンク職というのは既存のキャラクター……それこそなろう作品の大先輩、このすばのダクネスを想起させる。なろう読者にしてみれば馴染み深いものだろう。旅行先でチェーン店に安心するようなものだ。
だが、この作品の真の強みはそこではない。ただドMなだけでは10日で1万PV稼げないのがなろうの世界。マゾヒストとは、応に痴態を見てもらうことに快感を覚えるもの。当然、Mとしての研鑽を積んでいる。
④ジャンル
この作品のジャンルは、VRゲーム〔SF〕である。ここに作者の戦略の全てが詰まっているのだ。
日間ランキングに掲載されるために必要な評価ポイントは各ジャンルごとに大きく異なる。たとえば、本エッセイは視聴者貴族の皆様の支えによって10月22日現在、62ポイントも入手することができました。本当にありがとうございます。
では、ここまでの評価を他ジャンルで書いた場合に得られるだろうか? まず、本エッセイは昼の時点では20ポイントであった。しかしそれでもエッセイジャンルで22位にランクインしていたのだ!
ここで、10月22日夜のジャンル別日間ランキング100位に入るためにはいったい何ポイント必要なのか、めぼしいものを見てみよう。
異世界〔恋愛〕:122pt
現実世界〔恋愛〕:32pt
ハイファンタジー〔ファンタジー〕:104pt
ローファンタジー〔ファンタジー〕:22pt
VRゲーム〔SF〕: 16pt
このように、ジャンルごとにランクインするためのポイントに甚大な格差が存在していることが分かる。特にVRゲームというジャンルは群を抜いて低く、2人が最高の評価とブクマを入れた瞬間にランクインが確定するレベルである。これをさらにトップ5入りまで上げると、
異世界〔恋愛〕:2576pt
現実世界〔恋愛〕:796pt
ハイファンタジー〔ファンタジー〕:3694pt
ローファンタジー〔ファンタジー〕:782pt
VRゲーム〔SF〕: 266pt
となる。
このように、競争率が低いジャンルを狙い撃つことでランキングへの掲載されやすさを上昇させたのだ。ドMの主人公がボッコボコにされることに興奮するだけならそれこそハイファンタジーでも書くことが可能だ。
だがそれをせずにVRゲームというジャンルを選んだのはまさにランク入りRTA。ランキング入りによって評価とブクマの好循環が生まれ、その結果10日間という短期決戦でも見事な評価を得ることに成功したのだ。
⑤総評
キャッチーなタイトルとジャンル選び、そして中身の面白さ。その切れ味はまさに別格であり、もしもこれが30日間続いた場合にどのような結果を残したのかは語り草になって然るべきであろう。
だが、それだけではただの変な作品で終わっていた。自らに10日という枷をはめ、投稿作品を縛り上げることによってそれは芸術に進化したのだ。
・個人的感想
メッチャ面白い。やっぱりキャラクターのギャップを際立たせるというのは初手に打つ策としての安牌だ。ただし、この牌の打ち方を誤らないことが重要だが。
分析した作品はこちら。
https://ncode.syosetu.com/n9287gn/