6 お見舞い
「は? 正体不明って」
男が最後に取り出した資料には正体不明、太古の怪異と書かれており
大きな影のシルエットと共に、簡素な説明文があった
『恐らく太古から存在する怪異の一体。この系列は昔からの伝説や御伽噺に出てくる怪物等であり、本件もその可能性が高い。一刻も早い情報の更新が望まれる』
「多分、この怪異だろうね、まだ僕たちが暴いていない古代の怪異の系列...正体は直接彼に聞くしか無い」
「だけどまだ彼はその怪異を自覚していないと...」
「あぁ、一番は彼がその怪異を自覚してくれることなんだろうけど......少し今のままじゃ難しいかな」
「はぁ......ご都合主義っぽく、ピンチの時に覚醒とかしてくれませんかねぇ」
「彼が主人公っぽかったらなるんじゃないのかい?」
「ま、そんなことそうそうあり得ませんか」
彼......成瀬 零次は呪いをその身に宿している
彼がそれに気づく時は......もう近いかもしれない
あのイケメンが去ってから一時間くらい経った
医師に軽く腕を診てもらい
軽く説明を受けた
ここは東京の西側、孤群市にある国際病院で、僕はあの森で気を失っていたらしい
僕が発見されてから既に4日が経っており、毎日雫や照美がお見舞いにきてくれていたそうだ
多分、後三十分程もすれば学校が終わって雫や照美が来るだろう
......覚悟しておかないといけない
もう一つの懸念は、さっききたあのイケメンが言ってたことだ
なんか対怪異専門組織とか言ってたけど、今考えたら僕が見た幻覚かもしれないとも思ってしまう
それほどの会話の内容だ
【愚羅】と戦う......本当にそんなことが可能なのだろうか
......いや、今更そんなこと考えたって
動く人形が愚羅を瞬殺する所を見た後じゃ、あながち出鱈目でも無いって事も想像がついてしまう
「結局茅音ちゃんって何者だったんだろうな...」
ドタドタドタ
凄い足音だな......ちょっと迷惑かも
ドタドタドタドタ
ん?
ドタドタドタドタドタ
これ......こっち来てないか......
ドタドタドタドタドタドタドタドタ
ガラッッ!
「お兄様ぁっ‼︎‼︎」
「零次っ!!!」
「病院ではお静かにお願いします!」
「「......すみません」」
ガラガラガラ
静かに扉が閉まる
一瞬間が開き
ビュンッ
僕より一回り小さい影が思いっきり突っ込んできた
「ゔ ゔ あ゛あ゛ お゛に゛い゛ざ ま゛ぁ」
「こらこら雫、せっかくの美人が台無しだよ」
「お兄様ぁっ」
「はいはい......」
物凄い速度で僕に突っ込んできた雫を受け止め、入ってきたもう一人の方を向く
「照美、まだ学校の時間の筈だけど...どうしたの?......って⁉︎」
雫と一緒に入ってきた幼馴染を見ると
その目には涙が溜まっており、今にも泣き出しそうな勢いだった
「零次......」
おぼつかない足取りで僕の近くまで寄ってきたと思ったら僕の体に顔を埋めて静かに泣き出した
「よかった......ほんとに...零次ぃ......」
顔を埋めて泣いている照美の頭を撫でる
昔は逆に僕の方がやられたけど、今となっては身長差的にも僕がする側か......普段は恥ずかしくてしないけどね
「ごめん、二人とも...心配かけちゃったね」
そうして暫く照美と雫を撫で続けていたが
「......あの、成瀬くん...お体は大丈夫なんですか?」
唐突に聞こえた書季さんの声で三人はふと我に帰った
......嘘だ、雫はそれでも僕にくっついていた
「それで、やはり成瀬くんは既にハーレムを形成していたのですね......」
何故か少し残念そうな風に言う書季さん
「いや、違う! 完全な誤解だ!」
「じゃあその左腕に巻き付いている義妹さんをなんとかしてください」
「......雫、もうそろそろ離してくれるかな?」
「拒否します」
「えぇ......」
「はぁ...お兄様......生きている...呼吸をしている......血が流れている...お兄様が生きているとゆうのはなんと素晴らしいことなのでしょう...」
雫は恍惚とした表情で僕の左手に抱きついている
因みに僕のベッドの上...つまり僕の足の上でだ
「はい...この義妹さんは無理ですね、心中お察しします」
「うん...悪い子では無いんだけどね」
そういえば、雫に連絡が行ってその次に照美に知らされるのは予想がついていたけど
なんで書季さんはこの事を知っているんだ?
「あ、私は新崎さんから成瀬くんのことを聞きました」
「え、そうなの?」
「ごめんね! 零次。零次は一体どこに行ったのかってこの子があまりにも迫って来るものだから......」
「すみません、成瀬くんが休んでいる理由を余りにも話したがらなかったので、怪しかったんですよ」
「あはは......そういえば、雫たちはこの四日間どうしてたの?」
「あー......そうね...まず零次が愚羅に襲われたってゆう連絡が来たところからか......」
次回、少し過去に過去に遡ります
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